見出し画像

「きみをひとりにするもんか」栞のような言葉に出会って。#読書の秋2021

とある駅で降りて、横須賀線に乗り換え

ようと思った時、急に人の流れがぎこちなく

なってなんだろうと思ってたら、

エスカレーターのメンテナンス中だった。

御迷惑かけていますの黄色と黒の看板が

置かれていて。

なぜかしらわたしはその工事をしている

おじさんのヘルメットに視線がいった。

そこにはおじさんの名前と血液型が

記されていた。

ヘルメットにAと書かれている。

それは血液型らしかった。

それを目にした途端いろんなことを

想像してしまってどきっとした。

血液型が切羽詰まって必要としている

場面が人には時として訪れることもある。

どきっとしたまま、すれちがいざまあの

おじさんはA型の小笠原さんなんだと

思うと、みなれた工事の名も知らない

おじさんだったひとの輪郭が急にモノクロ

からカラーにふいにあらわになったみたい

だった。

血や肉をたずさえたからだの人なんだなって

ことがちょっとリアルに迫ってきた。

世界中を巻き込んだあの病の頃から、数字と

人ということをよく考えることがあって。

人は数字じゃないんだよなって。

あたりまえなのに、いろいろな場面で人は

人を数字としてみていることが多い。

日常の楽しい場面でさえ。

雑踏を歩いている時だって、へたすると

知らない人にもちゃんと名前があって、

家族があって。

家族はいないかもしれないけれど、リアルな

暮らしがあって。

その人達ひとりひとりには血が通っているのだ。

ということを忘れてしまうような思いで、

急かされた余裕のない気分で

いることがある。

去年からのあの病のせいで、そういうことに

思いを馳せるようになった。

そしてなんどめだろう。

「星の王子さま」を読んでみたくなった。


絆をむすぶってどういうことなんだろう。

ゆきずりのキツネに出会った王子さまは、

なつくってどういう意味って聞いて

キツネはこう説明する。

おいらにとってきみはまだ十万もいる男の子のひとりにすぎない。
おいらに君は必要ない。きみにもおいらは必要ない。きみにとって
おいらは、十万もいるキツネの一匹にすぎないもん。けどなおいら
がきみをなつかせたら、おいらたち、おたがいが必要になる。

そしてバラのことを王子様は思う。

同じ形のはずなのに他の多くのバラとは

ちがってみえるのは、つまりそういうこと

なんだよと。

いてもいなくても気にしないことはまだなじみに
なっていないことで、なくてはならないたった
ひとりのひとになる

ってことがなじみになることなんだと。

そう思うと胸の奥がきゅっと縮んでじんとした。

昔読んだときはなんだかちょっと

王子さまは、多いにめんどくさそうな

キャラだと思い、そりがあわないとも

思うくせに、どこかで気になりながらも

敬遠していた。

「星の王子さま」には、そんな見逃しがちな

大切なことが書かれていたんだと、振り返り

たくなることが多い。

なんど読み返しても、振り返る場所が違う

ような気がする。

で、ふとよぎった。

雑踏で好きな人と楽しい時間を過ごした後、

じゃまたねと別れた後の一人残された電車の

中のあのその他大勢の人との距離感やよそよそ

しさやおおげさにいうと寂寥感みたいなものは

そういうことだったんだと。

ばかみたいにふにおちた。

ふにおちるとこころの中があふれそうに

ざわめいてきて。

なじみになるってことの深淵さに思いがけ

なく触れた。

noteで出会った方達のことも想う。

さいしょはひとりひとり知らない人

同志だったのだ。

でも、時間をかけてnoteで育んだ

出会いだった。

この間noteを飛び出して、リアルで

彼女と会った時のことを思い出す。

なじみになってゆくってこういうこと

なのかと、その想いにはじめて触れた

人のようにどきどきしていた。

人と出逢うことが難しいと言われたここ

数年だったけど。

こうして時間を重ねて、なじみになって

ゆくんだなって。


星の王子さまの挿画と挿絵は矢部太郎さんです。

とにかくひたすらやさしいタッチのイラストが

読者の心を柔らかく包んでくれます。

画像1


 

なんども、お話の中でぼくが王子さまに

なんども投げかけることば

「きみをひとりにするもんか」。

この言葉に出会えたことが、ちょっと

ふるえるようにうれしかった。

そしてそう言ってもらえる人が

ひとりでもいたなら、それはその人に

とってのたったひとつの笑いかけて

くれる星になるんだろうなって。

そんなたったひとつの星に出会えますように!

画像2


この記事が参加している募集

noteでよかったこと

いつも、笑える方向を目指しています! 面白いもの書いてゆきますね😊