見出し画像

Nike広告のうまくやった感について考える(1)

新しいNikeの #JustDoIt 30周年広告が賛否両論で大学院の友人たち(みんなマーケターなので)と会うとすぐにその話になる2週間でした。議論の元はメインビジュアルやナレーションのColin Kaepernick(上の写真の人)がサンフランシスコ49ersの元クォーターバックで、2016年8月のプレシーズンマッチから人種差別への抗議活動で、試合前の国歌斉唱の起立を拒否して片膝をついていた選手だったからです。この行動はセレブリティや他のスポーツ選手が協調したり、愛国心がないって言われて、例のアメリカの一番の偉いさんもコメントするなど批判の的にもなっていました。

この人がキャンペーンのメインになると発表された日から、今まで「Nikeダセー」とか言ってたミレミアム世代がNikeを擁護しだしたり、このキャンペーンのビジュアルに似せたmemeが大量にインスタやTwitterに投稿されたり、逆にNikeのシューズを燃やす動画をアップする人とか不買運動をする人が出てきたりと、もう面白いくらいに毎日いろんなニュースが伝えられていました。 応援する方も批判する方も最初の1週間くらいがヤマで今はだんだんおさまってきた感じ。

気になるNikeの売上ですが、リサーチ会社のEdison Trendsによると、レイバーディ週末当初3日間(9月2日から4日)で、Nikeのオンライン売上高は31%増え、伸びは前年と比べて17%増!

このキャンペーンはNikeの "JustDoIt" 30周年のものなので、キャンペーンとしていろんなタイプのビジュアルがあるんですが、メインになったものはこちら。どれにもだいたい #Nike #ColinKaepernick #JustDoIt のハッシュタグが使われています。いろんな意見がありますが、このCM自体はすごくいいなあと。昔のNikeのCMを彷彿とさせるし。特に最後のColin Kaepernickのナレーションの "So don’t ask if your dreams are crazy, ask if they’re crazy enough.” の部分、鳥肌立ちました。

そしてスニーカー燃やしたりしていた人たちのHuffPostのまとめがこちら。こっちは #NikeBoycott のハッシュタグですね。

Nikeの株価についてもほぼ毎日報道がされていました。株価はキャンペーンの概要が発表されてから下がり始めて、翌日には3%下がっていました。で、数日で持ち直して、キャンペーンが始まって10日後の13日には完全復活しています。

昔はいろんなもの(AIDSとか、LGBTとか)とガッツリ取り組んでいた印象のあるNikeですが、最近は安全なつまんんない会社になってたイメージで、今アメリカで一番の購買層であるミレニアム世代からは見放されていたため、このキャンペーンがいいカンフル剤になりましたね。

株価については、これほどの大企業だとファンドとかで大きく持ってたりが多いでしょうから、小口の株主の影響なんてはなくそだと思いますが、安定重視の株主が売って、昔のNikeみたいにやんちゃを応援してくれる株主が買ったのなら、Nikeブランドにとってすごくフォローだろうなと思います。

ちなみに例の一番えらい方はもともと名指しでColin Kaepernickのことを批判していて、最初のところで書いた通り、この広告に対しても表立って批判しています。そういうのとか、年輩の人のスニーカー燃やす動画とかが若者の心をNikeに戻すのに一役買ってしまっているという事実w

また "親の世代のクールが子供の世代はダサい、親の世代のダサいが子供の世代はクール" というどこの国のどの世代でも普遍の法則からNikeは今の若い世代からは「ダサっ」ってなってたわけですが(親がみんなNike好きだったから)、今回の動きでこれに変化が出たんだろうなと思います。Nikeの偉いさんたち頭よすぎるだろう!!またGeneration Y(ミレニアム世代)、Generation Zは写真やビデオのネットでの共有の仕方がとてもうまいので、企業がムーブメントを拡散しやすいのも今回の追い風でしたね。

アメリカのメディアはこの広告が出てすぐから、"ミレニアム世代のNike人気が戻った"的なことを書き始めていて、私自身はmjdって感じになっていたんですが、広告が出て2日後に、もうどこを切ってもミレニアム世代の金太郎飴みたいな友人が「オレ、Nikeのスニーカー買いたいかもしんない」って言い出して、びっくりしました。リアルに効果を感じた次第。ちなみにこの友人がどのくらいミレニアムかというと、白人男性28歳、黒縁メガネ、くしゃくしゃの金髪の天パを団子にして高い位置で結んでて、髭はサンタ並みに長く、常にヒップスターみたいな格好をしていて、20歳の頃にはミュージシャンになるのがカッコイイと思っていて大学に進学しなくて、今更UCバークリーで勉強してるっていう男の子です。筋金入りのフェミニストだしね。

もう少しこの広告についてのマーケティング的なことを書きたいんですが、ちょっと長くなりすぎたので、また次のエントリーで。

ちなみに前セメの試験や論文の地獄が終わり、すぐに日本に行って、またそれからすぐにニューヨークに行って、しばらく全く気づいてなかったんですが、サンフランの街からLimeとかBirdとかのレンタル電動スクーターが一掃されていますね。残ってるのはパークするときに固定しなくてはいけないJUMPと元々のレンタルバイクぐらい。すばらしい!道が狭くなってるし、危ないしで、本当に迷惑だったのでうれしいです。ブラボー!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?