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フシギドライバー・ドライバー 【毎週ショートショートnote】

夜のコンビニの帰り
信号待ちをしていたら
反対車線から一台のバスが
走り抜けてゆく。

十五夜も少しすぎて、台風も
近づいている頃だったので
雲の色が紫蘇ジュースを何百倍
にも希薄したようなとろんとした
空の色をしていた。

まわりのうすぼんやりとした外灯に
浮かび上がるそのバスの車内は
ネオンを抱え込んでるみたいで、
とても妖しい。

二、三人しかいないお客さんたちが、
このバスがとくべつな場所へと向かって
いるのを承知で乗っているようなそんな
顔つき。

あれは噂の不思議ドライバーの真下さん。

誰もが乗れないバス。

心の修復をそこでするのが真下さんの
仕事だ。

赤いブリキの道具箱から、4プラス1の
ねじを、プラスのドライバーをもちだして。

アンドロイドになったクライアントたちの
心のあたりをきつく締める。

すると彼らの顔に生気が戻るのがよく
わかった。

わたしは座席の一番後ろに座りながら、
つぶやいた。

ヒューマノイドになっても、心は
痛むなんて。

真下さんの頬が緩んだ。


 

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