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【第5話】網膜剥離闘病記 ~網膜剥離になりやすい人の特徴。手術は滅茶苦茶痛い!?~

いよいよ手術(網膜復位術)開始。

車椅子で手術室に向かう

 15時15分、手術の1時間前にあらかじめ腕に刺してある針から点滴が始まった。精神安定の薬剤等が入っているらしい。それと同時に瞳孔を開く点眼薬を点す。それから15時30分、45分と瞳孔を開く点眼薬を点し、出棟時に筋肉注射ともう一度点眼薬をして、手術をする方の目を間違えないよう、紫のマジックで右目の眉の上あたりに麻呂の眉のような点を打って印をつけて手術に臨む。
 当初の予定だと手術開始は16時15分の予定だったが、前の手術が早く終わったようで、16時に早まった。
 病室のベッドを降りた時点から車椅子に乗り、看護師さんに押してもらって手術室に向かう。眼科の手術なのに車椅子移動というのは少し違和感があったが、これから手術が始まるという緊張感も高まった。

手術室の手前の部屋へ

 病棟を出てエレベーターで手術室のある5階まで降りると、テレビのドキュメンタリー番組やドラマで見るイメージそのままの光景がそこにはあって、更に緊張が増す。
 手術室の前室のような空間で一旦待たされ、しばらくすると僕と同じように車椅子を押された患者さんが手術室から出てきて、僕の横で止まった。どうやら今まで手術を受けていた患者さんのようで、僕を連れてきてくれた看護師さんに連れられてこれから病棟に帰るのだろう。
 眼科の手術室エリアなので目の手術の患者さんだろうが、手術という戦いから生還してきた人と、これからそこに挑む僕。変な連帯感を勝手に感じて心の中で「お疲れさまでした。僕も行ってきます」と声をかけた。

スタッフがまさかの喧嘩!?

 手術室に入ると、執刀医のS先生とサポートの医師、それともう一人医師がスタンバイしていて、そこに車椅子に乗った僕とそれを押す看護師が合流する格好となった。看護師の女性は僕を手術台に座らせ、僕はその場のスタッフと軽く挨拶をする。手術台は美容院のシャンプー台の椅子のような仕組みになっていて、早速フルフラットにされる。手術台上の僕の体に看護師は手際よくいくつかの計器をつけてゆく。左腕には昼間からつけている点滴、左手の人差し指にパルスオキシメーター、右腕には5分に1回自動で測れる血圧計、胸に心電図の吸盤をつけ、右手にも何かの計器を握らされたが、それが何かはわからない。心電図を付ける際にコードの取り回しがS先生の椅子周辺に干渉しているようで、S先生がそれを指摘すると看護師も虫の居所が悪かったのか反論をし、その場で軽く言い合いになっていて、こちらとしては大事な手術前に喧嘩をしないでくれと不安が募る。

手術の準備が進められる

 S先生は僕に「じゃあ、手術始めますねー」と軽く言い、その場の手術チームにも「じゃ、おなしゃーす」と、10年勤務している居酒屋のバイトリーダーが出勤時にする挨拶くらい軽いテンションで開始の合図をした。
 手術中に頭が動かないように器具で固定し、点眼麻酔を追加する。さらに右目の部分だけくり抜かれた緑色の布を上半身にかけられ、もう左目の視界は緑色しか見えなくなった。看護師は僕の右目に消毒用のポビドンヨード、要するにイソジンをぶっかけ続け、S先生は指先で僕の眼球と瞼の裏側までゴシゴシと洗ってゆく。指でまぶたを触られている感覚はあるが痛みはない。そしてポビドンヨードで右目の視界は真っ茶色に染まる。とはいえ、既に右目は瞳孔を開く薬と再三の点眼麻酔でよく見えなくなっている。そもそも視力検査を「C」が小さくなるパターンではなく、「C」と書かれたプラカードを持った看護師が読めるまで近づいてくる方式でやっている僕としてはそれらの点眼をしようがしまいが裸眼だとほぼ見えていないのだけれど、それでも広義で“見えている”状況下で先端部分が曲がった麻酔の注射針が右目に近づく。
 ついに手術が始まった。

第6話へつづく

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