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HPVワクチンへの疑問2 感染経路に関する謎

東京都は1月11日、HPVワクチンを男性が接種した際の費用負担を軽減するために、自治体に対して補助を行う方針を明らかにしました。東京都は、男性への接種を積極的に勧めようとしています。男性が接種するメリットなどを調べているうちに、HPVの感染経路について疑問がわいてきました。


HPVはありふれたウイルスなのに

「HPVワクチンへの疑問1」からのつづきです。


上記のニュース記事には、男性がHPVワクチンを接種すると「性交渉による女性へのウイルス感染を防ぐことも期待できる」と書かれています。では、そもそも男性は最初にどうやって感染するのでしょうか。他の女性との性交渉からなら、初めて同士なら感染しないのでしょうか。

ネットで調べても、「主に性交渉によって感染する」としか書かれておらず、「主に」じゃない部分がわかりません。考え始めたら、謎が深まるばかり・・・。

例えば、下記の資料を読んでみましょう。

知ってください ヒトパピローマウイルス(HPV)と子宮頸がん のこと
国立がん研究センター がん対策研究所

子宮頸がんは、 女性の子宮の入り口付近(子宮頸部)にできるがんで、 主に性交渉によるHPV(ヒトパピローマウイルス)感染が原因です。 HPVウイルスは珍しいウイルスではなく、 多くの女性が人生で一度は感染する可能性があると言われています。 ただし感染したからといって必ずがんになるわけではありません。

https://www.ncc.go.jp/jp/icc/project/Cross-Organizational/factsheet/hpv_vaccine_leaflet.pdf

HPVワクチンの接種は早い年齢で始めるほど予防効果が高く、年齢が高くなるほど予防効果が弱くなります。 また、 HPVワクチンには、 すでに感染したウイルスを排除する効果はありません。
HPV自体はありふれたウイルスで、 多くの方が感染する可能性がありますので、 HPVに感染する機会の少ない早い年齢でのワクチン接種が有効なのです。

https://www.ncc.go.jp/jp/icc/project/Cross-Organizational/factsheet/hpv_vaccine_leaflet.pdf

「ありふれたウイルス」と言っていますが、性交渉以外の感染源については書かれていません。

ネット上では見当たりませんでしたが、「子宮頸がんワクチン問題」(みすず書房)には書かれていました。

「子宮頸がんワクチン問題」(みすず書房)については、下記参照。

しかし、すべての人間は、子どもたちを含めて、性的行為以外でも感染の可能性がある。(P.326)

「子宮頸がんワクチン問題」(みすず書房)より

たぶん性的行為によらない最も知られたHPV感染経路は、感染を持った母親から新生児への分娩時の「垂直感染」であろう。もちろんこのような感染の可能性は明らかであり、ある統計では稀(1~5%)としているが、よくあること(40~80%)とする統計もある。感染した母親から生まれた子どものなかには持続的に感染し続ける子もいる。科学者は母乳と羊水の双方からHPVウイルスを検出している。(P.327)

「子宮頸がんワクチン問題」(みすず書房)より

※本の注には、「ある統計」の参考文献もきちんと書かれています。

著者(バコブロウ)らは「性交経験のない女性がかなりの率で生殖器にHPV感染している事実は、性的虐待も性的行為も経験していない少女にも低リスクおよび高リスクの生殖器HPV感染が普通に見られることから、性的行為によらない実質的なHPV感染経路が存在することを示唆する」と結論づけている。(P.327)

「子宮頸がんワクチン問題」(みすず書房)より

本研究の著者らは、将来がんの危険を招来する初期の感染に関して多くの未解決な疑問があることを認めている。(P.327)

「子宮頸がんワクチン問題」(みすず書房)より

著者は、「性的行為によらないHPV感染は重大な関心事の1つである」としています。なぜなら、ワクチン接種時にすでにHPV感染が進行している場合、ワクチン接種によりCIN2、3型病変(がんになる前の段階)のリスクが高まるか、状態が悪化する危険性があるからとのこと。

そうなると、接種前に感染しているか調べた方がよいのですが、女性の場合、検査は子宮頸部から細胞を採取しなければならないので、子宮頸がん検診と同じやり方になるようです。

東京都保健医療局のサイトより、検診のやり方。


https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/joshi-kenkobu/shikyukeigan/03/

この検査を子どもに行うことはできないので、データを集めることは難しいでしょう。データを集めていないので、性交渉をする前の年齢に関しては、わからないということです。

男性のHPV検査は、陰部等の皮膚表面をこすってもウイルスを捉えることができなければ正確な結果がでないので、行っている医療機関は少ないようです。

10代前半でのワクチン接種が推奨されていますが、それも「性交渉による感染」が前提となっています。もし子どものデータがあれば、「10代前半」という基準も意味がないかもしれません。

さらに、HPVは「ありふれたウイルス」と言われていて、多くの人が感染しているのに、子宮頸がんを発症する人としない人がいます。感染していても発症しない人と発症する人の違いは、何なのでしょうか。なぜもっと、その部分に注目しようとしないのでしょうか。

HPVに感染しているかどうか調べるにはどんな検査をするのが一番良いのか、いつどのようにして感染するのか、どれくらい罹りやすい感染症なのか、HPV感染が直接発がんに至るかどうかさえも含めて、HPVとそれを予防するワクチンについて、深いところまで掘り下げると、ほとんどすべてが不確かなのである。(P.340)

「子宮頸がんワクチン問題」(みすず書房)より

男性も女性も、いつどこで感染したかは調べようがないのです。もしリスクがないワクチンなら、「パートナーのために接種しましょう」と勧めるのもわかります。けれども、このワクチンはまだ未解明の部分が多く、接種後の健康被害によってそれまでと同じような生活が出来なくなってしまった人が多数いるのです。日本でも、男子の死亡事例があります(下記参照)。

これほど不確かであり、安全性についてもまだわからないことが多いものを、なぜお金を出してまで国や都は推奨するのでしょうか。

「HPVワクチンへの疑問3」につづきます。