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自分軸の作り方#63 「ちゃんと泣ける子に育てよう」2章② フラッシュバックは、やりなおしのチャンス!

「ちゃんと泣ける子に育てよう」から お届けしたい子育ての奥義。

今回は、「フラッシュバックはチャンス」のお話。

 ≪登場人物≫

先生・・・「ちゃんと泣ける子に育てよう」というテーマで、
三歳児を子育て中の二組の夫婦に 子育てについて教える。

ゆうたママ・・・子供が泣いていると、まわりから「しつけをせず、わがままに育てている」と思われ、他の子より劣っていると「ちゃんと育てていないダメな母親」と評価されると感じている。子供が泣くと「どうして泣くの!」とキレて、いつも自己嫌悪。

ゆうたパパ・・・子供なんて放っておけば育つと思っている。泣かせないことが大事で、泣いても放っておく。自分も放っておかれた。

あゆみママ・・・幼い時から「周りの気持ちを考えなさい」と育てられた。あゆみが泣くと怖くなり、どうしてよいかわからず頭が真っ白になる。泣かせないように、先手先手を打つ。

あゆみパパ・・・親から厳しく育てられ、暴力をふるわれていた。父親の役割はガツンとやることだと思っている。

****************

先生は、「外傷体験と 自然治癒力」について語り始めた。

よく聞く「トラウマ」とは、心の傷・心的外傷のことで、
脳内で「記憶の情報処理に問題が起こっている」という意味だ。

「かたまる」という原始的防衛で身を守り、
「よい子」と褒められてきた子どもたちは、
弱さ・脆さを抱えていることに気づかれないまま
「よい子」として育つ。

心的外傷についてのたとえ話として、

いじめられ被害に遭った、けんじくんのお話。

けんじくんは 小2のときに「ばいきん扱い」されて、けんじくんから給食を受け取らない、けんじくんにプリントを渡さないなど、の いじめを一年間受けた。

先生が見かけたらいじめている子を注意するが、大人がいないところでは、何も変わらず、いじめが続く。

朝になるとけんじくんは「学校に行きたくない」という気持ちでいっぱいになり、

玄関で動けなくなった。お母さんが何を言っても、動けない。

ところがその姿を見た祖父母が
「しつけがなってない」と、お母さんを叱る。

けんじくんは、お母さんが大好きなので、お母さんが叱られるのは嫌だ。
お母さんに笑顔を見せて、
「いってきます」と学校に行くようになった。

小3になりクラスが変わって、いじめはなくなった。

けれど、二か月後。けんじくんは学校のチャイムを聞くと体がふるえ、
恐怖に襲われて登校することができなくなる。

お母さんを困らせたくないと思うのに、硬直してしまうのだ。

学校に行けない自分のことで、祖父母に責められるお母さんを見て、
「お母さんを困らせる僕は、いないほうがいい」と思うようになる。


先生は続ける。

人の記憶には、
①認知
②感情
③身体感覚
④視覚
⑤聴覚     この5つの記憶がある。

けんじくんの「小2の時のいじめ」は①
「怖かった、悲しかった、つらかった」は②
「身体が震える、緊張する、どきどきする」は③
いじめられた時の、みんなのニヤニヤした顔・無視する顔・にらむ顔は④
「ばいきん、という声、チャイム、机を動かす音」は⑤

通常は、この記憶はひとまとめのセットになっていて、
そのまま脳の中で「長期記憶の倉庫行き列車」に乗って情報処理がなされる。

けれど、人が衝撃を受けた時の外傷記憶では、これらがばらばらに切り離される。

このとき、①認知の記憶は明確に覚えているが
②③④⑤の記憶はばらばらになってしまうことが多いようだ。

それを「解離の防衛」という。

この防衛反応のおかげで危機的場面でも、
冷静に対処できる。

「お母さん、いってきます」と笑顔になれたのは、そのためだ。

ところが

ばらばらにされた記憶の断片は ばらばらであるために、

「長期記憶の倉庫行き列車」に乗って、情報処理されることがなく
「過去のこと」にはならずに、ずっと現在をさまようことになる。

すると、なんらかの刺激が引き金になって、ばらばらの記憶をよみがえらせるという。
これを「フラッシュバック」という。

いじめられていた当時の感覚がリアルに再現され
現在が安全であるにも関わらず、危険にさらされている恐怖が続いてしまう。

けんじくんの場合、チャイムの音や友達の目や校門が「引き金」となり
当時の感情がフラッシュバックして

いまのクラスにいじめる子がいないとわかっていても
身体がふるえて、かたまってしまう。

「トラウマ」とは
自分に衝撃を与えたできごとの記憶が 
脳の自然な流れとして情報処理されなくなり
「過去」の情動・身体感覚・視覚・聴覚の記憶が
「現在」リアルに存在するような脳の状態に陥ること。

あゆみパパ・・・要するに、自分の意識の力でコントロールできない状態になるってことなんですね。こどもって、そんな簡単に、こんな大変なことになってしまうんですか?

ゆうたパパ・・・そんなに簡単にトラウマになっちゃうとすると、心配だ。同じようにいじめられても、そんなふうになる人とならない人がいるのはどうして?

先生は答える。

家族など周囲の大人のかかわり、コミュニケーションが大きな影響を与えている。

けんじくんの場合は、自分の身体の不快な感情を 大人が納得するような言葉で表現できず、ぐずぐずしてしまう。母親とけんじ君のすったもんだをみた祖父母がお母さんを叱ると、けんじくんは、自分のせいでお母さんが困っているとわかる。

こどもはお母さんのためならなんでもできる。

自分のネガティヴ感情を封印して元気になること。それが親孝行になる。

けんじくんは、
泣きたい感情・怒りたい感情、悲しい感情を封じ込めてしまった。

朝ぐずぐず泣いて

「学校いやだー、怖い、悲しい」って叫んで、お母さんに抱きしめてもらえたら、
トラウマになることは予防できた。

そして、けんじくんのように

「お母さんを困らせる僕は、いないほうがいい」と自分を認識するということは
トラウマを持続させる要素になってしまうのだ。

あゆみママ・・・要するに、子どもが辛い時に親がちゃんと「つらかったね」って抱きしめて守ってあげれれば
その時はつらいけど、
トラウマみたいな後遺症にならないで、子どもを守ってあげることが
できるってことなんですね。

先生は、「トラウマが治る」ということについて、説明を続ける。

トラウマが治るということは、
ばらばらになっている記憶の要素が、ひとまとまりのセットになって
「長期記憶の倉庫行き列車」に乗ることを意味する。

つらかった記憶は、セピア色の過去になる。

「長期記憶の倉庫行き列車」に、乗せるためには、

いじめられたことを思い出し「怖い!悔しい!!」と泣きじゃくったり
怒りを吐き出し
「私は悪くない!!」と認識できるようになること。
つまり、治るためには、もう一度
つらい体験を、再体験することなのだ。

こどもの脳は、柔軟だ。

けんじくんのように、クラス替えによって危険が去ったとわかると、

脳は、正常な動きを取り戻そうと 動き始める。

ばらばらに切り離されていた記憶を 
「長期記憶の倉庫行き列車」に乗せるため
ひとまとめにしようとする自然治癒力が、
人間には備わっている。

つまり「フラッシュバック」は、
トラウマが治るための

チャンスなんだ。

そして、

フラッシュバックは、タイムトラベル。
過去に戻っちゃっているということだ。
小2の時に、玄関で固まって動けなくなったときに
抱きしめてあげられなかったお母さんにとっても

小3になって、もう一度、けんじくんを抱きしめるところからやり直せる
チャンスがきた、ということなんだ。


****************

私の過去記事にもあるように、「不登校は育ちなおしのチャンス」と
私はとらえている。

本当は、「トラウマ」について書いていいのかすごく迷った。

アダルトチルドレンの本などを読み、「インナーチャイルド」という言葉が出てきて、
「トラウマは専門家の下で、ケアを受ける」ということが推奨されているからだ。

でも、noteに書こうと思ったのは
日本の教育制度の中で、トラウマがない という人は、
ほとんどいないのではないかと思ったからだ。

幼稚園でも学校でも、嫌でもみんなと一緒に何かをする。

「嫌だ!」と駄々をこねたら、問題児として扱われ
叱られることが増え、親と先生が怖い顔をしてにらむことも増える。
「かたまる」防衛反応を求められ続ける。
ある程度、自分の感情を封印しないと、団体生活は送れない。

親に愚痴を言ったところで
「学校はそういうところなんだから、
みんな耐えられるんだから、あなたも我慢しなさい」と
言われることが多いのではないかと思う。

これは、斜めのコミュニケーション。話をしてもモヤモヤが残る原因だ。


お母さんに「そうか、つらかったね」と
まっすぐに言葉を受け止めてもらい、抱きしめられたら
自己肯定感が高く、感情のコントロールができる子に育つのだろう。

でもたぶん、基本的に 不快感情を受け止める文化は、日本には育ってないと思う。
「親と先生の言うことを聞く、よい子」が、
通信簿で高く評価されるシステムがものがたっている。


思春期に感情が爆発することは、健康の証なのではないかと思う。
思春期の暴言は、成長のチャンス。

「幼い時に抱きしめてほしかったんだよ!」という、子どものサインを
見逃したくはないと思う。



そして、それは、親にとっても
学校の先生にとってもチャンスなのかもしれない。


ここから、親子関係から脱線するけれど、おつきあいいただきたい。

自分が「瞬間湯沸かし器」だと、保護者会で自己紹介していた先生が、
小3の息子の担任だった時、

息子はすごく先生の声を怖がっていたし、
先生の暴言で傷ついた子どもも多かったと思う。

たまたま先生が怒り散らしているときに、
PTAの仕事で息子の教室通りかかった。


全員が叱られている場面だった。

先生の勘違いにより、叱られた一人の児童が泣き出し
「勘違いしているって、なんで誰も教えてくれなかったの!?」と
児童の責任であるかのように、ずーっと怒り散らしていた。

わたしは教室の前で、かたまってしまった。
何もできなかった。


先生の勘違いで長々と叱られたその子は

泣きながら教室から飛び出してきた。

その時にたまたま他の先生が通りがかったので、
その先生にお任せしてその場を立ち去ったのだけれど

その子は一年後、不登校になり

そこから一年半、学校に行けなくなった。

部屋にこもってゲーム漬けになったその子のママから、
何度も泣きながら相談をされた。


先生が頭に血が上る経験をしているとするなら、
それは、何かの刺激をきっかけにして
交感神経が暴走して、闘争状態になっている危険な状態だ。

もしそんな先生が学校にいるなら、その先生のトラウマが
「やりなおしのチャンス」を教えてくれているのかもしれない。


もしこれを読んでくださっている学校の先生がいるなら、
「ちゃんと泣ける子に育てよう」や「ポリヴェーガル理論」を、是非読んでいただけたらと思います。

瞬間湯沸かし器みたいな先生を、

安心安全で包んであげてほしい、と心からお願いします。



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お知らせ


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定員は6名、参加費1000円です。

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