#短編
マリリンと僕17 ~新たなる脅威~
オーディション当日。
僕はインターホンのチャイムの音で目を覚ました。時計は既に午前10時を回っている。今日のオーディションは11時の予定だ。飛び起きて玄関に向かいドアを開けると、そこにはマネージャーの萱森さんがニコニコしながら立っていた。
「ダメですよー、ちゃんと起きなきゃー」
一応注意をしてくれているが、笑顔だし、言葉にも怒気が全く込められていない。赤茶色のショートカットに童顔な萱森さんを見て
マリリンと僕11 ~行く年来る年~
目が覚めた時、既に絵莉の姿は無かった。
身に纏っていた柑橘系の香水の匂いや、抱いた後の体の気怠さだけが、部屋の中に、体に、そして心に残されている。
テーブルの上には絵莉の書いたメモが置いてあり、スマートフォンには桜井から「連絡くれ」というメッセージが届いていた。
状況を整理する為に、僕はとりあえずホットコーヒーを入れることにした。
絵莉は「あなたの幸運にあやかりに来た」と言った。そして、積
マリリンと僕10 〜 過去との遭遇 ~
クリスマスの夜、いつもの公園でマリリンと会った後、自宅アパートに戻ると、1人の女性が僕の部屋の前に立っていた。
顔を見て、すぐに誰なのかが認識出来た。
「絵莉…」
彼女の名前は深谷絵莉。元カノだ。
元カノと言っても、当時の僕は多い時で5人の女性を掛け持ちしていた。専門学校の同級生、バイト先の後輩、友達の友達、バイト先のお客さん(たぶん既婚者だったと思う)…。どれも僕からではなく、アプローチを
マリリンと僕8 ~Merry? Xmas~
12月24日、クリスマスイブ。
繁華街にはカップルが溢れ、至る所に装飾された、イルミネーションの輝きに魅せられている。ファミリーは特製のケーキやチキンを囲んでホームパーティを楽しみ、子どもたちは明日に控えたサンタクロースの訪れを待ち望んでいた。
そして僕は今、東京は品川にそびえ立つ『城山グランドホテル』のメインタワーにある大宴会場にいた。一張羅の黒のスーツとこの日の為に新調したシルバーのネクタ
マリリンと僕7 ~黒猫は夢に誘う~
準レギュラーで出演していたテレビドラマがクランクアップを迎えた。初めて体験することばかりで、日々緊張の連続。でも、とても充実していたから、終わってしまうことが実感を伴わず、過去に無いくらいの喪失感を感じていた。そしてある意味では、不安だった。
撮影最終日の夜、出演者や監督を始めとしたスタッフがほぼ全員集まっての打ち上げがあった。当然のことだが、ダブル主演の八雲一朗と木村咲良も参加していた。僕と2
マリリンと僕 6 ~その桜は秋に咲く~
「俺、役者辞めようかと思ってるんだ」
「え、なんで?」
「もう28歳じゃん?これ以上ズルズルやってると、後戻り出来なくなる気がしてさ。生活もずっとギリギリだし、普通に仕事して、普通の暮らしして、普通に結婚してる同級生見てたら、ちょっと羨ましくなったんだよね。今まではそんなこと思わなかったから、急に冷静になった自分にちょっと引いちゃってさ」
劇団の仲間であり先輩であり、専門学校の同級生であり、そし