見出し画像

水平線に、堕ちてゆく。

音楽を聞いてる時、きゅっきゅっと
胸が少しずつまんりきでしめつけ
られてるような気分になることがある。

高い場所からずりずりと堕ちてゆく
ような感覚が垂直に訪れたそのせつな
きゅっとした気持ちが水平に距離を
縮めて。

そのふたつの線がどこかで
交わってしまった時
あぁこの曲好きってなる。

これは人でも同じだ。

かつて義理の兄だったことがある人が
シャンパンと共に現れた。

4つ上の彼の宇宙はよくわからないのに
栞の部屋の本を見つけては
これ借りていい?と愉し気に抱えて
帰ってゆく。

返すつもりもないくせに。

紫色に桃色をあわせたようなきれいな
色のしゅわしゅわとした泡がグラスの
へりで踊っていた。

今日限定のシャンパンだという。

グラスを持ったせつな水平線の彼方に
彼が消えた。

栞は堕ちてゆく思いがそこに
交わるのがわかった。

堕ちるとは好きの証だ。

小さな栞の声が波音にかき消されそうに
なりながら、グラスの向こう側の
水平線までまろやかな波形を
描いていた。

(409字)!

🍾  🥂  🍾  🥂  🍾  🥂

毎週ショートショートnoteに挑戦
しています。
お題は「告白水平線」です。
偶然のお題がいつも楽しい…。
最後までお読みいただきありがとう
ございます🌊 

この記事が参加している募集

noteでよかったこと

私の作品紹介

いつも、笑える方向を目指しています! 面白いもの書いてゆきますね😊