映画『私の中のあなた』の三つの結末
あなたは『私の中のあなた』という映画を知っていますか。
2009年に日本で公開された
アメリカ映画
その映画には原作があって、原作は実話をヒントに書かれたらしい。
私が最初にこの映画を観たのは15年も前のことで、原作や実話のことは最近まで知らなかった。
そして映画、小説、実話のそれぞれの結末が違っていることも・・・
私は映画しか観ていないので、映画のことを中心に書いてみたい。
映画のあらすじ
主人公のアナは11歳
白血病の姉、ケイトのドナーになるために人工授精と遺伝子操作によって生まれてきた女の子。
アナは生まれてからずっと白血病の姉ケイトの治療のためにケイトに必要な血液や骨髄を提供してきたが
ケイトの病状は悪化し続ける。
そして、とうとうケイトは
腎臓移植が必要な事態にまで・・・
ところが、今度ばかりはアナは自分の腎臓を提供することに納得がいかず、我慢の限界で、自分自身で弁護士を雇い
『自分の体のことは自分で決めたい』と姉のケイトに腎臓移植を希望する両親に対して訴訟を起こすのだった。
ところが、物語が進むうちに訴訟は実はアナの意思で起こしたのではなく
姉のケイトの願いだったと分かってくる。
アナは心から姉のケイトを愛していて
自分のことよりも何よりもケイトの看護を優先して生活を送っていた。
そんな献身的な妹や家族に、ケイトは自分の病気のためにこれ以上大変な思いをして欲しくなかったのだ。
「私が病気で死ぬのはいい、でも私の病気が家族までボロボロにしているのがイヤ」
それにケイト自身も辛い治療に心も身体も限界を超えていたから・・・
最終的にアナは訴訟に勝利する。
それは悲しいけれど
姉の死を意味することでもあった・・・
命が消えかかっているケイトと残された家族の時間を過ごすために、家族は医師の許可をとって、ケイトの希望で海に行く。
それから程なくして、
妹からの腎臓移植をしないと決めたケイトは
安心して、心やすらかに、家族みんなに優しく看取られて亡くなっていく。
アナが両親を訴えたことで、一時はバラバラになってしまいそうな家族だったが、本当の訴訟の理由がケイトの願いだったことで、家族の絆は前よりもいっそう深まった。
家族の絆
確かに良い意味であるかもしれない。
でも絆を強調することで、かえってその絆に縛られたり、
自分を抑えたりしないといけないこともあるんじゃないのかと
私は自分の経験からも深く感じてしまった。
家族の絆のために家族が犠牲になるのはどうなんだろう・・・
家族という絆を強調するあまりに、個々を蔑ろにしていたら、いつの間にかどこかに歪みが生まれてくるのかもしれない。
15年前ぶりにこの映画を再び観て思ったのは、私も家族に対してこの映画の母親のサラのように「こうあるべき」とか「こうして欲しい」と無意識に家族に要求していたかもしれないということに気付かされたことだった。
『娘を絶対に死なせたくない』
一見、母であるサラのエゴのようにも思えるが、
同じ母親としてサラの揺れる気持ちも全てではないけれど理解もできる。
でも、ケイトはもうこれ以上生き続けることは限界だったし
その姉の気持ちを一番理解していたのは実は妹のアナだった。
亡くなる前に
『最後にママと二人でいさせて』と言ったケイト
必死な思いの母親のサラの愛を一番理解していたのはケイトだった。
だからこそケイトは母を妹をそして家族を解放してあげたかったのかもしれない。
ラストシーンではケイトの亡くなった後、家族がそれぞれの人生のスタートをきって歩んでいる様子で締めくくられている。
そのシーンにはアナや母親のサラや家族はケイトが亡くなっても
悲しみを乗り越えて進もうとしている強いメッセージが伝わってきた。
原題は『My Sister's Keeper』(姉のスペア)
ケイトが白血病にならなければ、アナは生まれてこなかったのかもしれないが
どんな理由でこの世に生を受けたとしても
アナは決して姉のケイトのスペアではないし、誰もそれを強要できない。
アナは自分のために生きる権利があるのだから。
映画の邦題タイトル『私の中のあなた』を私なりに解釈してみた。
タイトルにはそんな意味が込められている気がした。
このストーリーには三つの結末があって
映画の結末では、ケイトは亡くなってしまう。
それでも、
私は原作より、実話より、
映画の結末が一番好きだ。
長文を最後までお読みくださりありがとうございます。
久しぶりの映画の記事ですが、この映画を最近再び観て、私の家族に対する気持ちなども色々と考えてしまいました。
予告編です。
https://www.youtube.com/watch?v=17wfTaixJhI
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