セルフビルドから始まるマインドフルネス
1.私たちがなぜセルフビルドをやっているのか。
それは環境問題をもっと身近に感じる感覚をシェアしたいからです。
環境問題というとちょっとズレを感じます。私たちは「何かを使うことが問題」というのではなくて、「住宅に何が使われていてそれが最終的にどう処理されるのかを知らないで、それを自分の一部として暮らす」ということが問題なのではないかなと思っているのです。
私たちが今住んでいる中古の家を買った時、わずかな貯金をはたいて買ったので所持金がほとんど無く、寒くて仕方がありませんでした。当然どこか業者に頼むということもできず、とりあえず39800円で買った薪ストーブを一つ、寝袋と毛布にくるまって、一部屋に縮こまるように生活していました。その次の年の春から、少しずつこの土地で仕事を始め、溜まってきたお金を投資して自分たちで家を直すという作業に入っていったのです。
2,自分たちで家を直す中で発見したこと
お金がないから始めた、「自分たちで直す」ということだったけれど、いざ「直す」=「作る」ということを始めてみると、住宅が抱えている不自然さを発見していきました。
まず、断熱材。張り物フローリングの床は底冷えがひどかったので床を外してみたら、すぐに地面。これは寒いわけだと調べていくと、「断熱材」の存在を知り、どんな断熱材を使えばいいのか調べていくとほとんどが大きな石油系素材の塊のようなもの。こんな大きなプラスチックのようなもの、家が壊されるときにはどうなっているのだろうと調べてみると、燃やすこともできないので特別なゴミとして処理されるとのこと。おそらく埋め立てられるか、強力な処理施設で燃やされるのか。それはいろんな形で地球に残って、ひょっとしたらマイクロプラスチックとして海に流れたり、土壌汚染の原因となるのだろう。私たちが死んだ後、そんな大きなゴミを未来に残していくことになるのか、と思うととても使う気になれず、天然素材の断熱材はないものかと調べていきました。すると籾殻を炭にしたボードがあるということがわかりました。元大工の棟梁が環境に優しい建材を作ろうと、退職後に始めた小さな工房。百姓をしている棟梁が自分のところのお米で作った籾殻くん炭を使って作った断熱材。
子どもの頃から私は「自分が生きるためにいろんな命を犠牲にしていること」が悲しくて仕方がなくて、なんとか少しでも「犠牲」ではなく「循環」になるような生き方をしたいと模索していました。どうせお金を使うなら高くてもそちらを応援したい!!と、入ったお金の全てをその天然の断熱材に注ぎ、それを取り寄せて使うということをしました。少しずつ暖かくなってくるお家。壁板や床板をあるお金の分だけ買って、貼っていくのですが、これもまとめるとかなりの額になります。とにかく家っていうものはどんなに小さな家でもそれなりに質量が大きいから、そこに使われるエネルギーがとても大きいのです。だからなるべく、どこにお金がいくのかはっきりとわかる形で材料を購入したいと思うようになっていきました。
さらに日本の林業を支えることはできないだろうかと考え、国産杉の間伐材を使うことに決め、高くてもなるべく国産の材料を買うことにしました。とにかく私たちはまとまったお金を持っていなかったので、3ヶ月に一回くらい、お金が貯まるごとにまとめて材料を買っていました。その度に、まとまった額のお金、を林業を支えている人たちのもとに届けられること、心を込めて作ったくん炭の断熱材と交換できる。こんなにもしっかりと自分の暮らしが、日本のオーガニックな建築の現場と繋がっているのだと確かな手応えを感じながら暮すことができました。それは私自身の魂を救ってくれているような感覚だったし、何かを「犠牲」にしているという感覚から解き放たれていく感じがありました。
3,セルフビルドの中で積み上がって来たもの
その中で積み上がっていったのはなんとも言えない安心感です。私たちのように家に対して気づきを持ち、それが何でできているのか、それがどこから来ているのか、自分が支払った対価がどんな産業を支えて応援しているのか、そこを考えて暮す人が増えていけば、こういった産業はこれからもっと育っていって、日本の住宅は変わっていく。
大げさかもしれないけれど、こういうことでしか、世界は変わっていかないんじゃないかと思ったのです。
「自分で作る」ということは、建物を建てるということだけではなくて生活そのものをマインドフルに立ち上げるということです。私たちの使うっている電力がどこから来ているか、その裏にどんなストーリーがあるのか、その家具がどんな思いで、どんな材料で作られているか、その断熱材がどんな国でどんな人によって作られているか。そこに想いを馳せる人は実はあまりいないのではないかなと思います。「セルフビルド」のベースには環境への気づき、そして自分がどんな世界と繋がって生きているのかということに注意を払う姿勢があるのです。
そして材料を作っている人のその先までイメージして作った家の、その中に暮らすことにはさらに深い発見があります。それは「気づき」がベースにある暮らし。どんな豪邸や自己啓発セミナーにも敵わない、微細な「気づき」があふれているのです。今までどんな素敵な家に暮らしても感じられなかったような、微細なエネルギーが私たちを支えてくれていることに、否が応でも気づいていきます。大げさに聞こえるかもしれませんが、私たちの住宅への研究はそのプロセスの中で、地球からの愛に応えるような形でどんどん育っていっています。
最初は二人きりでしゃかりきになって始めたことでしたが、少しずつマニアックな人々と繋がるようになり、それぞれの知恵や技術を合わせたアワセルフビルドになりつつあります。家がそのまま私たちの世界の見方の現れになっているので、それに賛同する人々が集まってくるのです。矛盾なく付き合える、地球への思いだけでなく行動を同じくした仲間が「セルフビルド」というキーワードを通して繋がって来ています。
4,セルフビルドから始まるマインドフルネス
家の中には全てがあります。
断熱、蓄熱のシステム、自然素材の性質、天候、気候。
太陽のこと。水の循環。
ゴミとして捨てられ、地球で増え続ける素材。
それをどのように「素材」として循環の中に入れていくか。
自家発電やエネルギー循環についても研究していますが、何でもかんでもすぐにトライするというよりは、この地域にはどんなエネルギーが適しているのか、どんな風にエネルギーを回していくことがこの地域に向いているのか、それを観察しながらベストを探しているところです。
大きなものを動かすときは、観察を長期的にしてゆっくり多次元的に動かしていったほうがいい。それも私たちがセルフビルドから学んだことです。
「家」というのは「私の在り方」「私の生き方」「目指す世界」に対する姿勢そのものだと思うのです。子どもが生まれてからはさらにそこに「教育」ということが加わりました。
壮大に思えることを身近に当たり前に「考える」きっかけを。
セルフビルドクラブ、改めアワセルフビルトクラブはそのための場所として育てていきたいなと思っています。
新しい「家との付き合い方」を体験しに来てください。
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