2023年8月の記事一覧
「焦らなくてもよいのだということ」 ー 安岡章太郎さんのこと
「焦らなくてもよいのだということ」
もう半世紀も前のことです。わたしは靖国神社の裏にある都立九段高校に通っていました。飯田橋駅から坂道をのぼってゆくと、道が二股に分かれます。その中央に、くさびをうつように高校の校舎がありました。
決してはつらつとした若者ではありませんでした。劣等感だらけの無口な高校生でした。
そんなある日、小説家の安岡章太郎が高校に講演に来ました。安岡章太郎は九段高校
ぼくは何のために詩を書いていたんだ
「ぼくは何のために詩を書いていたんだ」
娘が小さい頃からピアノを習っていたんです。で、中学生の頃には横浜の我が家からわざわざ千葉県の下総中山の先生のところまで、毎週日曜日にはるばる通っていました。片道2時間半もかかる道のりですし、駅から先生の家へ歩く途中に、寂しげで危険な場所もありましたので、そのレッスンに僕も一緒について行っていたんです。
子供を先生にあずけた後、外で待っていました。
友人とは何か ー 岡田幸文さんのこと
「友人とは何か」
もしもつらい時期に手を差し伸べてくれる人を真の友人と言えるのなら、数年前に亡くなった岡田幸文さんは、間違いなく僕の真の友人でした。
岡田さんは僕と同い年で、性格もおとなしく、どこか僕に似ていました。そして岡田さんと知り合ったのは、まさに僕の最もつらい時期でした。
僕は三十代で詩が書けなくなってしまいました。ろくな詩が書けなくなりました。目も当てられない詩しか書けなくな