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ライフラインチャートのつくり方・活かし方 ~自己理解・自己分析のための強力な手法~

以前、自分の人生を見直し、充実した人生を送るためのフレームワークとして「バランスホイール」を紹介しました。

今回は、人生を通じて自分の価値観を知り、自己分析を行うツールである「ライフラインチャート」を紹介します。ライフラインチャートは、自分の人生の満足度を時系列に沿って視覚的に表現するツールです。就職活動やキャリアコンサルティングでも、自己理解を深めるために利用されており、厚生労働省のウェブサイトでも紹介されています。自己分析の手法としてはオーソドックスですが、非常に分かりやすく使いやすい、応用しやすいものです。


〇ライフラインチャートとは

ライフラインチャートとは、下図のように、縦軸に満足度(充実度・幸福度)などの感情の起伏、横軸に時間(年齢)をとり、曲線で表したものです。

バランスホイールが「現在の満足度・価値観」を確認するものであるならば、ライフラインチャートは「人生の軌跡を振り返ることで自分を棚卸しし、これまで大切にしてきた価値観や自分の強みを知る自己分析ツール」と考えられます。

現在はVUCAの時代であり、多様な生き方を自分で選べるようになったと同時に、様々な課題や困難を乗り越えて生きていくためには、自分軸を持つことが必要だとも言われています。しかし、「自分軸」や「自分らしさ」、「自分がやりたいこと」がわからないという人も多いです。

これらを見つけるヒントが、これまでの人生の中にあります。自分のことは自分が一番知っていますが、忘れてしまっていることも多いものです。生まれてから現在まで積み上げてきた経験の中には、大切にしていたこと、喜びや辛さなどの感情の源、困難を克服してきたリソースなどが眠っています。これらを紐解き、整理することで自分を再発見することができるのです。

〇ライフラインチャートのつくり方

セミナーやキャリアコンサルティングの場では、時間が限られているため、簡単な説明のみでチャートを作成することがあります。しかし、ライフラインチャートを作成する目的は、過去の自分を振り返り、現在・未来に活かすための自己分析なので、チャートを作成する前に丁寧に自分史をつくることをお勧めします。自分史を作成することで、ライフラインチャートの内容も充実し、より多くのリソースに気づくことができるからです。

▶ステップ1: 自分史の作成
ここでいう「自分史」とは、生まれてから現在までの経験、感じたことなどを振り返ることです。考えやすくするためにワークシートを添付しましたが、自分史の作り方については、インターネットで検索すればたくさんヒットするので、自分がやりやすい形・内容で大丈夫です。

ここでは、添付のワークシートについて説明します。ワークシートではたくさん記入する項目がありますが、特に思い出に残っている出来事だけでも大丈夫です。その時の感情も含めて振り返ってください。また書き方に決まりはないので、箇条書きでも文章でもよいです。

  • 時期: 出生~小学校卒業、中学・高校時代までは多くの人が共通していると思います。これ以降は人によって異なるので、自分のなかで区切りとなる時期に合わせて、大学~社会人4を使用ください。すべて使わなくてもよいですし、それ以上に分けても構いません。

  • 西暦・年齢: それぞれの時期の西暦・年齢について記入します。

  • 住んだ街: 転居の経験がある場合には、何歳~何歳まで、どこに住んでいたのか記入します。住んでいた町を思い出すことに紐づいて、自分の経験や感情が呼び起こされることも多いです。

  • 家族: 一緒に住んでいた家族を記入します。増えたり減ったりすることもあります。ペットや同居人など、自分に大きな影響を与えた家族がいたら、記入してください。家族との思い出や当時の感情なども十分に感じてください。

  • 学校・キャリア・学び: キャリアには、社会人としての仕事歴だけでなく、大学生時代のアルバイトや副業なども含みます。また、自己啓発や資格試験などの学びもあったら、なぜそれを目指したのか、勉強中に感じたことなども思い出してください。

  • 出来事: あなたにとって大きな経験となった出来事を記入してください。嬉しかったこと・楽しかったことなどポジティブな出来事だけでなく、つらかったこと・悲しかったことなどネガティブな出来事も記入します。あなたの経験はあなただけの貴重なリソースです。

  • 光景・声・音・感覚: 上記の出来事が起きたときに見えていた光景や聞こえてきた音・声、また肌触りなどの感覚・匂いなど、そのとき五感で感じていたことを記します。そのときの感情の大きさなども書いておくと良いでしょう。

  • 人物・本: その時期にあなたに大きな影響を与えた人物や本を記入します。人物は、家族以外の親戚や、先生・師匠などのほか、ライバル、友人、ペットや漫画などのキャラクターでも構いません。あなたの思考や行動に影響を与えたものを記入します。本はビジネス書・自己啓発書だけでなく、小説でもマンガなどでもなんでも大丈夫です。

  • 社会の出来事: 社会的な出来事が、あなたの人生に大きな影響を与えることがあります。例えば最近では、コロナ禍が生活様式を大きく変えました。思考や行動の変化を知るだけでなく、自分の中の出来事を思い出すきっかけにもなります。

▶ステップ2: ライフラインチャートを描く

1.自分史の中で、特に感情が現れた時期に●を付けます。そしてその近く に、簡単に出来事や感情を書いてください。
2.●を1本の曲線でつなぎます。

▶ステップ3: 人生を考察する
曲線が描けたら、丁寧に振り返ります。上下しているところの共通点を考えたり、上昇・下降したときの要因を思い出します。

1.曲線が上昇している時期

  • なぜ満足していたのでしょうか。

  • どうして満足することができたのでしょうか。成功することができたのでしょうか。

これらの質問から、あなたが大切にしていた価値観や、あなたが求めていること、強み、得意なことなどがわかってきます。そして、ここに現れた内容を大切にすることで、これからのあなたの人生の満足度を高めることができます。

2.曲線が下降している時期

  • なぜ不満を感じていたのでしょうか。

  • どうして満足できなかったのでしょうか。

  • 不満を感じていた時の共通点は何でしょうか。

  • どうやって、または何があったから、この状況を克服することができたのでしょうか。

これらの質問から、あなたが幸せでないときの行動パターンや、自分の弱みや苦手なものを知ることができます。また、困難な状況を乗り越えるための行動パターンもわかります。

〇ライフラインチャートのさらなる活用方法

ステップ3までが一般的なライフラインチャートのつくり方と活用方法です。ここまででも十分に自分を振り返ることができますが、さらにライフラインチャートを活用するための方法を2つ紹介します。

1.ライフラインチャートを使って対話する
ライフラインチャートをつくるときは、自分の主観的な感情をもとに曲線を描きました。自分の道筋を人に話すことで、自分の気持ちや考えを整理して振り返ることができると同時に、聞いた人から自分では気づかなかった視点や気づきを得ることができます。

 2.キャリアコンサルタントに相談する
先にも書きましたが、ライフラインチャートはキャリアコンサルティングの場で日常的に使われています。キャリアコンサルタントは、あなたのライフラインチャートについて専門的な視点からアドバイスを提供できます。人生100年時代と言われ、中高年の転職や副業もしやすくなってきました。有料のキャリアコンサルティングもありますが、公共機関などでは無料でも受けることができます。将来のキャリアについて考えたい場合には、ぜひ活用してみてください。

〇将来の自分を思い描く

ライフラインチャートを活用した自己分析によって、次のようなことがわかったのではないでしょうか。

  • 自分の強み、苦手なこと、価値観

  • モチベーションが上がる/下がるときのポイントや行動パターン

  • マイナスの状況を乗り越えるときの行動パターン

ライフラインチャートは、自己分析のための強力なツールです。しかし、自己分析は分析して終わりではなく、今後どう活かしていくかを考えることも非常に重要です。下記の記事などを参考に、ライフラインチャートで自己分析してわかったことをもとにして、この先どんな人生を歩みたいのか、より充実した幸福な人生を歩むためにはどうすればよいかについても、ぜひ考えてみてください。

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