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光を書くことを目標にしています。よろしくお願いいたします。

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都会のキリン

街を見下ろす都会のキリン あなたは創っているのですか? それとも壊しているのですか? 機械の僕にはわかりません でも ひょっとすると泣いてたりしますか?

    • てるてる坊主のラブレター ~夕方の話~ | 毎週ショートショートnote

      夕方、天窓から温かな西日が差し込むマンションのロビーにて、 ソファに腰かけた老婆が二人で話をしている。 「お昼のニュース…聞かれました?」 「真張(まばり)マンションで遺体が見つかった話かしら?」 「そうよ、孤独死はやっぱり悲しいわ。 摩針(まはり)さん、別居中の旦那とそろそろ一緒にお住まいになられた方がいいんじゃない?」 「いやよ、距離がないとやってられないわ。 向かいのマンションでもまだ近くて臭いがしてきそうなのに。 アイツは三毛猫と仲良くやってればいいのよ」

      • 粒状の総料理長 | 毎週ショートショートnote

        まないたの横でコーンがひと粒ゆっくりと動いている。 粒状の総料理長が運んでいるのだ。 「こっちは俺がやっとくから、コンソメと黒胡椒、あと卵を3つ溶いて持ってきて!」 小さな拡声器の前に立った総料理長が高い声で言う。 今日も大忙し。総料理長の指示に従い一生懸命働く。 ウェイターが料理を運ぶ時、そのお盆に必ず小さな拡声器がある。総料理長もちょこんと乗っているのだ。 「こちらはスズキのポワレ、夏みかんジュレを添えております」 スピーカーから聞こえる総料理長の声に感心したあ

        • てるてる坊主のラブレター | 毎週ショートショートnote

          「拝啓 602号室 てる様 初めまして、突然のお手紙失礼します。僕はミケ。 お名前も存じ上げておりませんが、貴方が現れてから毎日晴れています。 私も同じてるてる坊主ですが、なかなか晴れずご主人に怒られてばかり。 向かいの4階から、太陽のような貴方をいつも見つめています」 「拝啓 408号室 ミケ様 お手紙ありがとう、私はマハリ。同じてるてる同士仲良くしましょう。 ご主人の老婆は、もうすぐ孫の運動会だからと私をつるしてくれました。 その願いに応えるべく、今日も必死で祈ってい

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        都会のキリン

          三日坊主のクレーター | 毎週ショートショートnote

          東京ドームほどの広大な敷地に並ぶ数多の作品群。 記念すべき第百回 芸術文化作品賞の発表式が行われた。 厳かな表情でプレゼンターが直立する。 静まりかえる会場。 「それでは…発表いたします。 栄えある第百回 芸術文化作品賞大賞は… 『三日坊主のクレーター』です!製作者の方はご登壇ください」 すると、会場席から袈裟を着たお坊さんが30人おもむろに立ち上がり、 表彰台に登った。髪のない坊主が30人ずらりと並ぶと異様な光景だ。 「ご受賞おめでとうございます。 受賞作を作成され

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          奇岩シューズ | 毎週ショートショートnote

          修司の一家が経営する民宿『祈願荘』は島の海岸沿いにあった。 窓から見える絶景。浅瀬に見える『奇岩靴』が名物だ。 2つ並んだ岩はブーツの様な形をしていて、靴を履く様に岩に立ち写真を撮る人が少なくない。奇岩靴の恩恵を受け民宿はいつも繁盛していた。 だがある日、大きな地震で左の奇岩靴が崩落し、 翌年の嵐により後を追うように右の奇岩靴も消失した。 奇岩靴は永遠に存在するものと信じていた。 当たり前の日常と自然を侮っていた。 名所を失った祈願荘は客足が遠くなり、やがて閉館した。

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          祈願上手 | 毎週ショートショートnote

          『正しい参拝の仕方』…と。 受験生の広田は検索ボタンを押した。 「二拝二拍手一拝?なにこれ、全然わからへん!」 広田は同じく合格発表を控える宮野に泣きついた。 「こんなん適当でええ、気持ちや気持ち」 宮野は賽銭箱に10円玉を片手で投げ込み、適当に一礼してその場を後にした。 「おい宮野、バチ当たるぞ!落ちるぞ!」 「大丈夫や、俺は祈願上手や」 「ほんまかいな…俺はちゃんとやるからな」 広田は参拝の仕方を頭に叩き込み、しっかり二拝二拍手一拝した。 一ヶ月後、合格

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          山岳カルマ | 毎週ショートショートnote

          「山にも隠れ家があるんだなぁ」 上級者ルートの中腹に、ひらがなで書かれた看板があった。 山小屋の名は【皆の裏店 よく来たね】。 「こんな場所じゃお客さん来ないでしょ?」と広志は汗を拭う。 「そんなことないですよ。 お客様のような上級者に来て頂けるのでやっていけます」 背中で笑う老人。 「マスターも山がお好きなんですね」 「えぇそうです」と垂れた眉で柔和に笑う老人は、冷蔵庫から瓶ビールを取り出し広志の席へ置くと、古びたエプロンから特徴のある栓抜きを取り出した。 その

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          文学トリマー | 毎週ショートショートnote

          >「ブルータス…お前もか?」カエサルは驚愕した。 古代ローマの執筆を生業とする板野は手を止めた。 昨日買った『文学トリマー』を使ってみよう。 削ってほしい文章を声に出して指定すると、 その部分を切り取ってくれるらしい。 これで推敲した文章をアップロードしよう。 板野は文学トリマーの電源を入れた。 …昨晩からインターネットの調子が悪く、 天井裏で2人の作業員がルータ交換を行っている。 アベが上司でサトルが部下らしい。 「アベさんそっち線見えますか?」 「OK、ルータと

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          記憶冷凍2 | 毎週ショートショートnote

          極寒の夜にアキトに振られた。 刹那、息が止まり、ようやく吸った冬の匂いが鼻を抜けて脳内を急激に冷やした。 その日から私は人を好きになることをやめた。冷凍された記憶。こうすれば辛さが芽吹くことは二度とない。 アキトの友人のカズマには悩みをよく相談していて、今日も居酒屋にいる。 「もう誰とも付き合わないの?」とカズマ。 「わたしにはもう恋愛は必要ないかな」 「確かにアキトはいい奴だ。でも、ミキが辛そうな顔をしているのは俺も辛い。ミキは本来明るい人間で、いるだけで周りを

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          二億斎藤 | 毎週ショートショートnote

          「悲しすぎて草」 「悲しみを歌う斎藤こそ絶対的存在」 「永遠に斎藤の悲しみについていく」 賞賛のレビューで溢れ再生数は加速度的に増加した。 覆面マスクの斎藤が歌う「慟哭と動く」のMVが SNSのショート動画でバズってから1年。 再生数は1億9999万9990回を突破した。 斎藤は手に汗を握りながら増えていくカウントを凝視した。 再生数が二億回に迫る某日、斎藤はある決意をしていた。 二億回を超えたら「ボンボヤージ斎藤」という芸名は封印し、 「二億斎藤」という名前に改名

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          記憶冷凍 | 毎週ショートショートnote

          ウチのオカンは抜けている。 まず誤字が多い。 「猫顔かな?」とオカンからLINEが来たので 「わしゃ犬顔じゃ」と返すと 「猫飼おかな?の間違いすまん」の一言。 今日もLINEが来たので見てみると 「夜ごはん冷凍庫に入れてます。記憶」とのこと。 記憶ってなんやねん。 何と間違えとんねん。 家に帰って冷凍庫を開けると、 「記憶」ラベルのタッパーがあった。 ほんまに記憶やん… タッパーを開けるとオカンの声がした。 「あつし聞こえるー?ウチ忘れっぽいから記憶ごと冷凍

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          放課後ランプ2 | 毎週ショートショートnote

          チャイムが鳴った。放課後になった。 片づけながら何気なくクラスを見渡すと、 ユリの胸がほのかに光っていることに気がついた。 他の人は気がついていないみたいだ。 「どうしたの?」私はユリに聞いた。 「休み時間につらいことがあったの」 「悩み聞くよ」 悩みを聞いた後、ユリがありがとうと言った。 胸のランプが消えていた。 私はそれを放課後ランプと名付けることにした。 光っている人は、誰かに助けを求めている。 私はそれに気づいてから、毎日誰かを助けることにした。 「ど

          放課後ランプ2 | 毎週ショートショートnote

          放課後ランプ|毎週ショートショートnote

          学校の天井にある小さなランプ。 終業のチャイムが鳴り、放課後になると白く淡い光を灯す。 生徒はそれを「放課後ランプ」と呼んでいる。 儚く揺れる放課後ランプは昔ながらの白熱電球で寿命が短く、 半年に一回は電球が切れてしまう。 「よっこらせ」 白髪交じりでいつも青い作業着を着た職員の前山さんが、 ぼろぼろの脚立を立てて電球を交換してくれる。 「さようなら」 部活でクタクタになった僕は挨拶しながらその脇を通り抜ける。 「気を付けて帰れよぉ」 間延びした声と、決して良い

          放課後ランプ|毎週ショートショートnote