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障がいのある人への殺傷事件と福祉士養成課程

▼こんにちわ。

▼8年前、K県で重度障がいのある19人が殺害されるという残忍な事件が起きたことはご存じの通りです。

▼マスメディアによる情報しか持たない部外者の私が、事件そのものをああだこうだと論じるつもりは毛頭ありません。ただ、被告に責任能力があろうがなかろうが、19人ぶんの生命の責任を人ひとりが取れるわけがないとのみ申し上げる次第です。

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▼しかし、この事件以降ずっと、のどに小骨が刺さったままのような感じで、私自身のなかで結論が出ていないことがあります。それは、この事件に限らず、利用者に危害を加えてしまうような学生を専門職として卒業させた養成校とその教員に責任はないのかということです。

▼いまのところ、この事件は個人のしわざということにされています。刑事事件としてはそうなのでしょう。しかし、たとえば、学生に反社会的な、あるいは極端に他人の人命や人権、尊厳をないがしろにするような発言が福祉士養成課程在学中にみられ、それを教員が認知していた場合、その学生に国家資格またはその受験資格を与えて卒業させた養成校とその教員に民事上の責任(過失責任)は問われないのかということです。ごくまれな例ですのでくわしいことは申し上げられませんが、私は担任として1例、別学科で1例、これに近い事例を経験しています。

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▼また、この事件では倫理綱領の重要性をまざまざと感じさせられました。

▼正直に白状しますと、私はある時期まで、倫理綱領というものをきちんと教えていなかったのです。専門職倫理なんて当たり前のことが書いてあるだけだし、「倫理綱領にかくかくしかじかと書かれてるから知っておいてね」程度でいいや、と考えていたのです。倫理綱領が、具体的な実践場面でどれほど大事かということにまで考えが及んでいなかったのです。

▼極端な考え方にこり固まった状態の学生さんに対して、倫理綱領の教育がどれほどの効果があるのかは別としても、倫理綱領を遵守したくてもできない場合(いわゆる倫理的ジレンマ)や、組織内の力関係などの理由から遵守できない場合など、実情に即した、本質にえぐり込むような内容をまじえながら教えるようになったことはいうまでもありません。

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▼ともあれ、この事件が福祉士養成課程やその教員に投げかけた問題は非常に大きいと感じています。

▼養成校とその教員の責任については、同業者でそのような責任を問われたといううわさは聞きませんので、前例、判例はないのでしょう。前例、判例がないということは、解釈の余地があるということです。福祉士養成課程の教員は専任であろうが非常勤であろうが、今後、民事上の責任を問われるリスクを自覚しておくべきでしょう。

▼一般人が障がいのある人を多数殺傷したのではなくて、対人援助従事者がクライエントを多数殺傷したという点は、私も半分引退していますが養成校の教員ですので、わがごととして向き合っていこうと思います。

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