優雅で繊細なシリア料理を知るための10皿
アラブ地域といっても広い。東はペルシャ湾岸に面したオマーン、西は大西洋に面したモロッコ。だから、アラブ料理といっても多種多様だ。
今回はその中でも「シリア料理」を取り上げる。ここでいうシリアは、アラビア語でシャームとも呼ばれる、いわゆる「大シリア」、レバノン、ヨルダン、パレスチナといった東地中海地域を包摂した、ひろい意味でのシリア料理だ。
①ホンモス
シリア料理といえば、前菜。前菜といえばホンモス。ひよこ豆を主な材料とするペースト状の食べ物。
普通、平たい白っぽいホブズ(エジプトでは「シリアのパン」と呼ばれている)につけて食べる。あきのこない味なので、食事の前哨戦ながら、どんどん食べ進んでしまうこともよくある。
②ザアタル
そのホブズにつけるスパイスとして、有名なのがザアタル。オリーブオイルでといて、ホブズに塗りつけて食べる。世界に散らばるシャーミー(大シリア出身者)は、これなくして朝食は食べられないらしい。
確かに、何かくせになる味だ。エジプトでは、ザアタル付きのクロワッサンなんかもパン屋で売っていた。
③ラバネ
ホンモスと並んでパンつけるディップ的なものとしては、ラバネと呼ばれるヨーグルトチーズ。
ボール状になっているものもある。最初口にする時は「エッ」というぐらい酸っぱいが、次第にやみつきになり、これなくしてシリアでの朝食はありえない、というぐらいになる。
④タッブーレ・サラダ
サラダも、他のアラブ圏でもスタンダードになっているものがいくつもある。タッブーレ・サラダ。パセリ、トマトなどの野菜に、ブルグル(ひきわり小麦)などを加えてレモン汁で味付け。
これも、酸っぱさがクセになる味。
⑤ファットゥーシュ・サラダ
パリパリとした食感を楽しみたいのは、ファットゥーシュ・サラダ。
ザクロソースがかかっていることもあり、タッブーレとは異なった甘味を含んだ酸味が特徴的だ。
⑥ケッベ
暖かい前菜として有名なものが、ケッベ。レバノンやシリアではラグビーボール型が一般的だが、イラクのモスルでは、平たい円形だったりもする。
欧米などのレバノン料理レストランには、必ずといっていいほど前菜メニューにある。
⑦ケッベ・ネイエ
ケッベには、あげていない生のものもある。「ケッベ・ネイエ」と呼ばれていて、欧州のタルタルステーキに近いのかも知れないが、スパイスをつけて食べると独特の味わいが出る。
生肉という点では、トルコのチーキョフテとも類似点はあるが、チーキョフテは概して辛い。ケッベ・ネイエのほうが、肉そのものを味わう感じが強い。
⑧ドルマ
ドルマと呼ばれるご飯をピーマン、ズッキーニなどの野菜に詰めたり、ブドウの葉で巻いたりした食べ物。日本人の口にとても合う料理だと思う。
⑨ナッツ入り鶏飯
ご飯ものも結構いろいあって、味付けも工夫されている。
ナッツと一緒に炊きこんだご飯。こういったご飯が、街の普通の食堂で食べられるのが、シリアの食文化の奥深さだ。
⑩スズキのホイル焼
もう10皿目まで来てしまった。ひとつぐらいはメインディッシュを。
スズキのホイル焼き。レモンと塩というシンプルな味付けなのだが、とても美味だった。地中海の魚は素晴らしい。残念なことに、写真がスズキのしっぽまでで切れてしまっている。写真をクリックしてツイッターに移動し、さらに写真をクリックして、見事なスズキの身を確認してほしい。
残念ながら、ここで10皿を紹介し終えた。メインディッシュはまた次の機会に。
シリア地域は、パレスチナ紛争、レバノン内戦、そして8年を経過したシリア内戦と、戦乱の絶えない現代史を経験してきた。こうしたすばらしい食文化をはぐくんできたシャーミーたちへの敬意と尊敬、そして国土再建への願いを込めて、「優雅で繊細な」10皿を紹介させてもらった。
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