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雲渦巻く〈雲南省〉少数民族自治区探訪記 前置き

前置き

大学の専攻は、中国語。
中国語を学ぶことを選んだ理由のひとつは、小さい頃「キョンシー」が大好きだったからだ。

ちょっと走っただけでも肺が潰れそうになる、海抜4300mの高地から白馬雪山を臨む(徳欽県)

香港のチャイニーズホラー映画『霊幻道士』や、台湾製作のドラマ『幽玄道士』、『来来!キョンシーズ』……それらのドラマにドはまりした。
私だけに刺さったのではなく、1980年代生まれの小学生の間で、キョンシーはちょっとしたムーブメントを巻きおこしていた。

清明節の大理で見かけた墓参りの一行

「キョンシー(殭屍)」とは、道士の方術によって操られた「歩く死体」のことだ。なぜ操るかというと、旅先で死んだ人を故郷まで連れかえるためで、いわば弔いのためだった。(来歴は諸説あり)
そのキョンシーがともかく怖い。額に黄色いお札を貼っているときは大人しいが、ひとたび外れると、暴れまわって、人間に噛みつき、キョンシー化させてしまう。
呼吸を止めると、キョンシーは生きている人間を感知できなくなる。当時の小学生は、できるだけ長く息を止めていられるよう、必死になって訓練した。今、発掘作業という仕事に従事し、力仕事を難なくこなせているのも、このとき鍛えた肺活量のおかげ……かどうかは別として、小学生だった私の毎日は、キョンシーとの戦いの日々でもあった。

シャングリラ(香格里拉)の山村で出会ったチベット族の親子

あれ? なんの話でしたか……。

ともかく「キョンシー好き」が高じて中国語を学んだ私が、卒業後の留学先に選んだのは、平均海抜2000メートルの山岳地「雲南省 少数民族自治区」だった。

中国における雲南省の位置(白地図専門店さま)

当時、教授に中国語を専攻した理由を聞かれ、「キョンシーが好きだったので」と答えたら、「それ……広東語じゃない?」とつっこまれた私が、またもキョンシーとまったく関係ない地を選んでしまった。(専攻した中国語は北京語)
けど、この留学を通じ、私は「雲南省」という地域が、第二のふるさとと思えるほどに大好きになったのだった。

元陽バダ村の「長卓祭」で出会った龍頭(祭祀の頭領)

そんな前置きをしたうえで、2004年2月から2005年9月まで、中国雲南省の省都「昆明」で留学した元留学生の古い記録を、今後すこしずつ……時系列関係なしに……ただただ気ままに、ちらほらと紹介していけたらと思います。

どうぞお楽しみに!

チベット族の聖地である梅里雪山の夕暮れ

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