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M1グランプリ2020 予想

お笑いが大好きな筆者がM1グランプリ2020 ファイナリスト10組を予想してみました。

●一夜にして人生が変わる

さて肌寒くなり、今年もM1グランプリ2020の季節が到来。筆者は根っからのM1ファンだが、今年もワクワクして眠れない日々が続くことだろう。昨年は12年目の苦労人ミルクボーイの漫才が世間に衝撃を与えた。まさに一夜にして人生が変わる。真に面白い芸人が報われるのは本当にすがすがしい。過去振り返ってもM1は毎年ニュースターを次々と輩出してきた。そして彼らの人生を大きく変える。そんな瞬間を今年も目撃したい。

●コロナ渦でのM1
2020年、全国各地で予選が行われ1回戦が終了。依然としてCOVID-19の影響が留まるところを知らない中で人類はウイルスと共存していくことに慣れ始めた頃だろうか。1回戦は審査員数人だけという異様な環境もやはり実力者はしっかり笑いを取っていた。個人的な1回戦のネタでは滝音、タモンズ、デニス、シシガシラなどが激戦の中でも印象に残った。またアマチュア勢の活躍も目立つ。ちょこっと団という女子大生2人組コンビは惜しくも1回戦敗退だが、中毒性のあるネタで数万回再生をされている。1回戦敗退コンビでも世に認知されるなんてまさしくこれまではなかった現象だ。客数制限はあるものの2回戦からはお客さんをいれての演芸。やはり漫才たるもの演者と客はセット。どこでウケたか、会場の空気はどうか、お客さんの反応次第で演者のボルテージも変わるのではないか。ここから熱い戦いは1ヶ月を通して繰り広げられ、今年もあの豪華な舞台でセンターマイク1本に命を賭けた10組が選ばれる。

●まえがき
さてそんな熱気をよそに本日はなんとも気が早いが、M1グランプリ2020のファイナリスト10組を予想してみた。前置きとして触れておくが、筆者はあくまでいちお笑いファンでありお笑い評論家を自称するつもりもないし、演者としての才能は皆無。すべての演者には敬意を払っており、準々決勝以上に進出する芸人の皆さんは全員決勝へ行ってもおかしくない技量と面白さが備わっていると思っている。そして準決勝以上は時の運もある。準決勝の出番順、客質、緊張度合い、色んな要素が絡まりあって決勝進出者が決まる。なので主観であることは重々承知の上、最後までお付き合い頂けると幸いだ。
 
●ファイナリスト予想
それではファイナリスト10組に言及する。

①ニューヨーク / 吉本興業 2年連続2回目 
【毒と皮肉のファンタジスタ】

昨年苦節10年の末、ついにファイナリスト入りを果たした彼ら。芸人界隈やお笑いファンの間では今更ニューヨーク?となるくらいすでに業界では面白いと認知されていたコンビだろう。正直去年の準決勝を映画館で見ていたが、ニューヨークが決勝行くと思った人はいなかったんではないでしょうか。決勝ではトップバッターの重役をこなし、点数こそ振るわなかったものの屋敷の平場でのやり取りは間違いなく昨年のM1を勢いにのせた起爆剤だ。昨年は毒を封印した歌ネタだったが今年はまた毒全開のTHEニューヨークワールドを見せ付けて欲しい。彼らは基本的に漫才がとてもうまい。コントの設定や演技力も定評があるが漫才の間や構成も引けを取らない。トークもうまくロンドンブーツ1号2号のように世間を席巻する日も近いがする。今後は卒業したかまいたちや和牛、スーマラのようなM1常連になっていくことは間違いない。審査員もすでにニューヨークの魅力には気付いており強いて言えば毎年のように勝ちあがってくる準決勝だが、そこで会場を唸らせるほどのエナジー漫才ができるか、そこの客ウケだけが心配だが。

②東京ホテイソン / グレープカンパニー  初 
【紫電一閃】

2018年はトムブラウン(ケイダッシュ) 2019年はぺこぱ(サンミュージック)と毎年1枠か2枠の吉本以外の事務所枠の中で今年の筆頭は彼らだろう。過去のM1を紐解いてみてもM1には次点の法則があるように見える。前年に惜しくも10位か11位で予選に破れ、敗者復活に進んでいたコンビが翌年決勝に進出するケースだ。さらば青春の光や和牛、スーパーマラドーナ,からし蓮根等が過去次点から翌年はストレート通過している。審査員も毎年同じ顔ぶれが中心の中ではやはりここ数年の実績も加味されるところだろう。去年の次点はアインシュタインだった。ならば今年はアインシュタインかと言うとそうでもない。東京ホテイソンの凄さはこの3年間はすべて準決勝で15位以内につけているところだ。しかも準決勝の出番はAブロックが2回と決勝に進出しにくい序盤での出番にも関わらずだ。彼らの漫才は毎年進化を遂げ、カミナリのような爆発力もある。今年は準決勝でC/Dブロックに入れば持ち前の爆発力と新しさで決勝進出は射程圏内といえる。そして決勝の舞台でもたけるの神楽節が炸裂し、1発目から会場を揺らしているのが目に浮かぶ。

③滝音 / 吉本興業  初  
【高音ボイスのパイオニア】

M1には毎年ダークホースが現れる。2015年のメイプル超合金にはじまり2016年のカミナリ、2017年のさや香、2018年のトムブラウン、2019年のオズワルドのように3回戦で突如大爆発を巻き起こし、そのまま決勝まで突き進むダークホースがいるとすれば今年は大阪の滝音だろう。2018年のGYAO動画で見たときから滝音には脈々と流れるM1の系譜を感じる。しかし大誤算は滝音はKOCでファイナリストになったおかげで知名度を上げてしまったことだ。そこが審査員にどう響くかだ。彼らの漫才はワードの新しさに尽きる。ツッコミのさすけが織り成すツッコミはすべてに鮮度がありオリジナリティに溢れている。そして声のキーもハイトーンで独特だ。2016年に敗者復活で見取り図を見た頃の衝撃を思い出す。盛山の独特のキーとオリジナリティ溢れるワード、リリーの爽やかなルックスから放たれる淡々としたボケ。それらが今年は滝音にかぶる。大阪大学出身の高学歴で漫才界のパイオニアと呼べる新たなキャラクターでバラエティを席巻するさすけの姿も目に浮かぶ。2020年は滝音が全国区になる序章かもしれない

④マヂカルラブリー / 吉本興業 3年ぶり2回目 
【続・摩訶不思議】

M1の前後においてノッている人というのはとても客ウケがよく注目されやすい。2020年はまさしくR1を制覇した野田クリスタルが乗っているだろう。ご存知のとおり賞レース常連で唯一のトリプルファイナリストが前人未到の偉業であることは言うまでもない。しかし彼らがコンビとして賞レース決勝への切符を掴んだのは2017年のM1である。結果は散々だった。ずいぶん前2008年頃からマヂカルラブリーはお笑いファンの間で評価が高く審査員も見れば見るほどハマっていったはずだ。しかしそれが全国区には伝わらなかった。彼らの漫才はお笑い偏差値が高くなりすぎてこじらせてしまった人にしか解せないのかもしれない。彼らの世界観は悪く言えばおふざけ。漫才の構成も天丼がメインで展開があるような漫才ではない。しかしツッコミ村上のチャーミングなきれツッコミにふざけ続けるイケメン野田のボケというコントラストが心地いい。筆者も2017年にファイナリストで呼ばれたときは思わず叫んでしまったくらい大ファンである。17年のリベンジとなるべく20年はこれまでと少し変えた展開つきの漫才や野田の人間性込みでもう一度決勝の切符を掴んで欲しい。まぁでも優勝はないでしょう(笑)

⑤からし蓮根 / 吉本興業 2年連続2回目 
【九州正統派の系譜】

すでに出たニューヨークを除いて2年連続の出場権があるのはオズワルド、インディアンス、すゑひろがりず、ぺこぱ、見取り図(3年連続)だが、今年も可能性が高いのはからし蓮根だ。すでに関西屈指の正統派として実力は折り紙つきだが、なんといってもネタ数が豊富。パターンはコント漫才だが、決勝レベルの漫才をいくつも持っているという点ではネタの配信も増えている2020年の過酷な予選を勝ち抜くには筆頭と言えるだろう。同じ九州出身のパンクブーブーを髣髴とさせる絶妙なボケとツッコミの掛け合い。第7世代のフレッシュさと特にツッコミの青空はまだまだキラーワードを隠し持っている。昨年の決勝ではどちらかというとボケの伊織のキャラが目立った。今年はツッコミの鋭さにも期待し、二人とも面白い漫才をやっていくことだろう。もちろんオズワルドも相当なテクニックとネタの鮮度を持ち合わせるが、やはり短期決戦のM1。ある程度のボケ数と熱量がセオリーとされる中では苦戦する可能性がある。

⑥金属バット / 吉本興業 初 
【THE破天荒】

M1にはたまにTHE賞レースの勝ちセオリーを崩した温度感の違う漫才師が現れる。2019年はオズワルド、過去を遡ればスリムクラブや馬鹿よあなたは、POISON GIRLBANDなど明らかにテンポやトーンを変えた静かなる炎を燃やしているコンビがいる。今回もそんなコンビはいる中でオズワルドかたくろうを選ばなかったのは主観で金属バットを推したからだ。(セルライトスパはまさかの2回戦敗退をしてしまった。) 2020年はすでに人気と実力も兼ね備えた金属バットが準決勝の空気を変えて壁を突破するのではないかと思っている。筆者は彼らの漫才を見たとき、いつもワンテンポ遅らせたボケに肩透かしを食らわされる。野球で言えばまるでチェンジアップ。あえてタイミングを外すことでこちらのツボをついてくる。ボケの小林のエッジの効いた鋭利なボケに対してツッコミの友保の関西風味と不気味さのミックスされたツッコミが斬新だ。ぶっ飛んだネタの設定がどこまで庶民まで落とし込めるか、だがすでにお笑いファンにはその世界観は周知でその淡々とした語り口から大きな一撃を繰り出し続ける彼らを想像できる。

⑦見取り図/吉本興業 3年連続3回目 
【ミナミの漫才番長】

今回、2大会ぶりにM1予選への出場を決めたアキナと3年連続の出場を狙う見取り図とで個人的には非常に頭を悩ませた。しかし、やはり漫才の実績でいうと見取り図が一歩抜け、コントにも定評のあるアキナと比べると漫才の爆発力は見取り図が強いという点で選んだ。もはや2017年頃から危なげなく良い漫才を披露しており、完成度やテクニックも申し分ないが、1つだけ言うならば3年連続でのファイナリストは非常にハードルが高い。15年以降のM1で3年連続はかまいたちのみ、和牛もスーマラもジャルジャルも3年連続でのストレート突破はできていない。それだけ客席のハードルも上がれば審査員を唸らす鮮度も必要になってくる。昨年は二人の掛け合い時間を増やし、進化を遂げていた。今年はどのような進化を見せるか。個人的にはボケのリリーがキーポイントになると感じている。3度目の正直、優勝候補としてタイトルを掴みにいってほしい。

⑧三四郎/マセキ芸能 初 
【15年目のNOセオリー】

8組目は本当に申し訳ない。完全に筆者の好みである。恐らく決勝進出者の名前が呼ばれる中で芸人界隈での驚きが大きいのは三四郎だろう。今年15年目のラストイヤーを迎える漫才師はいるが、三四郎もそのうちの1組。他に学天即、スリムクラブ、DRハインリッヒ、インポッシブル等、実力者が揃う。しかしその中でも準決勝3度進出の三四郎にラストイヤーの切符を掴んで欲しい。これは大ファンだからこそ言えることだが、三四郎は2016年あたりがピークだったかもしれない。そこで決勝に進めずバラエティ界で売れていったため漫才を見ることは少なくなった。筆者は三四郎の漫才が面白いと思っているし小宮は20年に一度現れるかの逸材とも思っている。だが、漫才になるとどうしても小宮のキャラありきになってしまい相田の弱さが目立つ。そしてネタの内容もけっこう万人ウケしないものを選びがちだ。たとえばドリフとかドラゴンボールとか一昔前の設定を持ち出したりマニアックな比喩表現をするため一部にはハマるが、ハマらない人も多い。すでに売れっ子でもうあえてM1に出る必要はないと思われるが、本人たちはやはりネタで評価されてゴッドタンから売れたため最後まで漫才を大切にしたいようだ。その熱意があれば経験と人気は申し分ない。相田の人間としての面白さも認知され始めた最近。あとは最後のチャンスを掴み、決勝の舞台で暴れまわってほしいと願う。

⑨エンペラー/吉本興業 初 
【憑依の境地】

今回最も悩んだのがこの最後の1枠だ。昨年はすゑひろがりずという誰もが予想だにしなかったコンビが滑り込んだ。今年もそんな波乱が待っているだろう。筆者が悩んだのは近年の若手の賞レースで活躍した組の誰を選ぶか、だ。エンペラー、コウテイ、ビスケットブラザーズといった関西の覇者やオズワルドや令和ロマンの東京勢。加えて実力派のツートライブやデルマパンゲ、昨年実績のあるくらげ、といった面々が並ぶ。筆者が出した答えはエンペラー、コウテイ、令和ロマンの3択だ。その中でもやはり準決勝でのウケを考えるとエンペラーは一歩優勢と見ている。エンペラーの憑依型漫才は女性はじめ会場の空気を巻き込む力もあるし、今年は憑依漫才をやるかどうか分からないが、一つの設定で爆笑まで持っていける確かな技術や爆発力や全体の表現力を考慮するとエンペラーが霜降り明星に近づく可能性はある。コウテイも爆笑が期待できるが、少しボケに脈絡がない時があり、すでに破天荒なマヂカルラブリーと金属バットを選んでいる以上、正統派のエンペラーを選びたい。コウテイの生意気さや反抗的な態度は審査員とも一悶着起こすところを見てみたいが、ここはM1。正統派のルーキーを関西から送り込んで欲しいとも思う。

⑩敗者復活 ミキ/吉本興業 2年ぶり3回目
最後に敗者復活。どうやら噂では今年は敗者復活がテレビ視聴者投票ではないかもとのことなのでもし現場のお客さんの投票とか審査員が決めるとなると予想はだいぶ変わってくる。人気投票であれば僕はミキを候補に挙げる。漫才の実力はさることながら人気もあり決勝には近い。それと先述のとおりアキナが上がってきてもおかしくない。もう一組四千頭身もいる。これまでの15回のM1の歴史上一度もトリオが決勝の舞台に上がったことがないというのはなにかのジンクスだろうか。そのジンクスを打ち破る可能性が高いのは四千頭身だろうか。もしお客さんの投票であれば敗者復活の大穴、エイトブリッジも忘れてはならない。オードリーのような絶妙なキャラとズレ。ここが敗者復活の会場を揺らす爆発力を持っている。いずれにせよ人気も実力も兼ね備えたコンビが敗者復活から上がってくることが予想される。敗者復活は2016年までは完全に有利だった。一番最後の出番を勝ち取れるわけだからだ。しかし現在ではくじ引きのため敗者復活枠が特別有利とは限らない。

●あとがき
以上、2020年もとにかく楽しみな大会だ。大いに盛り上がって欲しい。おそらく筆者のこのコラムには名前も登場していないような超ダークホースも今年も彗星の如く現れるに違いない。また今回は男女コンビを挙げていないが、個人的には男女コンビ、女性コンビも十分に注目している。このような素晴らしい大会を運営して、最高のオープニングと出囃子を用意してくれる運営事務局や放送局、スポンサーには感謝しかないし、なにより笑いを生み出すすべての芸人にリスペクトである。センターマイク一本に賭けた物語に涙。

他にも男女コンビや注目コンビはやまほどいるので書ききれないことが心苦しい。これは言い訳がましくなるが、最後に準決勝まではきそうな注目の芸人を追記しておこうと思う。

(吉本興業)アインシュタイン、エンペラー、マユリカ、蛙亭、ニッポンの社長、オズワルド、令和ロマン、ゆにばーす、たくろう、インディアンス、デルマパンゲ、ビスケットブラザーズ、シカゴ実業、もも

(吉本以外)Aマッソ、ウエストランド、モグライダー、ヤーレンズ、ラランド、真空ジェシカ、じぐざぐ、エイトブリッジ、四千頭身

12月20日が待ち遠しい。

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