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夢の中でだけ、私は誰にも嘘がつけない。

夢を見た。

夢の途中で夢だって気がついた。苦しくて仕方がなくて、目覚めたいのにどうしても目が開かなかった。

起きた時には息は上がっていて、涙がとまらなかった。なんとも言えない空虚感で心は寒かった。

私は嘘をついている。友達や家族にじゃない。自分に、嘘をついている。

そして、その嘘に騙され続けている。きっとその方が楽だから。

夢の中の私は、雨の日に傘もささず、大好きな元恋人を追って走っていた。そして彼に抱きついて、すがるようにして言った。

あの子となんて別れて一回だけでいいからチャンスをちょうだいって。絶対幸せにするから。いやってほど愛すからって。


本当はこんな風にすがってでもそばにいてほしいかったのかもしれない。本当は傷ついてもいいから、この気持ちを伝えたかったのかもしれない。醜くたって、かっこ悪くたっていいから、ぐちゃぐちゃな私を知ってほしかったのかもしれない。そして本当は、抱きしめてほしいんだ。

「彼の隣にいるのは私じゃなくたっていい」
「彼が幸せだったらそれでいい」
私がずっと自分に言い聞かせていた言葉。

こんなの嘘に決まってる。
でも、こうでもしないともっと忘れられなくなりそうで。彼への想いがもっと心に刻まれてしまいそうで、怖かった。いい加減忘れたかった。

本当は嫌だよ。あなたの隣に私じゃないちがう女の子がいるのも、あなたが彼女のことを幸せそうに話すのも聞きたくないし、携帯のロック画面があの子の後ろ姿って気づいたときは、話してる途中なのにどうがんばっても笑顔が作れなかった。心臓の音で頭がじんじんしてた。

本当は私が彼の隣で、彼を幸せにしたい。

夢のせいで、ずっと蓋をしていた気持ちが溢れてしまった。こんなに苦しいなら、騙され続けていたかった。


夢の中でくらい、幸せでいたかった。

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