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HPVワクチンへの疑問1 男性を対象とした臨床試験

東京都は1月11日、HPVワクチンを男性が接種した際の費用負担を軽減するために、自治体に対して補助を行う方針を明らかにしました。現在、国内では男性への適用で承認されているのは4価のガーダシルのみです。9価のシルガード9は、男性への適用がまだ承認されていないので、接種後にもし健康被害にあっても公的な救済制度の対象外になります。ガーダシルについて、男性に行われた臨床試験を調べてみました。


男性が接種する場合、自分にメリットはあるのか?

以下、TBS NEWS DIGからの引用です。

東京都 男性のHPVワクチン接種費用を補助する方針 区市町村負担分の2分の1 2024年1月11日(木) 22:23

東京都は、子宮けいがんなどを防ぐHPVワクチンを男性が接種した際の費用負担を軽減するために、自治体に対して補助を行う方針を明らかにしました。

子宮けいがんの原因となるHPV=ヒトパピローマウイルスは、性交渉などによって感染するとされていて、小学6年から高校1年までの女性は、自己負担なしでHPVワクチンを定期接種することができます。

一方、男性がHPVワクチンを接種するとがんを予防する効果があるうえに、性交渉による女性へのウイルス感染を防ぐことも期待できますが、男性は定期接種の対象外で、全額自己負担となっています。

こうしたなか、東京都は11日、区や市などの自治体が男性の接種費用を支援する場合に、自治体が負担する費用の2分の1を都が補助する方針を明らかにしました。

対象は小学6年から高校1年までの男性で、来年度予算案に4億円を計上する方針です。

都によりますと、こうした取り組みは都道府県では初めてだということで、HPVワクチンの定期接種化に向けた流れを加速させたい考えです。

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/937236?display=1

男性への適用は、2020年12月に承認されました。

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000972788.pdf

ネット上では咽頭がんの予防も承認されたという情報がありましたが、上記には入っていません。アメリカのFDAでの承認と勘違いしているのかもしれません。

ガーダシルの添付文書や審査報告書は、下記のサイトで公開されています。

2020年12月25日 審査報告書 で下記の内容が追加されました。

https://www.pmda.go.jp/drugs/2020/P20201224002/170050000_22300AMX00601_A100_1.pdf

男性の臨床試験は、下記のように行われました。

https://www.pmda.go.jp/drugs/2020/P20201224002/170050000_22300AMX00601_A100_1.pdf

7.1 第Ⅲ相試験
7.1.1 海外第Ⅲ相試験(CTD5.3.5.1.2:020 試験、実施期間:2004 年 9 月~2009 年 7 月)
16~26 歳の健康男性を対象に、AAHS を対照(プラセボ)とし、本剤の有効性、免疫原性及び安全性を検討することを目的とした無作為化二重盲検並行群間比較試験が、海外 71 施設で実施された。

https://www.pmda.go.jp/drugs/2020/P20201224002/170050000_22300AMX00601_A100_1.pdf

ここで注目すべきは、「AAHS を対照(プラセボ)とし」という部分です。別記の略語一覧を見るとAAHSとは「アルミニウムヒドロキシホスフェイト硫酸塩」と書かれています。

「アルミニウムヒドロキシホスフェイト硫酸塩」は、ガーダシルに添加剤として入っているものです。

ガーダシル 添付文書(第3版より)

安全性を検討する目的なら、プラセボ群は生理食塩水にしないときちんと比較できないはずです。なぜ生理食塩水ではないのでしょうか。

https://www.pmda.go.jp/drugs/2020/P20201224002/170050000_22300AMX00601_A100_1.pdf

尖圭コンジローマについては、下記参照。


肛門疾患については、「MSM を対象として、本剤に含まれる HPV 6、11、16 及び 18 型に関連した AIN 又は肛門癌(以下、「肛門疾患」)に対する発症予防効果の検討が行われた」とあります。MSMとは、略語一覧によると「男性と性交渉を行う男性」です。MSM以外の男性も接種するのに、なぜMSMだけが対象だったのでしょうか。
※AIN :肛門上皮内腫瘍

https://www.pmda.go.jp/drugs/2020/P20201224002/170050000_22300AMX00601_A100_1.pdf

1. 起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等
(略)
肛門癌は、10 万人あたり 1 人に発生する稀な癌であり、肛門癌の主要な原因は HPV による感染であるとされている(Crit Rev Oncol Hematol 2019; 135: 115-27)。(中略)

また、本邦における肛門癌による死亡者数は、2017 年には男女合わせて 441 人であり、すべての癌種による死亡の 0.1%であった(国立がん研究センターがん情報サービス、「がん登録・統計」)。

https://www.pmda.go.jp/drugs/2020/P20201224002/170050000_22300AMX00601_A100_1.pdf

「肛門癌は、10 万人あたり 1 人に発生する稀な癌」だと書かれています。臨床試験を行ったのが「男性と性交渉を行う男性」ということは、「男性と性交渉を行わない男性」を対象とした臨床試験ではデータは集まらないほど発症率が低いということなのではないでしょうか。

さらに、内訳を見ると、肛門癌はプラセボもゼロです。

https://www.pmda.go.jp/drugs/2020/P20201224002/170050000_22300AMX00601_A100_1.pdf


7.1.2 国内第Ⅲ相試験(CTD5.3.5.1.4:122 試験、実施期間:2013 年 6 月~2017 年 8 月)
16~26 歳の健康男性を対象(目標被験者数:MSM 及び HM を合わせて 1,100 例、そのうち MSM が約10%、本剤群・プラセボ群各群 550 例)に、プラセボを対照として、本剤の有効性、免疫原性及び安全
性を検討することを目的とした無作為化二重盲検並行群間比較試験が、国内 24 施設で実施された。

https://www.pmda.go.jp/drugs/2020/P20201224002/170050000_22300AMX00601_A100_1.pdf

国内の臨床試験は、MSMとHM(異性愛男性)が対象となっています。
けれども、有効性の検討に係る主要評価項目は、 HPV 6、11、16 及び 18 型に関連した肛門性器部(性器周辺部及び肛門内)の持続感染(6 カ月以上)の発生率とされ、海外の試験と違います。

https://www.pmda.go.jp/drugs/2020/P20201224002/170050000_22300AMX00601_A100_1.pdf

HPVに感染していても、必ずがんを発症するわけではないはずです。なぜ国内臨床試験では、HPV 6、11、16 及び 18 型に関連した AIN 又は肛門癌に対する発症予防効果を調べなかったのでしょうか。

これについては、下記の議事録にも書かれています。

7.R.1 臨床データパッケージ及び審査方針について
国内における尖圭コンジローマに対する本剤の開発について、尖圭コンジローマの発症予防効果を検証する試験は、必要な被験者数の観点から実施困難と考えた。

https://www.pmda.go.jp/drugs/2020/P20201224002/170050000_22300AMX00601_A100_1.pdf

国内臨床試験では、尖圭コンジローマの発症予防効果を検証する試験はしていないということです。

7.R.4 効能又は効果及び臨床的位置付けについて
<肛門疾患について>
肛門癌の開発においては、肛門癌の発症頻度の低さを考慮し、肛門の HPV 感染及び肛門疾患のリスクが著しく増加する MSM 集団を 020 試験のサブスタディとして組み入れ、肛門内の HPV 持続感染及び肛門疾患を有効性の評価項目とした。

https://www.pmda.go.jp/drugs/2020/P20201224002/170050000_22300AMX00601_A100_1.pdf

ここにも、「肛門癌の発症頻度の低さ」と書かれています。

ガーダシル添付文書(第3版)より

「5.5予防効果の持続期間は確立していない」ので、もし効果があったとしても、接種したからずっと安心というわけではありません。コロナワクチンも有効性95%と言っていましたが、効果の持続期間は確立していないと書かれており、接種しても多くの人が発症していました。

HPVワクチンはまだ未解明の部分が多く、接種後の健康被害によってそれまでと同じような生活が出来なくなってしまった人が多数いますし、日本でも男子の死亡事例があります(下記参照)。

男性が接種するメリットは、リスクを上回ると言えるのでしょうか。

「HPVワクチンへの疑問2」につづきます。