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ミライのキャリア#6 文化と風土

前回のラインとスタッフ復習


【Caol】
 まず前回の復習。今、日本で働こう、とすると大体は組織に入って仕事をします。自分が所属しようとする組織がどんな集団特性を持っているか、を知ることはキャリアの上でとても大切。組織がとんな特徴を持っているのか、を知るための見方にはいろいろな見方がありますが、前回は多くの人を効率よく同じ目的で働かせるのに適しているラインとスタッフ=軍隊のような特徴を持つ集団について話をしました。
【ホリデー】
 あ〜〜。そうでした。僕とえりなちゃん、一ミリもダメなやつでしたねw
【えりな】
 はい〜。思い返しても、絶対無理ですね。
 今回は、企業など組織の持つ文化・風土の話、でしたよね。これってなんでしょう?

文化・風土


【Caol】
 自分のキャリアを考える上で、組織を理解する、ってことが大事だ、って話は前回からしていますよね。その組織らしさを見るのが「文化」と「風土」という見方です。
【えりな】
 文化、と、風土。
 もちろん意味はわかるのですが、割とおんなじような意味ですよね。どっちも「らしさ」みたいな。
【ホリデー】
 なんとなく言葉の持つニュアンスの違いはわかる気がするのだけど、それをちゃんと説明しろ、って言われると、そういえばちゃんと考えたことなかったなあ。
【Caol】
 そうそう。でも、ここをちゃんと分けて考えられるようになることが大事なのですよ。
 結論から言うと、文化は言葉でわかったり、オフィスを見て分かったりする、けど風土というのは、見聞きしづらい。でも組織の働きやすさを決めるのは風土のほう。なので、組織の「風土」を理解することが自分のキャリアを考える上でもとっても大事なのですよ。
【えりな】
 おお〜!なるほど!わかる気がする。
 じゃあ、組織の「風土」をどうやったら理解することができるのか、ぜひ教えてください!

文化とは?

【Caol】
 わかりました。と、言いつつ、風土と文化の違いをしっかり説明するところからお話ししたいと思います。
【ホリデーえりな】
 よろしくお願いします〜〜!
【Caol】
 まず文化の話。そもそも文化というのは、人類学で研究されてきた概念で、ある集団を構成するメンバーによって共有された考え方、慣習や規則のこと。」心理学の研究では、「異なる文化は、異なる環境に人々が適応する過程で生まれる」という視点から、文化の違いと環境の違いの関係を定量化することに努めてきました。
【えりな】
 えーと、文化の違い、と、環境の違い。
【Caol】
 どういうことかというと、環境が違っていると、その環境に合わせようと人間集団は努力します。今いるところの環境に合わせたやり方が「文化」で、環境が違うと、文化も異なってくる。例えば、すごく寒いところに合わせた生活の仕方と、熱いところの生活の仕方は違っているよね。この違いは個人だけでなく、集団を比較しても存在します。で、集団内では先輩が後輩に「こうすると寒くない」という生活の知恵を言葉で伝えるよね。
【ホリデー】
 うんうん、なるほど。
 雪国の人たちって、雪に対するボキャブラリーも多かったりしますけど、南国の人からすると雪は雪ですもんね。言語レベルで文化が違うってことが起こってきますよね。
【Caol】
 そうそう、私は東北出身なのですが、例えば、雪をかき分けて歩くことを「こぐ」と言いますが、雪のない地方だとこの言い方そのものがないですよね。
【ホリデー】
 へ〜!!そうなのですね!!
【えりな】
 海の近い私からしたら、こぐ、って言ったらボートかサーフィンですもんね。【Caol】
 あと「ゆきはな」という言葉もあって、これは晴れているのに粉雪がちょっと舞っている天気のこと。
【ホリデー】
 なんか美しいなあ。かおる先生のくせに叙情的だ。

組織文化、3つのポイント

【Caol】
 で、話を戻すと、組織の文化、理解のポイントは、文化というのは慣習や規則である、イコール誰かが言ったことや、文書に書かれているもの。言葉で読み解くことができるもので見てわかるものもある。
 キャリア・アンカーの話で出てきた、E.H.シャインは、組織文化の研究もしていて、ある特定の組織が、どのような組織文化を持つか、読み解くポイントは
 ①文物、②価値観、③メンバーが持っている前提
の3つがあります。
【えりな】
 ①文物、②価値観、③メンバーが持っている前提、ですね。
【Caol】
 第1の文物とは、オフィスのドアの有無、オフィスの机に仕切りがあるか、といった、目に見えるレベルのもの。
 第2の価値観とはドアをなくすとか、仕切りをなくするということによってことによって目指すこと、つまり文物の元になっているオープンで自由に議論することを大切にする価値観である。
 第3のメンバーが持っている前提とは、特定の集団に10年、20年と勤めていたらもはや当然と思い込み、疑うことがなくなってしまっている発想法や前提、仮説などのこと。
 企業の文化というのは、行動指針や創業者の言葉、今、リーダーシップをとっている人の言葉から、うかがうことができる。
 言葉の他に見て分かるものもあります。というのが文物というもので、これはオフィスを見るだけでも分かります。刑務所だと、ライン上の上位者の机が大きく、オフィス全体を見ることができるようになっています。階級が机の大きさや位置で見て分かるようになっているのですね。
【えりな】
なるほど〜。

組織の風土

【Caol】
 で、ここからが大事な「組織の風土」の話になるのですが、
 組織風土というのは、組織文化のうちメンバーの価値観から醸し出される共通の価値観と仕事の進め方、メンバー同士のコミュニケーションの取り方や、関係性ですね。こちらは、明文化されておらず、言葉で説明するのが難しいもの。
【ホリデー】
 ほほ〜〜。「醸し出される」ってところがポイントなのですかね。
 醸し出されているから、明文化されてない、ってことですね。
【Caol】
 そうそう、その集団にいる人は、「そうするのが当たり前だ」と思っているが、なぜそうするのかがいまいち分っていない、とか、コミュニケーションの取り方が外から見ると変わっているのだけど、中にいる人はあたりまえ、と思っていることなどですね。
【ホリデー】
 あ〜。僕も某広告代理店にいた時には「当たり前だ」ってことが色々あったのだろうなあ。20年近く働いて染み付いたものって色々ありそうだし、今でも気づいてないこと結構ありそう。
【Caol】
 で、いい風土がある集団だと、働く人視点だと、コミュニケーションがとりやすい、とか、居心地がいいとか、数字で表すことができる業績以外のことを評価してくれる、なんてことがありそう。メンバー同士がフラット、なんてこともそう。まとめると、言葉で説明しなくても価値観を共有しているのでやりやすさを感じることが多い、となるかな。
【ホリデー】
 ブラック企業のイメージの強い、僕の前職ですけど、僕としてはなんでも言いたいこと言えたし、年齢に関係なく良いアイデアを形にするのに協力しあっていたし、風通しよかったのですよね〜。えりなちゃんはどう?
【えりな】
 私のいた大手映像制作会社はミスの許されない厳しい風土で窮屈でしたね。
 「風通しのいい会社」ってよく聞きましたけど、これっていい風土アピールみたいなものなのかな?
【Caol】
 で、風土が悪い、とかウラがあるということもある。ミスに厳しい価値観の文化だと、ミスがばれないように行動する、とか、提案すると自分がやらなくてはならなくなるので黙っている、とか。これは創業者が「ミスしたものに責任を取らせる」と言っている=組織文化というわけではないのに、加点志向の価値観ではなく、減点志向の価値観だと、実際の風土はそうなっちゃうよね。
【ホリデー】
 ああ〜。なるほど。組織の風土でそういうことが起こっちゃう、ってのもめっちゃわかる気がする。

属人思考とは?


【Caol】
 で、この悪い組織風土の話なのだけど、社会心理学者の岡本浩一先生のチームが日本の組織を研究して「属人思考」というおそるべき風土を発見しました。これは「問題を把握し、解決するに当たって、事柄についての認知処理の比重が軽く、人についての認知処理の比重が高い。
 つまり、何があったか、というファクトの把握や、問題解決法の検討よりも、誰が言ったか、誰のためになるかのほうが優先される思考。
【ホリデー】
うわ〜〜〜〜、これはキツイ。本来、企業活動としてあるべき「成果を出す、ってことと関係ないですもんね。
【Caol】
 そうなのですよ。属人思考が強い組織では対人関係が濃くて、意見の賛成や反対が、対人関係とリンクされやすく、事柄を冷静に見られなくなる。岡本浩一先生の研究では、属人思考は企業の不祥事との関係が強いです。
【えりな】
 え〜。今時、そんな組織ってあります??
【ホリデー】
 いやあ、もちろんゼロヒャクの話じゃないけど、大なり小なり、そう言うのってやっぱりあるのだろうなあ。僕の会社のメインバンクの、とかそんなイメージです。
【Caol】
 そうそう、財閥系の電気を扱う企業とか。
【ホリデー】
 いや〜。きついわ。属人思考。
【Caol】
 で、特定の組織が、属人思考が強いかどうかをはかるチェックリストがあって、これは、
・相手の体面を重んじて、会議やミーティングで反対意見が表明されない。
・会議やミーティングでは同じ案でも誰が提案者かによってその案の通り方が異なることがある。
・トラブルが起きた場合、「原因が何か」よりも「誰の責任か」を優先する傾向がある
・仕事ぶりよりも好き嫌いで人を評価する傾向がある。
・誰が頼んだかによって仕事の優先順位が決まることが多い。
【えりな】
 ヤダ〜〜〜。こんな組織で働きたくな〜〜〜〜い。こんなふうに整理してもらうと、ちょっと思い当たることがないわけではないですね、あるかも。こんな組織。【ホリデー】
 え〜。なになに、何を思い浮かべてるの?w
 僕は今や経営者だから、もしかしたら自分自身がこうなってないか、気をつけないと、って背中寒くなっていますよ。
【Caol】
 ホリデーさん、ほんと、気をつけてくださいね。まず気を付けるポイントは社員の個人的な好き嫌いですね。業績というファクトで評価しているつもりが、無意識に好き嫌いが先にあってファクトを見ている、ということがあって、それが属人思考の始まりです。
【ホリデー】
 うわ〜!これは胸が痛い。これは全ての管理職が胸に手を当てて、このことを考えた方がいいかもしれない。
【えりな】
 確かに。属人思考のチェックリストに「属人思考の話に興味がない」「自覚がない」っていれた方がいのじゃないですか?
【Caol】
 で、この属人思考が、自分が入った組織に見られたら、すみやかに逃げるか、自分が偉くなって変えるかどっちか。ただ、ボスの属人思考が強く、異動したら変わった、ということもあるし、組織全体が属人思考ということもあるので、見極めは必要。昔「就職したら3年は務めないと」と言われたのは、上司が異動する周期までいないと分からないことがあるから、というふうに理解することもできる。
【ホリデー】
 僕は経営者なので、僕の考え方が風土に大きい影響を及ぼすってことも自覚しなくちゃだし、逆に社員という立場だと、なかなか個人で組織の風土を変える、って難しいですよね。
【えりな】
 風土を作る根本が社長さんですもんね。逆に新入社員が3年いたところで会社の属人思考が変わるとは考えづらいし…社員は見極めもいるのは頷けます。
【Caol】
 私見だが、この属人思考を防ぐ方法の一つがダイバーシティ、ですね。
【ホリデー】
 ほほー。ダイバーシティ。組織の中の多様性ってことですね。
【Caol】
 法務省というところは、意外にダイバーシティはあり、私、立場を変えて16年間刑務所に勤務しましたが、自分のボスに当たる課長級の管理職は全て女性でした。【ホリデー】
 へ〜〜!なんか勝手に抱いていた法務省のイメージと全然違いますね!
【えりな】
 確かに意外!かおる先生すらも部下にして国を支えている…同じ女性として憧れちゃうな~
 でも女性だったからよかった、ではなく、あくまでその人が広げてくれたダイバーシティがかおる先生にとって働きやすかったよってことなのですよね?
【Caol】
 そうですね。この首席という管理職についた女性は、例外なく、前任者のやりかたをそのまま受け入れることなく、今働いている部下をフラットに見ようとしていました。どうも前提が違う、立場が違う、ということで、性別と別にリーダーシップのあり方が異なっていた、ということがプラスに働いていたように思います。【ホリデー】
 当たり前を疑う、と言う視点が大事、ってことですね。
【えりな】
 次回は集団としての大企業編。ダンパー数とはなに?と言う話とダンパー数から見た組織の話をします。

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