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一筋縄ではいかない結末/金曜ドラマ『石子と羽男-そんなコトで訴えます?-』第3話

個人的に、今期一番好みのドラマが『石子と羽男-そんなコトで訴えます?-』である。

第1話、第2話と、パラリーガルの石子と弁護士の羽男が互いの足りない部分を補い合いながら依頼人の相談を解決してきた。そこに至るまでストーリーは二転三転。例えば、第2話ではゲームに大金を課金してしまった小学生とその母親が主人公。木村佳乃さんが演じた母親は教育熱心で、子どもの気持ちに少々疎い毒親気味な人間に見える。その印象が物語を複雑化させ、ぎりぎりまで結末がどこに転がっていくのか分からなかった。

そんなわけで、「きっとこれまでと同じように、ん?ん? と思わせながら、最後にはきちんと着地するんだよね」と、慣れた風で第3話も観ていた。

題材はファスト映画。公開された映画を編集し、ストーリーなどを短くまとめた動画のことだ。権利を持たない人間がアップロードすることは、もちろん違法行為。それを動画サイトにアップした大学生(井之脇海くん)の国選弁護人になった羽男は、まったく反省をしない彼に頭を抱える。

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第3話の結末によって、このドラマへの信頼がゆるぎないものになりつつある。ふとアンナチュラルの第5話を思い出した。それは妻を亡くした男の話。ラストは実に心に深く刺さるものだった。人生の不条理を、どんな風に解決する、というより諦めるのが正解なのか。男を演じたのは泉澤祐希くん。朝ドラ『ひよっこ』では、米子にぐいぐい押される頼りない三男役が人気だったが、私が彼を一気に好きになったのはこの『アンナチュラル』の第5話だ。

話がどんどんずれて申し訳ないけれど、ひと月ほど前『Dr.コトー診療所』がスクリーンで帰ってくるというアナウンスがあった。剛洋は当時演じていた富岡涼くん以外が演じるなら誰だろうと、脳内俳優名鑑をパラパラした結果が泉澤くんだった。そうだよ、泉澤くんがいるじゃないか! 我ながらナイスキャスティングだと思った。まあ実際はどうなるのか知る由もないのだが。

実はこのnote、昨晩書いたものを軽くリライト中なんだけど、たった今ネットニュースで彼に第一子が誕生したと知った。期せずして、泉澤くんネタを持ってきていた自分が恐ろしい……。

いけない。ずれにずれて、別のドラマと俳優推しをしてしまった。この話はまた今度。

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『石子と羽男』に戻ろう。

第3話のラストは、ファスト映画が作品だけでなく製作に関わった人を傷つけ、さらに映画界そのものの衰退を招く罪深いものだと強く訴えている。井之脇くん演じる大学生は、映画が好きだからこそ、その魅力を伝えるために動画をアップしただけと主張。映画好きなのに、映画界を衰退に追い込む行為を自らやっているのだから皮肉なものである。そして罪を犯したことを反省しても取り返しがつかない現実が、重くこちらに伝わってくる。

同時に、早送りしながらドラマや映画を鑑賞して観た気になる人への静かな抵抗も、垣間見た気がする。お金もない、時間もない、そういうとき人はできるだけコスパのよい最短の生き方を選ぼうとする。そうさせてしまうのが、今の社会なのだと思う。それは自分が身をもって知っている。第3話は、そこをやんわりつついてきた展開だった。

誰にでも起こりうる案件を題材にしており、入りやすいからさらっと視聴しはじめるわけだけど、思わぬ転がり方をして、気づいたら現代社会の深刻な問題に行き着いていることもある。飽きさせない演出とストーリーに、完全に引き込まれているのだ。

ところで第3話では、羽男の父親にイッセー尾形さん、映画監督にでんでんさんをキャスティング。ニコニコしながら羽男の心をズタズタにする父親役のイッセーさん、終始淡々と語ることで激しい怒りを表現する監督役のでんでんさん。とても贅沢な回だった。

羽男は相変わらず「できる弁護士」をセルフプロデュースするけれど、石子の前ではどんどん自分をさらけ出すようになった。彼のこれまでのトラウマは、払拭される方向に進むのだろうか。それは安易すぎるかな。今週から中盤に差し掛かる。石子、羽男、そして大庭の行き着く先が、そろそろ気になってきた。


★第1話の個人的感想はこちら。


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