見出し画像

二松学舎大付vs大阪桐蔭 どこよりも詳しく見どころ解説

第104回 全国高校野球選手権大会
3回戦
二松学舎大付(東東京) vs 大阪桐蔭(大阪)

横綱に勝利するための条件とは?

二松学舎大付は夏の甲子園に5回出場。今大会を含めて過去全て初戦を突破した。しかし意外な事に過去4回は全て2戦目で敗れており、夏の2勝目は初めての経験だ。
対する大阪桐蔭は押しも押されぬ今大会の優勝候補。当然ながらこの3回戦進出は目標ではなく通過点と捉えているだろう。

単純に戦力を比較すると、大阪桐蔭が優位である。では二松学舎大付に勝ち目は無いのだろうか?今回はその観点から見どころを探っていきたいと思う。

ここまでの勝ち上がり

二松学舎大付は初戦で札幌大谷(南北海道)に3-2で9回サヨナラ勝ち、2回戦で社(兵庫)に7-5で勝利しての3回戦進出となった。

3回戦進出の原動力はサウスポーエース辻の好投だ。
2試合14回1/3を投げて失点3と安定している。球速は130キロ台中盤が多く、昨年のエース秋山投手のように決して球威で押すタイプではないのだが、右打者のインコースに投げ込むストレートには切れがある。そのストレートの切れこそが得意のスライダーとチェンジアップの効果を倍増させていると言えるだろう。

ただ甲子園に来ての2試合ともに試合終盤でリリーフした重川が、3回2/3を投げて6安打3失点とやや不安が残る。初戦、2回戦と試合終盤に追い上げられる展開になっているだけに3回戦でどう改善してくるかが見ものである。

そして今春のセンバツ時にエースナンバーを背負ったサウスポー布施が今大会まだ投げていない。エースの辻と似たタイプではあるが、布施の方がより緩い球を駆使して前後で揺さぶる投球のイメージだ。

センバツでは立ち上がりから制球が定まらず聖光学院に打ち込まれ、精神面に課題が残ったがこの夏に成長した姿を見せるには最強軍団・大阪桐蔭はうってつけの相手とも言えるだろう。

打線は初戦は1番・親富祖(おやぶそ)の活躍が大きかった。昨年から活躍しており今年の二松学舎大付打線のキーマンと言えるだろう。そして初戦ではノーヒットだった3番・瀬谷が2回戦では4安打、4番・片井がホームランを放つなど打線が上り調子であるのも明るい材料である。

一方の大阪桐蔭は初戦で旭川大(北北海道)を6-3、2回戦で聖望学園(埼玉)を19-0と盤石な試合運びで撃破して3回戦進出となった。

3回戦進出の原動力は何と言っても2試合で37安打、25得点という驚異的な強力打線である。ホームランも4本(伊藤、松尾×2、海老根)飛び出しており破壊力は抜群だ。2試合で伊藤・松尾・海老根の3人が打率5割を超えており、上位から下位まで隙の無い打線と言えるだろう。
個々の能力の高さは言うまでもないが、それぞれが自分の役割を全うして「線」としての繋がりもあるのが大きな特徴だ。
特に2回戦では4連打、5連打が飛び出すなど手のつけようのない快勝だった。その中でも2試合で11個の四死球を選んだ選球眼が相手投手を苦しめ、打線に火をつけたと言えるだろう。

投手陣は先発は川原・前田、リリーフで別所・小林・青柳と計5人が甲子園で登板している。しかも全員に安定感があり、大崩れする可能性は極めて低い。特にサウスポーの2年生・前田は2回戦で5回を投げ無四球、1安打の9奪三振と文句のない出来だった。甲子園では2試合とも試合の最後に150キロ近い速球の別所が登板して試合を締めくくっている。打線に目を奪われるが投手陣も素晴らしい投球をみせているのは間違いない。

初戦で2つ出たエラーも2回戦では無失策と改善されていた。反省点の改善にむけての手綱さばきが西谷監督が名将と呼ばれるゆえんと言えるだろう。

この試合のポイント

ともに投打ともに力のある実力校だ。
ただすべてにおいて大阪桐蔭が一歩上回っているのは事実だろう。

とは言え大阪桐蔭にとって嫌なデータが無いわけではない。下記は西谷監督が2002年の秋から大阪桐蔭を率いて、甲子園で敗れた相手投手12名である。

2004年春 ダルビッシュ(東北) 2-3
      (※西谷監督は出場辞退)
2005年夏 田中(駒大苫小牧) 5-6
2006年夏 斎藤(早実) 2-11
2007年春 田中(常葉菊川) 1-2
2010年春 葛西(大垣日大) 2-6
2013年春 藤田(県岐阜商) 4-5
2013年夏 岸(明徳義塾) 1-5
2015年春 平沼(敦賀気比) 0-11
2016年春 早川(木更津中央) 1-4
2017年夏 長谷川(仙台育英) 1-2
2021年春 西村(智弁学園) 6-8
2021年夏 山田(近江) 4-6

上記の投手は現在まだ在学中の近江・山田投手を除くと、下記の2つに分類される。
①後にプロ入りした選手
②キレと変化球を武器にする左投手

そう二松学舎大付の辻・布施のサウスポーは上記の②に当てはまる「キレと変化球を武器にするサウスポー」だ。
初戦の旭川大のように序盤に先制し、突き放されることなく食らいついて接戦に持ち込めれば二松学舎大付にも勝機は見えてくる。

それだけに最注目なのは「二松学舎大付の辻・布施の両サウスポーがどのような投球を見せるか?」という点だ。二松学舎大付が大阪桐蔭に勝つには投手の好投が最低条件となるのは間違いない。
最も必要なのはコントロールだ。四死球で無駄な走者を出さないことを徹底したい。大阪桐蔭打線と言えど、ビッグイニングには四死球・エラーが絡んでいる。逆に言うと初戦の旭川大のように無駄な走者を出さなければ、食らいついて接戦に持ち込むことが可能であると言える。

そこで問題になるのが「大阪桐蔭の選球眼」である。
聖望学園のエース岡部投手は序盤から「きわどいボール球に手を出してこない大阪桐蔭の選球眼」によって攻略されたと言って良いだろう。そこで大事になるのは右打者の内角を膝元を怖がらずに突くことだ。センバツ時の鳴門・冨田投手の投球が手本になるだろう。この球を見せることで初めて外の変化球を振らせることが出来るはずだ。

二松学舎大付としてはおそらく先発するであろう大阪桐蔭・川原投手にプレッシャーを与えるためにも、何としても接戦に持ち込みたい。

二松学舎大付が歴史を塗り替えてベスト8に進出するか?
それとも大阪桐蔭が粉砕するのか?

ベスト8最後のイスをかけて戦う、両校の熱いプレーに期待したい。

甲子園ラボ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?