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粒状の総料理長 | 毎週ショートショートnote

まないたの横でコーンがひと粒ゆっくりと動いている。
粒状の総料理長が運んでいるのだ。

「こっちは俺がやっとくから、コンソメと黒胡椒、あと卵を3つ溶いて持ってきて!」

小さな拡声器の前に立った総料理長が高い声で言う。

今日も大忙し。総料理長の指示に従い一生懸命働く。

ウェイターが料理を運ぶ時、そのお盆に必ず小さな拡声器がある。総料理長もちょこんと乗っているのだ。

「こちらはスズキのポワレ、夏みかんジュレを添えております」
スピーカーから聞こえる総料理長の声に感心したあと、客はその味に舌鼓を打つ。

ただその日の閉店前に事件が起きた。

新人のウェイターが慌てて、お盆をひっくり返してしまったのだ。そこには総料理長も乗っていた。

必死になって辺りを探したものの、床に落ちているのは料理の残骸と小さな拡声器だけだった。

みんな泣いた。

翌朝、悲しみをこらえながら出勤して厨房を覗くと、小さなコーンがひと粒ぷるぷる動いていた。

「よかった、生きてた!」

(410文字)


たらはかにさんの企画に参加させて頂いております。
コーンひと粒は何に使うんでしょうね。

#小説 #ショートショート #毎週ショートショートnote #粒状の総料理長





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