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ジェット風船、さみしさと愛しさとすがすがしさと。#創作大賞感想

若い頃からずっと家族という血のつながりが
上手くのみこめないまま、うやむやにした
まま大人になってしまったところがあった。

父がいて母がいて弟がいてわたしの4人家族
だった。

その3人のことをもしくは自分をいれた4人の
ことをしばらくは愛せなかった。

愛し方がわからなくて、まなざしはいつも外に
いる誰かばかりをみていた。

家族としあわせになれなくてもいいと、覚悟しな
がらどこか血のつながらない誰かと幸せになる
ことに躍起になっていた。

そしてわたしはやっと、じぶんが育ってきた
家庭やそこに集う家族について、もう逃げられない
からと向き合うことになるのだけれど。

それを意識したのはnoteをはじめた頃。

色々なnoteの記事に触れる度にいつか
こんなふうに家族を書きたい。

そう思える方がいらっしゃった。

あこがれのnoterさんをみつけた。

それはミーミーさん。

わたしが、はじめて出会った記事が
こちらだった。

はじめての出会いは忘れもしない。

お父様の破天荒な人生をいや破天荒という
よりも、素のままでいられるチャーミングな
お父様に愛のツッコミをいれながらも余す
ところなく描かれていた。

ツッコミを入れたくなる父親っていい。

また周りの方が、え? どうなってんの?って
思いながらも受け入れて生きていらしゃる
その人間関係の温かさに僭越ながらも惹かれていた。

そしてお父様はいつも幸せそうなのだ。

今回、ミーミーさんが創作大賞のエッセイ部門に
あらたに加筆修正されたものがこちらです。⇩



周囲に迷惑をかけまくるが本人はいたって楽しそうにしていた。自分の孫と同い年の隠し子を作る。甲斐性はないのに女に店を持たせようとする。大体失敗する。困ったらすぐに逃げる。(フットワークはめちゃめちゃ軽い)

ここに語られている時間の濃さよ。

ふとミーミーさんはどんな思春期を過ごして
いらっしゃったんだろうと、同じクラスにいたら
わたしの父もねってちょっと悩みを打ち明けたい
ようなそんな気分になりがら、読ませて頂いた
ことを思い出す。

阪神タイガースを愛していたお父様。
お別れの日にはバラエティに富んだ色々な
曲調の「六甲おろし」が流れる会場が
軽やかに綴られている。

お葬式なのに六甲おろしが流れているなんて
シュールすぎる!

かつロックでパンクでほんとうに映画のような
おしまいだと思った。

エッセイを読み進めるうちに人生の終わりまでをも
こんなふうにつきぬけた愛情で語れる文章に出会った
ことはなかったことに気づく。

大阪育ちのわたしも、阪神タイガースファンの
るつぼのような場所で育ったので。

関西人の阪神が勝ってる時の機嫌の良さは
馴染深い。

どこまで寛容になるねんっていうぐらいに
そこらへんにあるもの何でも持っていってええで
みたいな彼らのラテン系気質を思い出して
懐かしくなる。

関西という土地柄に生まれてくることが運命だった
かのようなお父様が九州で50年を過ごしたのちも
九州弁と関西弁のマリアージュのニュアンスで
喋られていたこともなんだか忘れられない
エピソードのひとつだ。

阪神タイガースを全身全霊で愛したお父様を
綴る時のこまやかに笑いをはさんでくる
ミーミーさんのまなざしが愛おしかった。

そしてこのタイトルはそういうことなんかい!
という、それはもう松竹新喜劇の世界やないかい
って言いたくなるほどほんとうに
よくできたエンディング。

強いて言えばお葬式の場で起きた出来事は
シャッターチャンスで言うと万に一つぐらいの
瞬間的スクープが描かれているのだけど。

わたしはこのシーンの少し前からのエピソードどの
流れがたまらなく好きだ。

そのお葬式会場に居合わせたような気持に
なりながら読ませて頂いていた。

今回の加筆修正された結びの言葉は、ミーミーさん
から最愛のお父様へのまぎれもないラブレターに
なっている。

阪神タイガースとジェット風船がまたとてもいい味
だしていて、優勝を祈りたくなるようなそのお手紙に
胸の奥があつくなった。

せつなさを閉じ込めながら昇華した後に
書かれた文章は
こんなにもさみしさと愛しさと
すがすがしさに満ちていた。





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