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HPVワクチン薬害大阪訴訟 原告本人尋問

2024年1月22日の福岡地裁、2月21日の東京地裁、2月26日の名古屋地裁に続き、3月7日にHPVワクチン薬害大阪訴訟でも原告本人尋問が始まりました。

HPVワクチン薬害大阪訴訟

毎日新聞によると、この日は3人が出廷し「元気な体に戻してほしい」などと訴えたそうです。

以下、毎日新聞からの一部引用です。

子宮頸がんワクチン大阪訴訟 進学諦めた原告「苦しみ認めて」
24/3/7 19:42(最終更新 3/7 21:03)

このうち大阪市に住む20代女性は中学3年の時に計3回、子宮頸がんなどの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンを接種。その後、頭痛や倦怠(けんたい)感、光過敏などの症状が出た。女性はサングラスを着用して本人尋問に臨み、法廷の照明を暗くする措置も取られた。
 女性は結婚し、幼い子を育てているが、症状の影響で抱っこしたり一緒にアニメを見たりすることができないという。「子どもが成長しても、あまり外に連れて行けないと思うと悲しい気持ちになる」と話した。

本人尋問に応じた別の20代女性=大阪市=も倦怠感などの症状が出て、大学進学を諦めた。「次の世代が安心して接種できる体制を整えるためにも、私たちの苦しみを認めてほしい」と語った。

訴訟で製薬会社側は、ワクチンの安全性は医学的、科学的に確立されており、原告らの症状は心理的な要因によるものだなどと主張している。

 ワクチンを巡っては、接種後に体の痛みなどを訴える声が相次ぎ、国は2013年に「積極的勧奨」を中断したが、22年に9年ぶりに再開した。

 訴訟は東京や名古屋、福岡の各地裁でも起こされ、計117人が原告となっている。

https://mainichi.jp/articles/20240307/k00/00m/040/247000c

これまでの裁判については、下記のサイトに書かれています。


3月7日の大阪訴訟については、今のところ毎日新聞の記事しか見当たりませんでした。

一方、日テレでは3月4日に早めの接種を呼びかける「国際HPV啓発デー」について報じています。

東京地裁のことは報じなかったのに(下記参照)、接種を勧める内容だけ報じています。これは明らかに、偏向報道です。

上記の記事には、動画をもとにして、医師による下記のコメントが書かれています。

「ワクチンを打っている人の方が打っていない人に比べて、子宮けいがんが大体8割以上少なかった。ワクチンが普及した結果によって子宮けいがんが実際減ったという報告もある」

https://news.ntv.co.jp/category/society/9519e2613666435389db3783f4b999f9

「大体8割以上少なかった」とか「報告もある」というのが、どのような調査や報告か書かれていません。これはとても無責任な発言だと思います。

昭和大学の研究グループが行った分析

例えば、2023年9月に昭和大学の研究グループによる予防効果の報告がありました。


昭和大学などの研究グループが、日本で初めてHPVワクチンの子宮頸がん予防効果を報告 -- HPVワクチン接種の促進、子宮頸がん予防推進に期待 --
(中略)
【成 果】
今回、研究グループは一般公開されている全国がん登録データと日本産科婦人科学会の腫瘍登録データを年齢層別に統計解析したところ、20代女性でのみ、子宮頸がん罹患がそれまでの増加傾向から一転して、2011年以降は有意に減少していることがわかりました(図1、図2)。これは、両方のがん登録データで一致しています。しかしながら、これらのがん登録データはHPVワクチン接種歴と結びつけられていないため、20代での子宮頸がん罹患の減少は子宮頸がん検診による効果や性行動の変化など、別の要因であることも考えられます。

 ワクチン特異的な予防効果を検証するため、本研究グループでは最近約10年間にわたって全国24施設で毎年新規に診断された40歳未満の若年子宮頸がんのなかで、ワクチンでの予防が可能なHPV16/18型陽性がんの割合をモニターしてきました。子宮頸がんのHPV16/18型陽性率の年次推移を見ると、20代でのみ2017年以降で減少していることを明らかにしました(図3)。以上の結果から、わが国でも子宮頸がんに対するワクチン効果が認められると結論づけました。

本件リリース元: 学校法人 昭和大学 総務部 総務課 大学広報係

https://www.u-presscenter.jp/article/post-51496.html

プレスリリースにはこのように書かれていますが、論文を見てみると、

Human papillomavirus vaccine impact on invasive cervical cancer in Japan: Preliminary results from cancer statistics and the MINT study

Further studies are warranted to confirm that our results are attributable to vaccination.

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/cas.15943

「私たちの結果がワクチン接種によるものであることを裏付けるには、さらなる研究が必要だ」と書かれているので、リリースの表現は言い過ぎです。

それが気になっていたのですが、先日、薬害オンブズパースン会議が昭和大学に対して、「『昭和大学研究活動における不正防止規程』に基づく調査実施等の要請書~HPVワクチンの子宮頸がん予防効果に関する小貫講師らの論文について~」を提出したとコメントで教えていただきました。

詳細は下記を読んでいただきたいのですが、ポイントだけ書いておきます。

『昭和大学研究活動における不正防止規程』に基づく調査実施等の要請書~HPVワクチンの子宮頸がん予防効果に関する小貫講師らの論文について~

問題点の1つとして、5 歳刻みのデータを 10 歳刻みで集約・分析したことが書かれています。

・全国がん登録データでは、HPV ワクチン接種率が極めて低い年齢階層や接種率ゼロ%の年齢階層でも罹患率が減少していることから、20~29 歳の若い日本人女性において新たに子宮頸がん(浸潤がん)と診断された症例の減少が HPV ワクチンの有効性を示唆するとは言えない。

・全国がん登録の子宮頸がん罹患率は、接種率が極めて低い 25~29 歳と、ほぼゼロ%の 30~34 歳で明らかに減少していた。

昭和大学研究活動における不正防止規程』に基づく調査実施等の要請書

この論文に用いられたデータは、下記で公開されています。

「全国がん登録」とは、日本でがんと診断されたすべての人のデータを、国で1つにまとめて集計・分析・管理する新しい仕組みです。この制度は2016年1月に始まりました。

「全国がん登録」制度により、居住地域にかかわらず全国どこの医療機関で診断を受けても、がんと診断された人のデータは都道府県に設置された「がん登録室」を通じて集められ、国のデータベースで一元管理されています。

表1 届け出の対象となっている患者のがんに関する情報
(1)がんと診断された人の氏名、性別、生年月日、住所
(2)がんの診断を行った医療機関名
(3)がんの診断を受けた日
(4)がんの種類
(5)がんの進行度
(6)がんの発見の経緯
(7)がんの治療内容
(8)(死亡した場合は)死亡日
(9)その他

https://ganjoho.jp/public/institution/registry/national.html

前述のプレスリリースには、「がん登録データはHPVワクチン接種歴と結びつけられていない」と書かれています。国が接種を推奨するなら、この届け出にワクチン接種歴を書く欄も作るべきだと思います。2016年に始まったなら、HPVワクチンの健康被害はすでに報告されていたはずです。

実際にデータを見てみると、薬害オンブズパースン会議の指摘どおり、データは5 歳刻みになっています。

国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)より

この研究グループは、なぜ10歳刻みで分析したのでしょうか。5歳刻みでは、思ったような結果が出せかなったからではないのでしょうか。

さらに薬害オンブズパースン会議は、下記の指摘もしています。

「日本における子宮頸がんに対する HPV ワクチンの有効性を強く示唆している」という結論を導いていた一方で、その表現は「強く示唆している」とするにとどまっており「効果が確認された」という断定はしていない。
(中略)
(しかしながら、本件プレスリリース及び広報記事では、)本論文によって日本で初めて HPV ワクチンの子宮頸がん予防効果が確認されたと読み手に誤認させる内容となっている。

昭和大学研究活動における不正防止規程』に基づく調査実施等の要請書

確かに、論文では「suggesting」や「may suggest 」であり、断言はしていません。

In this study, the vaccination rate among ICC cases born in 1994–1999 was far lower than that among general 1994–1999 birth cohorts (9% vs. 50%–70%),also suggesting that highly vaccinated cohorts may be much less likely to develop ICC (rough estimate of relative risk based on comparison of vaccination rates, 0.04–0.10).

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/cas.15943


These observations may suggest a more evident impact of HPV vaccination on ICC in the late 2010s.

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/cas.15943

それにも関わらずメディアはこのリリースを元に、下記のような見出しで記事を書いていました。

『昭和大学研究活動における不正防止規程』に基づく調査実施等の要請書


研究者が研究論文による科学的成果についての広報活動を行う際には、研究論文の内容を正確に伝えなければならず、研究論文の結論と異なる内容を広報したり、あるいは研究成果を誇張することによって誤った印象を報道機関等に与えたりすることのないよう注意しなければならない。

『昭和大学研究活動における不正防止規程』に基づく調査実施等の要請書

私も調べてみましたが、現在も下記のような見出しが残っていました。

このような見出しでは、多くの人が誤解するでしょう。

プレスリリースに正しい情報を書く必要があるのはもちろんのこと、メディアも、プレスリリースの内容だけでなく、論文もきちんと読んで記事を書くべきではないのでしょうか。人の命や健康に関わる情報なのですから、責任をもって記事を書くべきだと思います。

このような見出しのミスリードによって、「予防効果が確認されている」という人が出てきてしまうのです。

接種を勧めるために役立つ情報しか報じず、それさえもきちんと目を通さずに報じるメディアを信用できますか?


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