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気がつくと、記憶も一緒に包んでいた。

餃子のことほんとうはちょっとうっかり
忘れていた。

存在があたりまえすぎて、わたしの視界から
しばらく消えていたけれど。

昔餃子、食いに行きませんか?って誘われて
仕事帰りに行った餃子しか置いていない大阪の
繁華街の東商店街のお店はバリ美味かったの
だけど。

でもその美味しさはちょっとよそんちの美味しさで。

外で食べる餃子と家で食べる餃子は似て非なる
ものだと思ったりした。

そして餃子と縁があるのか否か。

この数か月、餃子はわたしのなかで
ありありと輪郭線をもちはじめた。

理由は母の一言だった。

母は今、長期入院していて。

なんとか来月には退院できそうな兆しですが。

週末に弟と面会に訪れた時のことだった。

ベッドの上の母がおもむろに起き上がる仕草を
しながら夜は「餃子でいい?」ってわたしたちに
おだやかな真顔で問いかけていた。

母の記憶は時に現在と過去を行ったり来たり
している。

その記憶は家族がまだばらばらになる前の
時間のことだったりする。

弟はすこしびっくりした顔をしていたけど。

「餃子でいいよ、気にしないで」って答えてた。

そうしたら母はあれならみんなが来ても
食べられるからたくさん作らなきゃね
って言った。

わたしも母のその会話に乗った。

「たくさんわたしが作るから心配しないで」

母はとても安心した顔をして、じゃあご飯を
炊かなきゃねって畳みかけた。

その日はそれだけだったのだけど、毎週母は
餃子の話を弟が来るとするようになった。

そしてまだわたしが弟に「まじちゃん」と
呼ばれていた幼稚園生ぐらいの頃に、父の居る時は
よく餃子を母と三人で作っていたことを思い出した。

弟はひき肉とかのタネを混ぜるのが面白い
らしくって夢中になって混ぜていた。

こねすぎ!って叱られて。もうやらんとかふてく
されたりして。

昔はきゃあきゃあ言いながら作っていたよね
って母と想い出話をしていたら。

母はほとんどのことを覚えていて、嬉しかった。

具材はキャベツでも、白菜でもいいよとか。
なんでも野菜入れたらいいよって言われて
その場のふんいきにうんうんと頷いていた。

餃子の話だけでその日の面会は終わったけど。

今日の面会からの帰り、なんとなく餃子の皮に
目がいって、あ、あの時の餃子つくろうって
思った。

素材は、白菜バージョンにした。

白菜と白ネギとぶなしめじと菊芋を入れてみた。

この白菜と菊芋は友人の畑で獲れたもの。
時々お野菜の宅配便を頼んでいるゆうのうえんさんの
お野菜たちだ。


大根の下にあるのが菊芋です。


奥に見えるのが白菜です。


彼女とはnoteで出会った。
ある日、西日が差し込む電車にふたりで
乗りながら彼女に聞いたことがある。

毎朝、畑に出る時ってどんな気持ちになるの?
って。

そうしたら、少しだけそうだなぁって
つぶやいた後。

あれだよ、今日も仲良くできるといいな
って思うよって。

とびきりの笑顔で答えてくれた。
畑に出ると毎日、彼女は土と野菜たちと
静かに会話しながら。

自分がコントロールするんじゃなくて、
今日も親しみたいな、馴染みたいなって
いつも思ってるんだなって、思った。

そしてそんな彼女がこしらえてくれた
お野菜で料理をつくれるってなかなか
幸せの極みだとその時思った。

今夜は彼女のお野菜、白菜と菊芋入りの
はじめての餃子つくってみました。

この黄色パッケージに気が付くと呼ばれてた。

不器用でも餃子作ってみせるよってジャケ買いして
しまいました。


スーパーでひとめぼれした餃子の皮のビジュアル。
ジャケ買いです♡


ここからは野菜のみじん切りオンパレです。
刻むことかなり好きなので夢中で刻みました。


みじん切りトリオ。
左から白ネギ右上、菊芋、右下ぶなしめじ。



白菜沢山刻みました。


そしてようやっと、ひき肉と野菜が
出会います。今日のお野菜は今日しか
存在していないので、彼らは初めまして
一期一会なんだと思いながら。


豚のひき肉とお野菜の出会い。

こうやって餃子のタネを包んでいる時に
思っていたのは。

昔住んでいた大阪の家のキッチンで弟と
じゃれながら餃子の皮に中身を包んでいた
あの頃の日々でした。

あの頃から、このひだひだつくるのが
へたっぴで。祖母になんどか直してもらって
つくったり。

皮をつなぐ水と小麦粉を混ぜた水溶液も
なんだか好きでした。

くっつけるだけの存在なのにあんたが
おれへんかったらなんもできひんって
すごい裏方さんだよって。

弟は具材入れ過ぎて、皮からはみだしていたり。

あの日。

そこにならんだ餃子たちは、名前はないのに
誰がつつんだものなのか一目瞭然だったことも
懐かしく思い出したりしながらなんとか
包み終え。


このひだひだが、昔から苦手でちょっと不器用ですが…。


焼きました。
この歳になって餃子はひっくり返さんでええという
事実をクックパッドで知りました。

だから蒸し煮なのか!って。


焼いてパリッとさせたかったのですが
パリっとしすぎて
バリっと破けそうなので
ビビりのわたしはここで
手を打ちました。

病室の母の一言のおかげで今日の夜は
餃子になりました。

具材を包んでいる時なんとなく不思議で。
今回の餃子は、友達が作ってくれたお野菜が
入っていて。

彼女は母の回復を祈ってくれていることも
ありがたく思い出しながら。

包んでいる時、母と弟とわたしの記憶も
一緒に包まれていて。

餃子って、ひとの数だけほんとうはいろいろな
思い出が包まれているものなのかもしれないな
って。

はじめてそんなことを思っていました。

こんなに餃子愛を語るとは思っていなかったです。
これからもちょくちょく夜ご飯は餃子に
したいなって思います。

大好きな人たちと餃子パーティもいいなって
きもちほころぶ餃子な夜でした。







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