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クリスマス、君にイエスと言わされていた理由がわかった。

書いている時って、すこしだけ

息を止めてしまっている時が

ある。

昔からの癖だ。

切羽詰まっているわけではないけれど。

少しだけ息のこと、呼吸のことを考えてる。

すきだった人が目の前にいたクリスマス。

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あの人はわたしの呼吸を読んでいたのだなって。

呼吸を読まれていたとしか思えない。

わたしがその人に何かを問われて、返事をしようと

するときは、かならずイエスと言ってしまうような

仕組みってなんだろうって思っていたら。

それはわたしが返事する時って息を吐く時だから。

そうじゃないと呼吸困難になってしまう。

なにか返事が欲しい時に限って、わたしが息を吐く瞬間を

みはからってあの人は問いかける。

そうすると、わたしは息を吐く時になぜかイエスと

いってしまう仕組み。

あれも、けむに巻かれたクリスマスだったけど。

クリスマスと言えば、わたしが思い出すのは

呼吸の事だ。

母のこと。

母は6年ぐらい前から、酸素ボンベのお世話になって

いる。

外出するときは、ショッピングバッグの小型版の

ような縦長の酸素ボンベと歩く。

もう半ば相棒ねって言っていて、その酸素ボンベをして

歩くことを誰かに見られて恥ずかしいと思うことは

ないよって言ってくれるので、娘のわたしとしては

かなり彼女のその性格に助けられている。

家の中には、すこし大きめの3リットルの酸素が

吸える器具がリビングの電話の横に置いてある。

薄い青色の、邪魔にならない機械だ。

そしてその器具はわたしたち素人では、内部の

クリーニングなどができないので、専門の方に年に

2回ほど来て頂いて中の掃除をしてもらう。

年に2回だけれど、我が家の担当の方はとても

穏やかで、その機会の内部を作動させながら

モーター音の中でクリーニングやメンテナンスを

してくれるとき、なにかそのマシンを労わるように

拭いたり優しくこすったりしてくれる。

それは30分ほどの作業だけど、終わるとコーヒーと

チョコレートなどのちょっとしたお茶の時間になって

その方と母娘で過ごす時もあるし、チョコレートのお土産

だけをお渡し

して、また半年後ですねといってお礼申し上げて

さよならすることもある。

あれは、3年ぐらい前のクリスマスイブの日だった。

クリスマスは祖母の命日だったので、夜眠る前に

祖母との思いで話をしたあとおやすみなさいを

した。

夜明け近くにわたしは目が覚めた時、空耳なのか

ピンポンの音で目が覚めた気がした。

でも、寝ぼけていたのでそのままにしていて

また再び眠った。

そして目が覚めた25日の朝。

リビングの電話の緑の留守電ランプが珍しく点滅

していた。

なにごとかと思って聞いてみると、あのいつも

お世話になっている酸素ボンベの会社からだった。

夜明け5時前頃で。3度ぐらい電話が入っている。

それは、母が酸素吸入器をして夜眠っていた時

母は、気が付かずに酸素のカニューラという管を

身体の下敷きにして眠っていたので、事業所の方が

大変なことになるまえに駆けつけて来てくれていた。

そういうことも彼らの事業所の仕事のひとつらしい。

あの空耳と思っていたピンポンはほんとうだった。

母とふたりで、その事実を知ってあわてて、

ごめんなさい無事です大丈夫でした。お手数おかけして

しまって、と、電話をしたことがある。

それはクリスマスの出来事で。

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クリスマスってみんなが幸せに愛するひとたちとだけ

過ごしているわけじゃないことは知っているけれど。

その日宿直だったであろう彼が駆けつけて来てくれた

ことに感謝した。

思えば、彼はクリスマスの日の母の呼吸を守ろうと

して駆けつけてきてくれたことになる。

これって、仕事とはいえ。

真夜中にそれもクリスマスの日に。

いつか彼が心に残るクリスマスを過ごせていると

いいなと思う。

そしてその事実を知った母の眼にはすこしだけ

うっすらと涙が浮かんでいた。

息子ぐらいの年齢だったせいかもしれない。

この間、息のことを話している人をテレビで観て
いた。

<息は世界をつなぐもの。かつてここに存在して
いた人たち、これから存在するであろう人たちと
も僕たちをつなぐもの>

そんな言葉が、熱のある言葉を発するある作家の方

から発せられて、なんだか母の呼吸のことばかりを

考えていて、やるせない思いなどがにじんでいた時に

聞いたのでその言葉に、ちょっとじんとしていた。

一瞬の 花火のかたち 見失うまで
いにしえの 息のかたちを 手繰り寄せても 


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