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第2章#23 ちいさいモモちゃん

もくじRemake『ホワイトな学校へ』

(約2800字)

生活指導力を高める方法について、私の経験からお話します。

#14 授業力up①校内研究は誰のため?」で述べたように、校内研究授業で与えられた課題、私は「静かに!」という以外の方法で、1年生の子供たちを静かにさせる方法を考えなくてはならなかった。

それ以前に、私は、それまでに3回声が出なくなっていた。
大きな声で制する以外の方法について、早急に考える必要があった。

3回めに声が出なくなったとき、ある法則に気付いた。
声が出なくてジェスチャ―やささやくような声で話をしていると、子供たちがそれに気付いて、「先生が、何か言おうとしてるよ。」と、自分たちで静かにしてくれるのだ。
それから、もう一つ。楽しい話や読み聞かせをしていると、とても静かに聞いているのだ。
これらは使える。



うるさい時は、敢えて小声で話す

授業中、静かにしてほしい時は、小さな声で話をすることにした。
しかも、授業から脱線したような、ちょっとおもしろい話。
そうすると、子供たちはそれが聞きたくて、話をやめる。

こういうことか!

いつもいつもうまくいくとは限らないが、この技を習得して、私の声事情は相当楽になった。


もう一つの問題…

しかし、私は、もう一つ困った問題を抱えていた。
それは、学級の子供たちの帰りの支度が、超絶遅いということである。

給食の準備や食べ終わった時間を利用して、連絡帳を書くことになっていたのだが、友達とのおしゃべりを優先してしまい、終わっていない子多数…。私がチェックすることになっていても、見せに来ない。
昼休みなしで書けと言っても、教室で楽しくおしゃべりしながら書いていて、遊べない罰という感じにならない。
そして、帰りの支度をする時間に、書いているから帰りの支度が終わらない。
支度が終わらないから、下校時刻が遅くなる。
連絡帳が書き終わっている子も、のんびり帰りの支度をしているから、もう全然帰る雰囲気にならない。

ここで、気付いたのだが、みんな帰る気が全くない!

たぶん、学童クラブに行く子は学童クラブに行くより、学級の仲良しの友達と遊びたいのだと思う。(確かこの頃、1年生は学校で放課後遊びができなかった。)
その他の子だって、お家に帰ってから改めて遊ぶより、学校にいる方が手っ取り早く遊べる。
帰る方向が違えば遊ぶ約束もしにくい。
子供たちにとって、時間通りに帰るために早く帰りの支度をするメリットが全くないのである。

私は、「早く帰りの支度をすると、いいことがある」という状況を作り出さねばならなかった。
どうすればいいのか?


読み聞かせが使えるか!?

図書の時間には、必ず、読み聞かせをしていた。
子供たちは読み聞かせが大好きで、この時ばかりはシーンとして、楽しい時は笑って、いい反応をしながらよく聞いていた。
そんな中で、時間が来て「あー」と残念がったのが、松谷みよ子さん作の「ちいさいモモちゃん」だった。
「続きは今度ね。」と言ったとき、ひらめいた。
帰りの支度が終わって、「さようなら」をするまでに時間があったら、この本を読んであげようと。
すぐ終わってしまうものでは、次につながらない。
1年生の子に、いつまでも結論の出ない長編は飽きてしまって適さない。
その点、この本は、分かりやすい短い話が集められていて、最適だ。

子供たちがこの本を好きな理由は、面白くてほっこりとする、ちょっと怖いところもある変化に富んだ内容もそうだが、ねこの「プー」だった。
私が、声色を使ってプーのセリフを言うと、子供たちはその度に大喜びした。

果たして、子供たちは、帰りの支度がとても速くなった。
給食の時間に連絡帳をみんな書き終わる。
書いていない子がいると、隣の子が「書きな。本読んでもらえないよ。」と脅していた。
帰りの支度も素早くなった。
驚いたことに、一番のやんちゃKくんが、自分の支度を真っ先に終わらせると、他の友達の支度を手伝っているのだ。
そして、全員が終わると、「早く座って!」と指示を出し、姿勢をピンとして私を見る。
授業が終わってから、下校時刻までの10分間のうち、5、6分はお話が読めた。5時間目の授業がいい加減になっては本末転倒なので、5時間目はきちんとやるという約束を取り付けた。
そうしたら、ものすごく集中して授業に取り組むようになった。
時々、ご褒美で少し早めに切り上げて、読む時間を長めにとってあげた。

今になって思えば、餌をぶら下げて行動をさせるということは、餌がなければ、または餌に飽きてしまえば行動しなくなるというデメリットがある。

しかし、1年目の力不足の教員にとって、この方法は最適だった。
これをきっかけに、例えば、体育着を早く着替える、給食の用意を早くするなど、いろいろなことができるようになり、誉めることが多くなった。誉められると、子供たちはさらにがんばった。
もしかしたら子供たちは、よくなりたかったけど、私が叱ってばかりいたから、そのタイミングがつかめなかったのかもしれない。
何でもいいから誉められたかったのかもしれない。
この読み聞かせが、自分たちの行動を改めるいいきっかけになったのかもしれない。

私は、誉めることの大切さに気づかされた
 

ちいさいモモちゃんのいいところは、シリーズで何冊もあるところだ。
2学期終盤から、3学期の終わりまでずっと続けても読み終わらなかった。
もちろん、私が読み聞かせをする前に、先読みしている子もたくさんいた。でも、お話を知っている子でも、私のプーがどんなふうに話すのか聞きたくて、よく聞いているようだった。


プーとのお別れ

3学期の最終日。
いつもより、長めに、ちいさいモモちゃんを読んだ。
子供たちから、「続きは2年生だね。」という声が上がった。
「でも、2年生の担任の先生は、私じゃないかもしれないよ。」と私。
「えー、そうなの。」「じゃあ、新しい担任の先生に、続きを読んでもらえばいいんだ!」と子供。
そうしたら、例の一番のやんちゃKくん、研究授業で踊りを踊っていた子が、

「それじゃあだめだよ。N=^_^=先生じゃなくなったら、プーの声が変わっちゃうよ!」

と、言った。
私は、嬉しくて涙が出そうになった。
いろいろ大変だったけど、2年生になってまたこの学級を担任できたら、子供たちが喜ぶ楽しいことをたくさんやってあげようと思った。


その日の午後、次年度の担任発表があった。
校長室に呼ばれて、私は5年生と言われた。
「えー、何でですか…」確かに、私は学年の希望調査に第1希望2年生、第2希望5年生、第3希望(忘れた…)と書いていた。
私は、校長室で泣いた。

授業規律や生活指導を徹底させる方法は、いろいろあると思います。
何が一番いいのか…それは、自分やそのとき担任している子供たちにピタッとくるものを、いろいろ試して、体得してほしいと思います。

次回からは、「対応力」の向上についてお話します。

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