翁まひろ

もの書き。遺跡発掘人。2024年7月25日、角川文庫より『牡丹と獅子 双雄、幻異に遭う…

翁まひろ

もの書き。遺跡発掘人。2024年7月25日、角川文庫より『牡丹と獅子 双雄、幻異に遭う』発売予定! 既刊物に『菊乃、黄泉より参る! よみがえり少女と天下の降魔師』(角川文庫)発売中。このnoteでは、ジャンル問わず、気ままに「書く」楽しみを味わっていきたく思っています。

マガジン

  • 雲渦巻く〈雲南省〉少数民族自治区探訪記

    2004年2月から2005年9月まで、中国雲南省の省都「昆明」で留学した元留学生の古い記録

  • 中国四川省の鉄道「芭石鉄路」

    2009年に訪れた、菜の花畑の中を走る鋼鉄の男爵、中国四川省の鉄道「芭石(ばせき)鉄路」の記録。

  • モロッコ旅行記

    2011年1月、憧れの地「モロッコ」で13日間の旅をしたときの旅行記。

記事一覧

固定された記事

自己紹介

はじめまして。翁まひろと申します。 扇(おおぎ)と間違えられがちですが、おじいさんの「おきな」です。 小説家やってます 2023年4月末、第8回角川文庫キャラクター小…

翁まひろ
8か月前
67

雲渦巻く〈雲南省〉少数民族自治区探訪記~巨岩の村「宝山石頭城」~

世界遺産にも認定されている「麗江古城」から北に117キロの位置に、「石頭城」と呼ばれる村がある。話によればその村は、金沙江の河岸にある巨大な奇岩の上にあるのだとい…

翁まひろ
1日前
11

雲渦巻く〈雲南省〉少数民族自治区探訪記~元陽・ハニ族の長卓祭②~

元陽の町からさほど離れていない山中にある村で、ふたたび長卓祭が開かれると聞き、私たちは祭の見学をさせてもらうことにした。 ▼前回の記事はこちら 四十分ほどかけて…

翁まひろ
8日前
12

短編|銀河バス停留所

 夕暮れどきだった。  私はその日の仕事を終え、家の近くまで直通でいけるバスの停留所に立っていた。  片手には、リサイクルショップで買った仕事用のバッグ。もう片手…

翁まひろ
13日前
12

KADOKAWAさんのサーバーが大変ななかで、カドブンさんがnote出張所をやりはじめたーっ(≧▽≦)
わーいわーい。Xは情報を追いかけるのが大変なので嬉しい。

https://note.com/kadobun_note

翁まひろ
2週間前
7

雲渦巻く〈雲南省〉少数民族自治区探訪記~元陽・ハニ族の長卓祭①~

【閲覧についてのご注意】 この記事には、豚を生贄とする場面が出てきます。写真にも一部、豚を捌く場面などが映りこんでいます。苦手な方は、写真を非表示するなど、ご自…

翁まひろ
2週間前
7

雲渦巻く〈雲南省〉少数民族自治区探訪記~元陽・ハニ族の棚田~

元陽は、雲南省の省都・昆明から286キロ南に位置し、主にハニ族、イ族が暮らしている。 山の斜面に築かれた棚田は、ハニ族の勤労と知恵の証。その美しさは「天梯(天の階段…

翁まひろ
2週間前
9

【新刊告知】7/25頃、角川文庫『牡丹と獅子』発売します!

こんにちは。翁まひろです。 今日は告知をさせてください! きたる2024年7月25日、角川文庫より、新刊が出ますーーー!! 中華ブロマンス志怪小説 『牡丹と獅子 双雄、…

翁まひろ
2週間前
16

雲渦巻く〈雲南省〉少数民族自治区探訪記~昆明「小板橋市場」~

昆明最大級の青空市場!混沌たる「小板橋市場」 2004年12月、留学仲間の提案で、雲南省の省都「昆明」の中心街から、バスで一時間ほどの郊外にある官渡区小板橋鎮に向かう…

翁まひろ
3週間前
16

雲渦巻く〈雲南省〉少数民族自治区探訪記~洞窟村「峰岩洞村」~

雲南省の東南部に位置する「文山壮族苗族自治州」は、昆明から335キロ、ベトナムと国境を接した地域にある。 「田七人参」の産地としても知られ、「普者黒」、「広南八宝」…

翁まひろ
3週間前
9

雲渦巻く〈雲南省〉少数民族自治区探訪記~大海草山~

羊と羊飼いのいる大草原「大海草山」 2004年2月から2005年9月まで、中国雲南省の省都「昆明」で語学留学をした。その間、「実地訓練」という口実のもと、たびたび学校を休…

翁まひろ
3週間前
14

雲渦巻く〈雲南省〉少数民族自治区探訪記 前置き

前置き 大学の専攻は、中国語。 中国語を学ぶことを選んだ理由のひとつは、小さい頃「キョンシー」が大好きだったからだ。 香港のチャイニーズホラー映画『霊幻道士』や…

翁まひろ
1か月前
9

江戸時代を書くことの恐怖と楽しさ

※『菊乃、黄泉より参る! よみがえり少女と天下の降魔師』の制作裏話も含みます。執筆の裏話は知りたくないという方は、どうぞご注意ください。 小さいころ、『殿さま風…

翁まひろ
1か月前
16

改稿作業と串焼きづくりは似てる

小説は、初稿が終わると、次は改稿ってやつがはじまる。 初稿もしんどいが、この改稿もしんどい。 改稿作業というのは、こう……まな板の上に置いた肉とか野菜とかを、「…

翁まひろ
2か月前
13

エッセイ|大好きな町、三軒茶屋。

三軒茶屋は、私が暮らした中でも「一番好き」と言える町だ。 東京都二十三区の西南部。人情味あふれる昔ながらの商店街が点在する一方、新しい店や文化もどんどん取りこん…

翁まひろ
7か月前
21

エッセイ|ぬるま湯も 浸かってしまえば 気持ちがいい

生き方を変えたい。 けれど、どうしてもそれができない。 そんなとき、この言葉に出会った。 『ぬるま湯も 浸かってしまえば 気持ちがいい』 たしかJR山手線の車内モ…

翁まひろ
7か月前
12
固定された記事

自己紹介

はじめまして。翁まひろと申します。 扇(おおぎ)と間違えられがちですが、おじいさんの「おきな」です。 小説家やってます 2023年4月末、第8回角川文庫キャラクター小説大賞、大賞&読者賞の受賞作として『菊乃、黄泉より参る! よみがえり少女と天下の降魔師』(角川文庫)を上梓し、デビューした小説家です。 一冊出しただけで、小説家と言ってしまうのはどうなんだろう。 と、ためらいを覚えつつ……よわよわメンタルを鍛えるためにも、あえて……あえて小説家と言わせてください……! 「

雲渦巻く〈雲南省〉少数民族自治区探訪記~巨岩の村「宝山石頭城」~

世界遺産にも認定されている「麗江古城」から北に117キロの位置に、「石頭城」と呼ばれる村がある。話によればその村は、金沙江の河岸にある巨大な奇岩の上にあるのだという。 2004年10月、チベット辺境まで向かう長い旅のはじまりに、私と旅の仲間はこの「石頭城」を訪ねることにした。 前日に雨が降ったため、村までの道はひどくぬかるんでいる。タクシーをチャーターしたのだが、あまりに道が悪いため、途中で運転手が「ここからは無理だ。歩いてけ」と匙を投げてしまった。 「村までは6キロほ

雲渦巻く〈雲南省〉少数民族自治区探訪記~元陽・ハニ族の長卓祭②~

元陽の町からさほど離れていない山中にある村で、ふたたび長卓祭が開かれると聞き、私たちは祭の見学をさせてもらうことにした。 ▼前回の記事はこちら 四十分ほどかけて山道を登ると、目の前に安静とした村が現れた。 これまた名前がわからないので、勝手に「元陽村」と名づけることにする。 村の周囲を取り巻く森。私たちが到着したちょうどその頃、村人たちも森に集まりはじめる。 長卓祭が始まるまで、しばし、だらだらタイム。 さあ、祭の始まりだ! 爆竹の激しい音に、子供たちはみんな、耳を

短編|銀河バス停留所

 夕暮れどきだった。  私はその日の仕事を終え、家の近くまで直通でいけるバスの停留所に立っていた。  片手には、リサイクルショップで買った仕事用のバッグ。もう片手には、職場近くのスーパーで買った夕飯入りのビニール袋。  ちなみに夕飯は、半額シールの貼られた「辛味噌モツ」。焼けばすぐに食べられる、下味のついたモツだ。 (臭い、もれてるかなあ)  最近、やっかいな案件を任されたせいで、どうにも体がだるい。やたらと味の濃いものが食べたくて、つい辛味噌モツを手にとってしまった。  買

KADOKAWAさんのサーバーが大変ななかで、カドブンさんがnote出張所をやりはじめたーっ(≧▽≦) わーいわーい。Xは情報を追いかけるのが大変なので嬉しい。 https://note.com/kadobun_note

雲渦巻く〈雲南省〉少数民族自治区探訪記~元陽・ハニ族の長卓祭①~

【閲覧についてのご注意】 この記事には、豚を生贄とする場面が出てきます。写真にも一部、豚を捌く場面などが映りこんでいます。苦手な方は、写真を非表示するなど、ご自分の心を守るようお願いいたします。 ▼前回の旅行記はこちら 一口に「元陽」と言っても、その範囲は非常に広い。 日本のメディアでも目にする機会のある「元陽の棚田」は、ある程度、決められたスポットで撮影されていて、実際には全体のほんの一部にすぎない。 そんな中、元陽でカメラマンをやっているという日本人の方が、今回の旅

雲渦巻く〈雲南省〉少数民族自治区探訪記~元陽・ハニ族の棚田~

元陽は、雲南省の省都・昆明から286キロ南に位置し、主にハニ族、イ族が暮らしている。 山の斜面に築かれた棚田は、ハニ族の勤労と知恵の証。その美しさは「天梯(天の階段)」と称され、2013年には世界遺産に認定された。 元陽の棚田の歴史は古く、およそ2500年前から作られはじめたとされ、大昔の人々の間でもすでに評判を呼んでいたという。 私がこの地を訪れたのは、まだ世界遺産に申請中の、2005年3月中旬だ。 越南(ベトナム)と国境を接した、雲南省東南部の紅河一帯。 そこに、山の

【新刊告知】7/25頃、角川文庫『牡丹と獅子』発売します!

こんにちは。翁まひろです。 今日は告知をさせてください! きたる2024年7月25日、角川文庫より、新刊が出ますーーー!! 中華ブロマンス志怪小説 『牡丹と獅子 双雄、幻異に遭う』 (著:翁まひろ / イラスト:カズキヨネ様) (※現在、書籍ページはKADOKAWAのシステム障害により閲覧不可となっており、版元ドットコムさまのページにつながります) 幼いころに大好きになったドラマ『幽幻道士』。 中学生ではまった古龍の武侠小説『辺城浪子』、金庸『天龍八部』やアレック・ス

雲渦巻く〈雲南省〉少数民族自治区探訪記~昆明「小板橋市場」~

昆明最大級の青空市場!混沌たる「小板橋市場」 2004年12月、留学仲間の提案で、雲南省の省都「昆明」の中心街から、バスで一時間ほどの郊外にある官渡区小板橋鎮に向かうことになった。 目的は、当時、私たちのあいだで流行っていた「市場めぐり」だ。 田地を越え、荒地を越え、ひたすら走ると、バスは土ぼこりの舞うT字路に着く。そこでさらに三輪バイクに乗りかえ、馬車と三輪バイクとが大渋滞を起こした先に、その市場はある。 昆明最大級の「何でもあり」の青空市場。 小板橋(シャオバンチャ

雲渦巻く〈雲南省〉少数民族自治区探訪記~洞窟村「峰岩洞村」~

雲南省の東南部に位置する「文山壮族苗族自治州」は、昆明から335キロ、ベトナムと国境を接した地域にある。 「田七人参」の産地としても知られ、「普者黒」、「広南八宝」をはじめとする自然観光地に恵まれている。 壮、苗、回、彝、布依族などの多民族が住み、様々な文化を見ることができる。 そんな文山地区に興味を持ったのは、愛用していた現地ガイドブックに、ほんのわずかなスペースを割いて紹介されていた「峰岩洞村」がきっかけだった。 巨大な洞窟の中に村があるという、まるで当時人気を博したテ

雲渦巻く〈雲南省〉少数民族自治区探訪記~大海草山~

羊と羊飼いのいる大草原「大海草山」 2004年2月から2005年9月まで、中国雲南省の省都「昆明」で語学留学をした。その間、「実地訓練」という口実のもと、たびたび学校を休んでは雲南省各地を旅してまわった。 2005年4月、留学仲間とともに目指したのは、雲南省の北東部にある「大海草山」という牧草地だ。 雲南省の省都「昆明」から、高速バスや列車、包車(チャーター車)を利用して、「大海草山」のある曲靖市会沢県を目指す。 やがてバスは「大海」という名の小さな町に到着する。 ち

雲渦巻く〈雲南省〉少数民族自治区探訪記 前置き

前置き 大学の専攻は、中国語。 中国語を学ぶことを選んだ理由のひとつは、小さい頃「キョンシー」が大好きだったからだ。 香港のチャイニーズホラー映画『霊幻道士』や、台湾製作のドラマ『幽玄道士』、『来来!キョンシーズ』……それらのドラマにドはまりした。 私だけに刺さったのではなく、1980年代生まれの小学生の間で、キョンシーはちょっとしたムーブメントを巻きおこしていた。 「キョンシー(殭屍)」とは、道士の方術によって操られた「歩く死体」のことだ。なぜ操るかというと、旅先で死

江戸時代を書くことの恐怖と楽しさ

※『菊乃、黄泉より参る! よみがえり少女と天下の降魔師』の制作裏話も含みます。執筆の裏話は知りたくないという方は、どうぞご注意ください。 小さいころ、『殿さま風来坊隠れ旅』という時代劇にドはまりした。 理由はというと、主演のおふたりがかっこよかったから……ではなく、隠密として登場する、京本政樹さんの演じる村垣市蔵が、べらぼうに色っぽかったからです! ハイ!! 黒い着物。長髪ポニーテール。 主人公ふたりを影ながら助ける公儀隠密。 冷ややかで生真面目かつ色気たっぷりの、あの流

改稿作業と串焼きづくりは似てる

小説は、初稿が終わると、次は改稿ってやつがはじまる。 初稿もしんどいが、この改稿もしんどい。 改稿作業というのは、こう……まな板の上に置いた肉とか野菜とかを、「目指せ、最高の串焼き!」と己をふるいたたせながら、串でぐいぐい刺していく感覚に似ている。 肉と野菜をどの順序で刺していくか。あれこれ試して、最高の取りあわせを手探りで見つけていく。 ときに具材を入れかえたり、あるいは減らしたり、増やしたり……。 減らしたり増やしたりで言うと、私の場合は、だいたい増える。 だいたいと

エッセイ|大好きな町、三軒茶屋。

三軒茶屋は、私が暮らした中でも「一番好き」と言える町だ。 東京都二十三区の西南部。人情味あふれる昔ながらの商店街が点在する一方、新しい店や文化もどんどん取りこんで、新旧が雑然といりまじる。 運転手泣かせの路地迷宮としても知られ、散歩好きにはたまらない町でもある。 そんな三軒茶屋を含めた世田谷の町々で、二十代後半から三十代にかけて、十年強をすごした。 最初に暮らしたのは、太子堂という町だ。 三軒茶屋駅から徒歩五分。小さなアパートの一階に借りたのは、五畳半程度の部屋だった。 窓

エッセイ|ぬるま湯も 浸かってしまえば 気持ちがいい

生き方を変えたい。 けれど、どうしてもそれができない。 そんなとき、この言葉に出会った。 『ぬるま湯も 浸かってしまえば 気持ちがいい』 たしかJR山手線の車内モニタに表示されていた言葉だったと思う。 「本日の格言」だったか、「今日の一言」だったか、ともかくそんなコーナーにパッと映しだされたのだ。 精神的にも身体的にも、きつい仕事についていたときだった。 サービス残業、モラハラ、休日出勤、山積みの仕事……。 「こんな毎日はもういやだ。もっと違う生き方をしたい」 毎日そん