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書店パトロール25 いつか暗黒大陸に…。

書店で本を探す。『正直不動産』の最新19巻を購入に来たのだ。
ちゃーんと、1/3のスペシャルドラマも観たし、シーズン2だって観る予定だ。

私は、『正直不動産』が正直こんなに売れてないとは思わなかった。
それは『ダンス・ダンス・ダンスール』にも感じていて、後者は300万部に届いていない。平均10万部とかなのだが、面白いし、アニメになってもなかなか売れない作品もあるものだと感じた。
とはいえ、10万部、売れてるやないのともいえる。

映画本を眺めていると、『文庫版 惹句術 映画のこころ』という文庫を発見。2022年に刊行された、文庫化された本だった。

惹句はじゃっくと読む。映画の宣伝文句のことだ。ジャックといえばハンマーであり、バウアーであり、ニコルソンである。1,760円もする。然し分厚いし、面白そうだ。そもそも、映画のコピーや惹句は勉強になる。
都々逸みたいなもんで、語呂の良さや作品の内容を上手く言っている惹句はやはり映画そのものを光らせる。
然し、その本はさっと本棚に差し戻す。それから棚を睥睨しているうちに、ポール・ニューマンの自伝が目につく。

え、4,070円!クソたけぇ……。ポール・ニューマン、といえば、私は高校生のときにデートで『ロード・トゥ・パーディション』を観に行ったことがある。サム・メンデス監督の『子連れ狼』を禁酒法時代のアメリカで、というヘンテコリンな映画だったが、なぜこの映画を選んだのだろうか。

サム・メンデスは好きな監督で、『007/スカイフォール』は有名だが、私は『ジャーヘッド』を推す。
『ジャーヘッド』は湾岸戦争が舞台で、然し、戦地に来てもなかなか戦闘は始まらないことへの海兵隊の悶々を描いた映画だ。

なぜジャーヘッド、というのかというと、海兵隊員が髪を刈り上げているのが湯沸かし器のヘッド部分みたいだから、である。
サム・メンデスの作品の画面は基本寒色のマットな風合いで、その熱量のない色味が好きである。
ポール・ニューマン、といえば私的には『暴力脱獄』がやっぱり好きだ。然し、同時代のスターではないので、そんなに詳しくは識らない。彼は、私が映画を観始めた時点でスクリーンから遠ざかっていたし、やはり、私には90年代〜10年代くらいのスターに憧れがある。でも、それらのスターも、もう世代交代の時代に入り、しかも、10年代からは明確なスターはいなくなってしまった。

さて、無論4,070円もの退勤は支払えないので、私はさっとその場を離れて、次は文学コーナーに向かった。
文学コーナーには『あのとき売った本、売れた本』なるエッセイが。

これはパラパラと捲った感じ、非常に読みやすく、様々な有名な小説などの販売の際のエピソードなが綴られた、紀伊國屋書店新宿本店の書店員の回顧録なのだという。ベストセラーについて話している。
紀伊國屋書店新宿本店。私は二度ほど訪った記憶がある。然し、新宿はでかすぎる。まぁ、私にとり、東京は魔都であり、暗黒大陸なのだ。新宿駅はさながらミノタウルスの迷宮ラビュリントスであり、アリアドネーの糸が無ければ脱出できない。
私は昔、ニューヨークに住んでいたのだが、然し、ニューヨークの方が遥かに田舎であり、わかりやすいといえる。まぁ、ニューヨークは縦に長いが。

それから、以前も目にしていた『本の虫 二人抄』。これもエッセイだが、二人抄とあるように、書店員と編集長、二人の本の虫が綴るエッセイである。

目次を開く。私が識らない名前、識っている名前、識っているが読んだことの名前が並ぶ。こういう、本当に山のように本を読む人というのは、知識が広範だよなぁと思う。そして、それをひけらかすことをしない。知識というのは、ひけらかした時点で終わりであり、聞かれたときに答えるだけでいいのだという。そういう人に、私はなりたい、と思った矢先、昨年12月に発売されたばかりの賢治本が。

賢治、といえば法華経であり、それは作品の根底に流れている(と、本に書いてあった。)宮沢賢治は日本文学における二人の天才のうちの一人だが、それは、宮沢賢治と同質の作品というものが類例を見ないからで、所謂いわゆる文学青年からは産まれてこない文学を生み出した点にある(と、本に書いてあった)。
まぁ、私も同感で、然し、賢治の評伝本の決定版というのはあるのだろうか。3年くらい前に文庫化されたこれは妹のトシのことなどをきちんと作風に結びつけて書いていて、一番読み応えがあった。

宮沢賢治は死んでから有名になったゴッホパターンの人だが、どちらも少しおかしいところがある。
私は谷崎や川端の作品は好きだが、彼らは社交的で如才ないタイプなので、こういう意味不明だったり、唯一無二の世界を書くモノホンの天才よりは大分劣っていると思う。

そして、最後に『#Z世代的価値観』をパラパラと読む。

世代で世界は別れている。まぁ、文学も、映画も、世代があるものだ。
それがグレーに入り交じるのが世界である。
私はミレニアル世代である。1980年〜1990年代半ば生まれの人がそうなのだという。Z世代は1990年代半ば〜2010年代初期までに産まれた人たちだそうだ。なので、大体今の20代後半〜10歳くらいまでだろう。
その下の世代はα世代である。つまり、まだ本当に子供である。このα世代がカルチャーへと踏み込んでいくのが2020年代後半〜2040年代になるのだろう。
この世は祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす、のであって、私も最早ジェネレーションギャップでてんてこ舞いであり、然し、お金、だけは常に絶対であり、私の前に巨大な壁として君臨し、結句、コミックスを1冊購入するのが関の山。







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