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わからない。って言ってこなかった。わからなかったのに、言えなかった。

小さい頃、学校の授業を聞いていてあまり

わかっていなかったのに、わからない人って

先生が言った時にもわからないですって、

手を挙げられなかった。

わたしの中でわらかないは累積されていった。

そして小学校4年生のある日。

算数を習っていた時、親戚のお兄さん秀ちゃんに、

ぼんちゃんいつ頃からわからへんようになった? 

って聞かれた時も。最初からわからへんから

どこからわからへんかわからへん、って

答えたりして。

その時、秀ちゃんがとても不憫そうな顔をしたので

これは相当、大変なというかやばいんだなって思った。

そして

こんな不憫な顔を秀ちゃんにさせるのは心苦しいって

子供なりに思ったことを覚えてる。

好きな人は好きな表情のままでいてほしかった。

そして、その後も「わからない」の5文字は

いつもわたしの人生につきまとっている。

いろいろと、言葉に迷うし、人の言動にも

惑わされる。

何を言えばいいかわからないことが多すぎる。

とっさに言葉がでなかったりしてしどろもどろに

なったり。

仕事でも、そういうことがかなり多い。

わたしの生きて来た道にはこの「わからない」

多すぎるような気がして。

口すぼめてしまいたくなるけど。

すべてをわかりたいわけじゃないんだって、

うそぶきならがも。

今、2015年の日記をめくってみた。

2015年はわたしにとって、最愛の人を亡くした年

だから、ちょっとすがるようにページをめくった。

好きで切り抜いていた折々の言葉の切り抜きが、

1ページ目にはさんであった。

「わからないもの」を受けいれ、自分の中に
未聞の言明や心証をむりやりねじ込んでゆく。
(内田樹)

そんなことばにであった。

筆者の鷲田清一さんによると

「わからないけれどこれは大事というものを掴むこと。
「わかる」の意味はそこにある

と書かれていた。

わかるってことを

「なんだかまるでわからないけれどこれは凄そうなもの」

と、

「言ってることは整合性的なんだけれど、うさん臭いもの」

とに分けて、直感的に見分けられるようになれば、学校で

学んだ意味はあるんじゃないかとおっしゃっていた。

学校でわかった試しがなかったわたしは、こういうことを

もっと昔に知りたかった。

わかるって、

大体がわかった気になってそこでピリオドなのだと思い

ながら、わかることの意味ってなんだろうって

疑問をいだいていたら。

その年の1月20日の日記のページに、佐藤愛子さんの言葉

書いてある。


当時御年91歳の佐藤さんのインタビュー記事からの抜粋。

今こそ書く心境にたどりついた。若い時は何でも
意味づけしたくなる。でも納得できなくていい。
人間をわかろうとするその無意味さにこの年に
なって気づいたのです。

これも今から6年前の日記の抜き書きだから、

あの頃もわたしは「わからない」に取り囲まれて

いたんだと思う。

わからないって、ほんとうに孤独だけど。

誰かのことが、わからなくなったとき、わたしは

たいてい、拒んで進んできた。

話し合えばいいものを、切り捨ててしまう。

それはほんとうに悪い癖だと思いつつ、つい

先月頃もそういうことをやってしまっていた。

でも、いつものようにそこでその人との関係性が

切れてしまわなかったのは。

その人が、ちゃんと歩み寄ってきて会話を続けて

くれたからだった。

わからないのその先を経験したのは、もしかしたら

はじめてかもしれない。

わたしを責めることなく、なにごともなかったかの

ようにわたしの誤解を解こうとしてくれた。

わからない って。

もしその言葉に尻尾があるとしたら、つかまえたと

思ったとたんするすると手のひらの中からこぼれて

ゆくし、

そんなわからない出来事に出会うと、とまどうけれど。

わからないことを、誰かと歩み寄りながらじっくりと

すきになってゆくのもわるくないなって思う。

そして、

佐藤愛子さんが、年月をかけて培われた中で導かれた

言葉が、わからんでいいっていう答えだったことも

知って、こころがすーすー風とおしがよくなった。

この春を機に

わからないをやっぱり置き去りにしないことを

やってみる。

そしてわからなかったら、拒まずに話してみる

ことも、やってみる。

すぐに、嫌われたんじゃないかとか思うのも

この際やめてみる。

なぜならば、

人は人とまた出会い直すことができることを

わたしは心の奥の方でつい最近知ったばかり

だから。

春の光を浴びながら、「わからない」の一歩先を

これからは踏み出してゆきたいと思っている。


わからないを 置き去りにした いつかのデイズ
わからないを 問いかけて 問いかけてみて


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