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Cの時代

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私たちが日々感じている「何か」を書き起こした連作小説です。
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#就活

Cの時代  〜一緒に働く〜

Cの時代 〜一緒に働く〜

10月25日(木)15時、神保町。

サトウとの打ち合わせに「大学生の女の子」は現れなかった。

「ごめんなさい、彼女、都合が悪くなっちゃったみたいで、明日の夕方なら空いてるみたいなんですけど、もし、社長の都合がよければ明日の夕方にセッティングし直しますけど?」
「・・・そうだね、そうしてもらおうかな」
正直、スケジュールを調整し直すのは面倒だか、若者の都合に合わせるしかない。

翌日。

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Cの時代 〜尾行エレベーター〜

Cの時代 〜尾行エレベーター〜

 面接は30分ほどで終わった。
 面接時間が短いと不採用、というのはよく聞く。が、20分ほどしかしてないのに通っている場合もあった。逆もしかり。実際に就職活動をしてみると、企業によってまちまちだった。ネットの情報は安易に鵜呑みにするものじゃない。そう思うからこそ、この時間が短いのか長いのか私には判断できなかった。

エレベーターホールに辿り着く。手持ち無沙汰そうに立っていた女性スタッフが私を見る

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Cの時代 ~終身雇用と囚人労働で韻踏める~

Cの時代 ~終身雇用と囚人労働で韻踏める~

「それでは、弊社を志望した理由を教えてください」
「はい。私は広告の仕事を通じてお客様に商品の魅力を知ってもらい、より豊かで便利な社会の実現に貢献したいと考えております。その上で御社を志望した理由は――」

エントリーシートとほぼ同内容の文言がすらすらと口から流れていく。
でまかせ、でもないが、自分が本当のところで考えていることとは随分かけ離れている。
顔の整った若い人事は私の言葉に微笑みをた

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Cの時代 〜リクルートスーツ〜

Cの時代 〜リクルートスーツ〜

2018年10月10日(水)

 10月も10日を過ぎているのに20℃を超す蒸し暑さ。秋の気配すら感じないダラダラと続く残暑に少し飽き飽きしていた。夜の肌寒さを過ごすには半袖だと心許無いので、外出する時は、半袖の上にロングの薄手ジャケットを羽織るのがここ2~3年の長い残暑を過ごすスタイルとなりつつあった。
 会社を立ち上げてから5カ月、少しずつではあるが、今までの付き合いから仕事をいただけるように

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Cの時代 ~渋谷という街~

Cの時代 ~渋谷という街~

渋谷は汚い。
というフレーズはよく耳にするもので、周りにも渋谷という街が苦手な人は一定数存在する。中学2年生の時、初めて109に買い物をした私も実際そう思っていた。

渋谷は汚い。
人は多いし、車は多いし、道は狭いし、なんだか異臭がする。
新宿より渋谷に足を運ぶことが多くなっていた今でもあまり感想は変わらない。

けれど。
それは新宿と何が変わらないのだろう。

人が多いのも、車が多いのも、

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