![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/10321711/rectangle_large_type_2_d2c99ad5a38950e3e0928f8e86fdb04b.jpeg?width=800)
優雅で繊細なシリア料理を知るための10皿
アラブ地域といっても広い。東はペルシャ湾岸に面したオマーン、西は大西洋に面したモロッコ。だから、アラブ料理といっても多種多様だ。
今回はその中でも「シリア料理」を取り上げる。ここでいうシリアは、アラビア語でシャームとも呼ばれる、いわゆる「大シリア」、レバノン、ヨルダン、パレスチナといった東地中海地域を包摂した、ひろい意味でのシリア料理だ。
①ホンモス
シリア料理といえば、前菜。前菜といえばホンモス。ひよこ豆を主な材料とするペースト状の食べ物。
普通、平たい白っぽいホブズ(エジプトでは「シリアのパン」と呼ばれている)につけて食べる。あきのこない味なので、食事の前哨戦ながら、どんどん食べ進んでしまうこともよくある。
②ザアタル
そのホブズにつけるスパイスとして、有名なのがザアタル。オリーブオイルでといて、ホブズに塗りつけて食べる。世界に散らばるシャーミー(大シリア出身者)は、これなくして朝食は食べられないらしい。
確かに、何かくせになる味だ。エジプトでは、ザアタル付きのクロワッサンなんかもパン屋で売っていた。
③ラバネ
ホンモスと並んでパンつけるディップ的なものとしては、ラバネと呼ばれるヨーグルトチーズ。
酸っぱさがやみつきになる。アラブの「ヨーグルトチーズ」ラバネ。オリーブオイルと一緒に。上から2段目はひよこ豆のペースト「ホンモス」。どちらも東地中海地方の朝食の定番。写真は、ヨルダン・アンマンのホテルの朝食で pic.twitter.com/qDidOCLAIA
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) May 17, 2014
ボール状になっているものもある。最初口にする時は「エッ」というぐらい酸っぱいが、次第にやみつきになり、これなくしてシリアでの朝食はありえない、というぐらいになる。
④タッブーレ・サラダ
サラダも、他のアラブ圏でもスタンダードになっているものがいくつもある。タッブーレ・サラダ。パセリ、トマトなどの野菜に、ブルグル(ひきわり小麦)などを加えてレモン汁で味付け。
麗しのレバノン料理前菜。ホンモス、ラバネ、タッブーレ。フェイルーズの音楽を聴きながら pic.twitter.com/X0Vai9ndx1
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) September 29, 2013
これも、酸っぱさがクセになる味。
⑤ファットゥーシュ・サラダ
パリパリとした食感を楽しみたいのは、ファットゥーシュ・サラダ。
キュウリとトマト、それにカリッと揚がった薄いパンがたっぷり入ったファットゥーシュサラダ。ザクロソースのドレッシングと生ミントがアクセントになっている。シリア料理の定番。ダマスカスのレストランで。 pic.twitter.com/Ei3W0UBmfv
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) November 18, 2015
ザクロソースがかかっていることもあり、タッブーレとは異なった甘味を含んだ酸味が特徴的だ。
⑥ケッベ
暖かい前菜として有名なものが、ケッベ。レバノンやシリアではラグビーボール型が一般的だが、イラクのモスルでは、平たい円形だったりもする。
シリア料理の前菜として有名なラグビーボールの形をした肉入りコロッケ「ケッベ」。ダマスカス中心部の食品市場で pic.twitter.com/xGP4Z6iQtK
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) November 11, 2015
欧米などのレバノン料理レストランには、必ずといっていいほど前菜メニューにある。
⑦ケッベ・ネイエ
ケッベには、あげていない生のものもある。「ケッベ・ネイエ」と呼ばれていて、欧州のタルタルステーキに近いのかも知れないが、スパイスをつけて食べると独特の味わいが出る。
アラブ圏、特に東地中海地域で食される羊生肉タルタル「ケッベ・ネイエ」。現在のトルコの「チーキョフテ」に比べると、ひきわり小麦ブルグルの配合比率が低く、生肉感が強い。肉を挽いていない正肉ケッベもある。どちらもチーキョフテのような辛さはない。レバノン首都ベイルートにて。 pic.twitter.com/S47pjtEoc9
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) August 26, 2018
生肉という点では、トルコのチーキョフテとも類似点はあるが、チーキョフテは概して辛い。ケッベ・ネイエのほうが、肉そのものを味わう感じが強い。
現代メソポタミアの名物料理のひとつ「チーキョフテ」。羊や牛の生挽肉にひき割り小麦「ブルグル」や香草を手でこねあげる。完成品には指の形がくっきり。チグリス・ユーフラテス川の上流、トルコ東南部のシャンルウルファ、ディヤルバクルなどが本場だが、イスタンブールにチェーン店もある。 pic.twitter.com/1FUIiVXjQA
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) August 19, 2018
⑧ドルマ
ドルマと呼ばれるご飯をピーマン、ズッキーニなどの野菜に詰めたり、ブドウの葉で巻いたりした食べ物。日本人の口にとても合う料理だと思う。
シリアの食の粋、それはドルマ。くり抜いた野菜にごはんを詰めたり、ごはんをブドウなどの葉などで巻いたもの。写真はズッキーニのドルマ。東エルサレムの友人宅にて pic.twitter.com/s7fhLBlmYY
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) January 16, 2017
⑨ナッツ入り鶏飯
ご飯ものも結構いろいあって、味付けも工夫されている。
シリア料理の粋、それはナッツ類。鶏とピーナッツかけご飯。生野菜とピクルス添え。ダマスカスの下町の食堂にて。 pic.twitter.com/qitHC1u8Sr
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) December 22, 2016
ナッツと一緒に炊きこんだご飯。こういったご飯が、街の普通の食堂で食べられるのが、シリアの食文化の奥深さだ。
⑩スズキのホイル焼
もう10皿目まで来てしまった。ひとつぐらいはメインディッシュを。
地中海でとれたスズキのレモン蒸し。身にうまみが凝縮していた。レバノンの首都ベイルートの小さな魚レストラン「サマクマク」で pic.twitter.com/QYrLbeja4T
— カフェバグダッド (@cafebaghdad) June 27, 2014
スズキのホイル焼き。レモンと塩というシンプルな味付けなのだが、とても美味だった。地中海の魚は素晴らしい。残念なことに、写真がスズキのしっぽまでで切れてしまっている。写真をクリックしてツイッターに移動し、さらに写真をクリックして、見事なスズキの身を確認してほしい。
残念ながら、ここで10皿を紹介し終えた。メインディッシュはまた次の機会に。
シリア地域は、パレスチナ紛争、レバノン内戦、そして8年を経過したシリア内戦と、戦乱の絶えない現代史を経験してきた。こうしたすばらしい食文化をはぐくんできたシャーミーたちへの敬意と尊敬、そして国土再建への願いを込めて、「優雅で繊細な」10皿を紹介させてもらった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?