「大吟醸」レキソタン

かつて抗不安薬の中でデパスと人気を二分していたレキソタン。
しかし、デパスの個人輸入が禁止され、処方も厳しくなった今、レキソタンの方に軍配が傾いているのかもしれません。
あるいはベンゾジアゼピンの時代自体が終わりに向かいつつあり、SSRIやSNRIに方向転換しているようにも感じます。

それでもなお、安心ラムネとして多くの患者様に愛されているであろうレキソタン、セニランについて取り上げてみたいと思います。

レキソタンとは

ベンゾジアゼピン系抗不安薬

一般名：ブロマゼパム（英：Bromazepam）
商品名：レキソタン
剤形：1mg錠、2mg錠、5mg錠

Tmax：約1.5時間
作用時間：約12～24時間
T1/2：約20時間

適応：神経症・うつ病（6mg～15mg、2～3回に分服）
　　　心身症（3mg～6mg、2～3回に分服）

副作用：眠気（15.69％）、ふらつき（7.75％）、疲労感（5.74％）

「抗不安薬の大吟醸」の代名詞

レキソタンは中時間作用型のベンゾジアゼピン系抗不安薬です。
その抗不安作用が本領を発揮するのは5mgからで、一部では「抗不安薬の大吟醸」と謳われました。
日本で処方量の多い抗不安薬だと、他にデパス、ソラナックス、メイラックスなどが挙げられますが、レキソタンはその中でも眠気が弱いという特徴を持ちます。
そのため、学生や社会人など昼間に眠気が来ると困るような方にも処方しやすく、人気が出たという経緯もあるようです。
ジアゼパム等価換算表では、ブロマゼパム2.5mgでジアゼパム5mgと等価となります。
数値だけ見ると、実はソラナックスやメイラックス、デパスには劣ることになります。
しかし、5mg以上で感じる抗不安作用は凄まじく、大吟醸とまで呼ばれたことに納得がいきます。

デパスvsレキソタン

一昔前の感覚かもしれませんが、デパスとレキソタンが抗不安薬のトップを争っていたような印象があります。
個人的にはデパスの方が効果が実感しやすくて気に入っていました。
短時間型で筋弛緩作用が強く、いかにも効いているのがわかりやすかったからだと思います。

一方、デパスは睡眠導入剤としても使われるほど眠気が強く出ます。
この作用が出やすい方や、眠気が出ると困るような場合はレキソタンの方が向いているかもしれません。
また、作用時間がデパスより長いため日中の不安を抑えるのにも適していると思います。
そして、作用時間が長い、筋弛緩作用が弱いということは依存性が低くなることにも繋がります。
デパスとレキソタンの二強時代は、一種棲み分けの時代だったのかなあと回想しています。

SSRIだけでは対応できない不安感もある

近年、不安症のファーストチョイスにSSRIが推奨されています。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬を使用する場合は短期間に限り補助的に、という記載が見受けられました。

SSRIに即効性はありません。
服用し始めてから1〜2週間経って血中濃度が安定し、徐々に効いてくるタイプのお薬です。
しかし、不安感とは突然襲ってくるようなケースも（少なくとも私の場合は）多いです。
そのときに即座に対処できないと辛くて辛くてたまりません。
そのようなときにはやはりレキソタンを始めとしたベンゾジアゼピン系抗不安薬が最も効果的だと考えます。

見直されつつあるベンゾジアゼピン

ベンゾジアゼピン系向精神薬への規制は、欧米が旗頭を切って進められてきました。
これには国民性も関係しているらしく、日本以外ではダウナー系薬物の乱用が目立つようです。
一方、日本はかの有名なヒロポン（メタンフェタミン）を発明した国でもあり、アッパー系薬物の方が好まれる傾向にあります。
そのこともあってか、欧米諸国でのベンゾジアゼピン系向精神薬への風当たりは強いものだと言わざるを得ません。

しかし、近年再びベンゾジアゼピンが見直されつつあります。
抗うつ薬や抗精神病薬への認容性が低い患者様でも服用しやすく、安全性が高いなど、ベンゾジアゼピンにもメリットはたくさんあります。
もはや新薬の開発すらされなくなってしまったベンゾジアゼピンですが、今でもピンポイントな役割を担い続けています。

お守りとしてのレキソタン

今家に残っているレキソタンは、前のお医者さんから処方されていた余りの2sだけ。
現在の主治医さんはかなり処方に慎重なタイプですし、そもそもすでに3種制限の上限いっぱいなので、新たに抗不安薬の処方は望み薄です。
残り2sのレキソタンは、いざというときのお守りとして大事に取ってあります。

ちなみにレキソタン、ジェネリックのセニラン共にほぼ無味で、舌下でもすぐ溶けてスニッフしても痛くありません。

抗不安薬の大吟醸、この渾名はいつまで語り継がれていくのでしょうか。