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偏愛していた。ボブ・マーリーが好きだった猫。

ずっと、犬のことばっかり書いていて。ばっかりでもないけれど、

犬のことを愛してるって書くと、ちょっとほんとうは後ろめたくて。
それはわたしがほんとうにちゃんと一緒に暮らしていたのは、黒猫だったから。

「窓と猫の物語」を展開しているYKKのCМって、ほんとずるいなって思う。

あれを見ていると、ひそかに涙ぐみたくなるし、誰かと一緒の時にあれを見かけると、通り一遍の言葉でかわいいねってごまかしてみたくなる。

それ以上、この話はしたくないぐらいに、愛しているのだ、あのCМの中の猫を。

身代わりのように愛しているせいだからかもしれない。

他の猫のことをほめたくなるときは、昔飼っていた黒猫の写真に向かって、ごめんねって気持ちに今でもなってる。

出会いは、ずいぶん昔で。

彼がやって来たのは、同じマンションに住む、俳句を詠むことをちゃんと生業としている人から、一日預かってくれない?

って言われたのがきっかけだった。

彼女、栞さん(仮名)は、いつもゴミの朝出しが苦手で。
こっそり夜中、ゴミの収集所のところにゴミを捨てに行くのが常で。

金網の所にいたの。ずっと八の字歩きでついてくるの!
わたしの部屋にはもう、マーシャちゃん(白猫ちゃん)が、いるから飼えないんだけど・・・。

彼女は身体がとてもちいさくて、7号サイズでもまだ小さいぐらいの可憐な人だったから、長いTシャツの裾の所をまるめて袋状にして、そこに拾った黒猫をすっぽり隠したままの格好で、わたしの部屋に来ていた。

彼女は同じマンションの201号室でわたしは、208号室。

なぜ栞さんと同じマンションに住んでいたのかというと、わたしは彼女の俳句のファンで、カルチャーセンターで彼女の講義を受けたら、ちょっと気にいってもらえて。

わたしの方から懐いてしまった。
ちょうど、実家にいるのがつらかった。結婚を猛反対されていて、わたしの心は折れかかっていたし、どこかでひとりもしくは彼と暮らしたかった。

家賃そんなに高くないよ。ぼんちゃん(わたしの仮名)来てよ。よかったら同じマンションに住んでたら楽しいんじゃない?

そして実家に帰ると針のむしろ状態だったから。半ば家出のようにして彼女と同じマンションに住むことになった。

そして間もない頃、拾われてきたのが彼、だった。

名前はまだなかったから、黒いのでしんぷるにクロンと名付けた。

そしてわたしおとなひとり、ほんとうに疲れ切った心の女子と、ひとりぼっちのクロンが、大家に内緒で暮らし始めた。

彼がすきだったのは、

日中は留守番しているので、ひとりがつがつ食べるのが癖になってしまって、ぶくぶくと太ってしまったけれど。それはそれで可愛かった。

いつも壁の辺りに食事したあとのキャットフードの茶色い欠片をいっぱいくっつけていた。

その頃ふたりだけで婚約していた彼と週末半同棲みたいな感じだったけれど。
あまりうまくはいっていなかった。ぎしぎしいつも音を立てながら、関係がこじれていて。

わたしはいつも寂しかったのかもしれない。

そして彼と別れて、ほんとうにクロンとふたりきりになった。

そして休日になるとふたりで聴いた。彼クロンがすきだっのは、この人。

いつもスピーカーに身体ごとくっつけて聞いていた。
なんか身体全体でその音を受け止めたいんだ! って風情だった。

はじめて朝帰りした朝。

ベッドの上でわたしのトレーナーを両足で引き寄せたまま眠っていた。
それを見つけた時切なくなったけれど甘えてくれたのは最初だけで、時間が数分経ったら、だまったままわたしの足に爪を何度もたてた。
かなりツンデレだった。

そして時間が経って。

わたしも栞さんとそのマンションで暮らさなくなって。

ある日の夜、実家の母のベッドで眠るように死んでしまったけれど。

その日何も知らないわたしたちが、下の部屋で聴いていたのは
桑田佳祐さんバージョンの「花」だった。

歌詞があまりにもクロンを送る歌のように聞こえてきて、しばらくは聴けなかった。

♬花は流れてどこどこゆくの、君も流れてどこどこゆくの

そんな気分になってしまって。

そしてある日、わたしはだいすきなパイナップルのスライスしたあの缶詰をキッチンでぎこぎこと開けていた。

その時。
わたしは、2階の気配に耳を澄ませていた。そして、今日は彼は降りてこないな。2階で眠っているのかな?って。

だって、彼はあまりに太りすぎて、主治医のお達しでカロリー低めの缶詰しか食べさせてもらえなくなっていた時、缶詰を開ける音をどこからか聞きつけると、とんってベッドから床に降りて、いそいそと缶詰目指して、まっしぐらにやってきていたから。

でも、わたしはそのパイナップル缶をぎこぎこしながら、その間中待っていた、彼がやってくるのを。

そして、我に返った。とっくの昔にクロンは旅だったことが私の中からすっかり抜け落ちていたことに驚いた。

さびしいより、なんか恥ずかしかった。そのことはクロンに知られたくないなってぐらいに。

そしてたまに、夢に見る。夢にでてくる彼は、なんか人格ならぬ猫格みたいな輪郭のまま出てくる。そしてわたしは夢の中でも彼の食事のこととトイレのことばかり心配している。

いつだったかある社会学者の方のエッセイを読んでいた。

そこに。

<猫を拾っているのではなく、人生そのものを拾っているのである>

と書かれていた。

もう屈服した。わたしが出会った彼、黒猫のクロンとは、計画されたものではなく、<たまたま>出会ったのだと
<たまたま>出会い、いまだ忘れられない黒猫クロンに出会えたことが、たまらなく愛しく思える。

うまく書けなかったです。やっぱり。ほんとうにごめんなさい。

今日はもうすでに音楽はいっぱい聞いていただいたので。あのほんとうにずるいよね!っていうYKKの「猫と窓の物語」をお送りします。

では、どうぞお楽しみくださいませ🐈

今日も長いひとりごとにお付き合いいただきありがとうございました


        夕まぐれ 魚になって 猫になって
        オメガの しっぽゆらゆら 東へ西へ








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