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Cの時代

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私たちが日々感じている「何か」を書き起こした連作小説です。
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#大学生

Cの時代  〜一緒に働く〜

Cの時代 〜一緒に働く〜

10月25日(木)15時、神保町。

サトウとの打ち合わせに「大学生の女の子」は現れなかった。

「ごめんなさい、彼女、都合が悪くなっちゃったみたいで、明日の夕方なら空いてるみたいなんですけど、もし、社長の都合がよければ明日の夕方にセッティングし直しますけど?」
「・・・そうだね、そうしてもらおうかな」
正直、スケジュールを調整し直すのは面倒だか、若者の都合に合わせるしかない。

翌日。

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Cの時代 〜出逢い〜

Cの時代 〜出逢い〜

10月最後の金曜日。
アミカさんに呼ばれ、渋谷に来ていた。夕暮れのハチ公前広場は相も変わらず人でごった返している。習い事をしている場所が宇田川町なので、渋谷を使うことは少なくなかったが、こうして人と待ち合わせをするのは久しぶりだ。JR山手線の改札前でぼんやりと突っ立っていると、道行く人々が肩で風を切って移動しているのが分かる。その速さは歩くというより強歩だ。
普段の自分もあんな感じなんだろうな。せ

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Cの時代⑧ 〜同人誌即売会と廃情報回収の依頼〜

Cの時代⑧ 〜同人誌即売会と廃情報回収の依頼〜

「部数確認して」
「本、この辺に置けばいいのかな?」
「誰かー、ポスカ持ってる人!」

慌ただしい声が各所で飛び交っている。
開店前のこの熱気が文化祭の前日のような空気を醸し出していて、
一番好きかもしれない。

本日は同人誌即売会。
二次創作もオリジナルもプロもアマも関係なく、渾身の作品を世に出す日だ。
予定のない私は売り子として販売の手伝いに来ていた。

「椅子、もらってきました。

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Cの時代 〜尾行エレベーター〜

Cの時代 〜尾行エレベーター〜

 面接は30分ほどで終わった。
 面接時間が短いと不採用、というのはよく聞く。が、20分ほどしかしてないのに通っている場合もあった。逆もしかり。実際に就職活動をしてみると、企業によってまちまちだった。ネットの情報は安易に鵜呑みにするものじゃない。そう思うからこそ、この時間が短いのか長いのか私には判断できなかった。

エレベーターホールに辿り着く。手持ち無沙汰そうに立っていた女性スタッフが私を見る

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Cの時代 ~渋谷という街~

Cの時代 ~渋谷という街~

渋谷は汚い。
というフレーズはよく耳にするもので、周りにも渋谷という街が苦手な人は一定数存在する。中学2年生の時、初めて109に買い物をした私も実際そう思っていた。

渋谷は汚い。
人は多いし、車は多いし、道は狭いし、なんだか異臭がする。
新宿より渋谷に足を運ぶことが多くなっていた今でもあまり感想は変わらない。

けれど。
それは新宿と何が変わらないのだろう。

人が多いのも、車が多いのも、

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