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ミステリ作家エラリー・クイーンの作品の中から「コントラクトブリッジ」が登場するタイトルを探してみたという話

以前、「国立国会図書館デジタルコレクションで読める!コントラクトブリッジ関連の入手困難書籍【インターネット公開資料編】」および「同【図書館・個人送信資料編】」という記事を書きました。
これは国立国会図書館でデジタル化された資料を検索できる「国立国会図書館デジタルコレクション」のサービスを利用してブリッジやホイストの記述がある図書を調べたものなのですが、2022年12月に「国立国会図書館デジタルコレクション」がリニューアルされ全文検索可能なデジタル化資料が約5万点から約 247 万点へと大幅に増えたというニュースを聞き、「これならもっとブリッジ関連の古い図書を探せるのでは」と思ったので、再度文献調査をすることにしました。
実際に検索をしてみると、ブリッジがテーマの図書だけでなく「ブリッジが登場する文学作品」がヒットすることがわかり、中でもアメリカの小説家エラリー・クイーンの作品が多数ヒットしたので、今回記事にまとめることにしました。


エラリー・クイーンとは?

エラリー・クイーンは二人組の小説家ユニットです。従兄弟の関係であるフレデリック・ダネイ(Frederic Dannay、1905 - 1982)とマンフレッド・ベニントン・リー(Manfred Bennington Lee、1905 - 1971)は2人で共作した小説を「エラリー・クイーン」というペンネームでミステリ小説コンテストに応募。それをきっかけに1929年にデビューすると瞬く間に人気作家となりました。その作品はラジオドラマ、映画、テレビドラマ化されること多数。20世紀を代表するミステリ作家のうちの一組でした。
また、日本では戦後になってから翻訳本が出版されるようになり、現代においても新訳本が刊行され続けているほど長く愛されている作家でもあります。

エラリー・クイーンが書いた作品の多くは、2人のペンネームと同じ「エラリー・クイーン」という名前の推理小説家が探偵役となって活躍する推理ものです。また、2人は「バーナビー・ロス」という別のペンネームでも作品を発表しており、その名義で発表した作品には元舞台俳優の「ドルリー・レーン」が活躍するシリーズなどがあります。

ブリッジが登場するエラリー・クイーンの作品

日本で出版されたエラリー・クイーンの作品は出版社ごとに邦訳タイトルが異なっている場合が多くあります。文献探索をされる場合はご注意ください。また、Amazonで購入できる作品のリンクをご紹介する場合は出版年が新しい新訳のものを優先しています。

『The Roman Hat Mystery(ローマ帽子の謎、など)』1929

こちらの作品は記念すべきエラリー・クイーンのデビュー作であり、「名探偵エラリー・クイーン」シリーズの第1作目です。
作品の冒頭、その日は雨だったので人々は外出せず「ラジオやブリッジにへばりついていた」という記述が出てきます。1929年頃のおうち時間の過ごし方といえばスマホやNintendo Switchではなく、この2つであったということでしょう。


『The French Powder Mystery(フランス白粉(おしろい)の謎、など)』1930

続いて「名探偵エラリー・クイーン」シリーズの第2作目です。
事件現場となる「フレンチ百貨店」の社長サイラス・フレンチのアパートメントに「カード部屋」があるという設定。「サイラスはカード遊びなんてしないし、娘のマリオンは付き合い程度にブリッジを嗜むぐらいだが、社長夫人とその連れ子はカード遊びが大好き」という趣旨の記述があります。


『The Tragedy of X(Xの悲劇)』1932

こちらは「バーナビー・ロス」というペンネームで発表された「ドルリー・レーン」シリーズの第1作目です。
物語中盤、裁判所での場面でジョン・O・デウィットという登場人物が陳述する中で「取引所クラブでブリッジのゲームに誘われたが指の怪我のため断った」という趣旨のセリフがあります。


『The Siamese Twin Mystery(シャム双生児の謎、など)』1933

再び「名探偵エラリー・クイーン」シリーズから。
エラリー・クイーンと父親のクイーン警視が訪れた山荘に娯楽室があり、そこにブリッジテーブルが備え付けられています。


『The Chinese Orange Mystery(チャイナ橙の謎、など)』1934

こちらも「名探偵エラリー・クイーン」シリーズから。
フェリックス・バーンという登場人物は「うわさによるとブリッジの凄腕らしい」という趣旨の記述があります。


『The Spanish Cape Mystery(スペイン岬の謎、など)』1935

同じく「名探偵エラリー・クイーン」シリーズから。
ジョン・マーコという登場人物がブリッジを得意とし、事件の前夜、他の登場人物たちとブリッジをしています。


「The Myna Bieds(九官鳥)」(短編集『QBI: Queen's Bureau of Investigation(クイーン検察局)』(1955刊)に収録)

こちらの作品はいわゆるショート・ショートです。九官鳥を飼っている資産家の老婦人、ミセス・アンドラスという登場人物の趣味がコントラクトブリッジで、この短編で起こる殺人事件ではトランプカードが重要なアイテムとなっています。


『The Finishing Stroke(最後の一撃)』1958

こちらは名探偵エラリー・クイーンシリーズの後期のもの。
1929年のクリスマスの日のことを語る章の中で、エラリーはクリスマスカードの謎を解こうとするが、それ以外の人々はブリッジをしたりラジオを聴いたりしている、という場面があります。


というわけで、今回はブリッジが一言だけでも出てくるエラリー・クイーンの作品を探してみましたが、思ったよりも作品数が多くて驚きました。
ダネイとリーがブリッジの愛好者だったかどうかは分かりませんが、2人がデビューした1929年からリーが亡くなる1971年までの時代は「コントラクトブリッジの歴史をまとめてみた」の記事でもご紹介している通り、ブリッジが大流行していた時期とまるで重なっているので、当たり前にブリッジが登場するのだなと感心してしまいました。

とはいえ、国立国会図書館デジタルコレクションに収録されていないクイーンの作品は調査できていないので、この他にもブリッジが出てくるクイーン作品があれば追加していきたいです。
紹介した作品は国立国会図書館デジタルコレクションの個人向けデジタル化資料送信サービスで閲覧できるものもある他、公共図書館での利用はもちろん、新刊本で入手可能なものもありますので、気になる作品がありましたらぜひ読んでみてくださいーではー。

なお、今回の執筆にあたっては飯城勇三さんの『エラリー・クイーン パーフェクトガイド』と『エラリー・クイーン完全ガイド』を参考にさせていただきました。「一体どの作品からエラリー・クイーンを読めばいいか分からない!」という方にオススメです。

※『エラリー・クイーン パーフェクトガイド』の方は記事執筆時点ではプレミア価格の出品しかないようなので、公共図書館かAmazon以外の古書店等で探してみてください。

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