コーヒー豆×スーパーコンピュータ【焙煎中の組織変化を知る重要性について】
私は物理工学系の大学を卒業、大学院では結晶構造に関する理論的研究を行い、就職後は素材のミクロ組織について研究した経験があります。
また、20冊を超えるコーヒーに関する本を読んできましたが、医療・科学系の研究者として有名な著者はいるものの、「スーパーコンピュータで理論計算の研究経験」「趣味はプログラミングでAIを作った経験」「自家焙煎を趣味としている」「コーヒー製造プロセスのあるべき姿について考える」マニアックな暇人は私以外にいないと自負しています。
参考書では決して得られない情報を提供しますので、ぜひ最後までお付き合い下さい。
コーヒー豆のミクロ組織
本記事ではまず、コーヒー豆の焙煎を極める上で必須となる豆のミクロ組織について説明します。(表紙の画像がコーヒー生豆のミクロ構造です)
➡︎ミクロ画像はオクスフォード大学の論文から引用https://doi.org/10.1016/j.ijheatmasstransfer.2016.08.083
ミクロってなに?って方へ簡単に説明 → ミクロは単位です
マクロ組織 ➡︎ ミクロ組織 ➡︎ ナノ組織
右になればなるほど小さな単位になります。
マクロは顕微鏡で見えるレベルの大きさ、ナノは原子何個とかそんなレベルの組織ということです。水素原子1個で約0.1nm(ナノメートル)です。
画像は焙煎から40秒後におけるコーヒー豆のSEM画像です。
※SEM(Scanining Electronic Microscpy)= 電子顕微鏡
➡︎ここでは解説を省きます。詳しくはGoogle先生で検索お願いします
コーヒーの細胞壁は参考書で5~7μm(ミクロンメートル)と言われてます。画像でも肉厚のあるところの幅を測るとだいだい一致してそうなことはわかります。(画像中央下に10μmのサンプルがあるので比べてみてください)
焙煎が始まっていることもあり、細胞壁には気泡も見受けられます。
ここで、コーヒー豆の焙煎プロセスで重要な変化をまとめます
焙煎開始(組織が軟化) ➡︎ 細胞内部に気泡発生 ➡︎ 細胞壁が硬化(ガラス転移※)
※ガラス転移について簡単なイメージ
例)ガムは硬い ➡︎ 口内に入ると体温で柔らかくなる ➡︎ 口外に出るとまた硬くなる
焙煎プロセスの続きを説明すると
内圧上昇(1ハゼ) ➡︎ 細胞壁崩壊(2ハゼ) ➡︎ 油分放出
という流れである
重要なポイントはコーヒー独特の2回の「ハゼ」現象はすべて組織変化に起因するものだということです。
焙煎中の組織変化を知る重要性について
ここから本記事のポイントとなる「なぜミクロ組織の変化を知ることが重要か」について説明していきます。
コーヒーの味や香りを決める要素として多くの成分が挙げられます。
★田口護 著の「コーヒーおいしさの方程式」の焙煎アロマチャート、焙煎テイストチャートが参考になります。
↓一部紹介します
【アロマ(香り)】
糖類 ➡︎ アルデヒド類、ケトン類、フラノン類
クロロゲン酸 ➡︎ フェノール類
【テイスト(味)】
糖類 ➡︎ カラメル
生豆由来 ➡︎ カフェイン、クエン酸・リンゴ酸、油脂分
クロロゲン酸 ➡︎ クロロゲン類、ラクトン類
このようにいろいろな成分が変化して香りと味が決まっていきます。
豆のミクロ構造が焙煎というプロセスを経てどのような変化をするかを理解できなければ、どのような香りになるのか?どんな味になるのか?、残念ながら分かるはずがありません。
そして、「今日は思い通りの香りがする」「今日は昨日と比べて苦味が強い」とか宝くじを買うような感じでなかなか美味しいコーヒーに辿りつけません。
コーヒー豆×スーパーコンピュータ
ここまでミクロ組織の変化を知ることが香りや味を決める上で重要と説明してきました。
今からはさらに一歩踏み込んでより根元の理解を目指します。
化学変化により、成分が変化して味が決まる。
では化学変化は何をトリガー(引き金)として引き起こされるのでしょうか。
それは豆内部で起こる以下の物理現象になります。
・温度上昇(伝熱)
・水分量変化(水蒸気化)
・重量・体積変化(水蒸気化、CO2揮発)
しかしながら、ここから先はまだ未知な部分が多く、謎が多いとされています。
実はコーヒー豆が2回ハゼるという独特な現象が起こる理屈も正確には証明されていません。
これまでのコーヒー産業における焙煎技術として主要な論文等では実験データから、回帰分析や単純な経験モデルを用いて結果を解釈しているものがほとんどでした。
理系以外の方にもイメージしやすいように簡単に書くと・・・
これまでの焙煎技術:
実験データ ➡︎ なんとなくこんな法則っぽい ➡︎ 理由は分からない
そこで、この状況を打開すべく、脚光を浴びている技術の一つが「スーパーコンピュータ」です。
ここからはスーパーコンピュータについての話です。
面白くないので飛ばし読みで構いません。
2005年頃から国家戦略として最先端の性能を持つスーパーコンピュータの研究開発が本格化し、2012年にはスーパーコンピュータ「京」が本格稼働、2011年〜2015年頃の間でスーパーコンピュータを使った理論計算により「医療」「物理」「化学」「生活」「スポーツ」と様々な分野で新たな知見がさ得られてきました。
足元ではSSDやHDDの記録容量が右肩上がり、さらには量子コンピュータの開発も進んできているので、計算機の進歩は一向に止まる気配がありません。
【ここから重要です】
コーヒー業界でもこのようなスーパーコンピュータを使った、理論的な計算がかなり進歩してきており、大きく今までの概念(常識)が変わろうとしています。
今まで:
実験データ ➡︎ なんとなくこんな法則っぽい ➡︎ 理由は分からない
理想的な将来:
物理・化学法則 ➡︎ こうなるはずだ ➡︎ 確かに実験も合うね!
という流れに向かうと考えています。
焙煎について海外の論文を検索すると、2016年頃からスーパーコンピュータを使った理論的アプローチに関する論文が出てきていることがわかりました。
なので、私の記事では理論的に証明されているコーヒー豆の焙煎中におけるミクロ組織の変化について物理現象を中心に徹底的に解説していきます。
本記事では焙煎中の組織変化を知る重要性について解説しました。
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