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放課後ランプ|毎週ショートショートnote

学校の天井にある小さなランプ。
終業のチャイムが鳴り、放課後になると白く淡い光を灯す。
生徒はそれを「放課後ランプ」と呼んでいる。

儚く揺れる放課後ランプは昔ながらの白熱電球で寿命が短く、
半年に一回は電球が切れてしまう。

「よっこらせ」

白髪交じりでいつも青い作業着を着た職員の前山さんが、
ぼろぼろの脚立を立てて電球を交換してくれる。

「さようなら」

部活でクタクタになった僕は挨拶しながらその脇を通り抜ける。

「気を付けて帰れよぉ」

間延びした声と、決して良いとは言えない歯並びで笑う前山さん。
夕陽に染まる背中が優しかった。

ある日前山さんが病気で亡くなってしまってから、
放課後ランプの電球は切れたまま交換されなくなってしまった。
旧校舎が取り壊され、新校舎に移り変わることになったからだ。

新校舎の入り口のランプはLEDで何年も交換の必要がないという。

煌々と光を放つ放課後ランプを見るたび僕は思い出す。
淡い光に照らされた前山さんのあの姿を。

(410文字)

note初めての投稿です。面白そうだったので参加させていただきました。
今日は少し肌寒いですね。よろしくお願いいたします。

#小説 #ショートショート #毎週ショートショートnote #放課後ランプ

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