殺人鬼の気持ち
映画を見に行った。
「死刑にいたる病」という映画。
善良な市民を装って、猟奇的な殺人を繰り返してきた男と、かつてその男に優しくされ、男が刑務所に入ってからも手紙をもらっていた青年の物語。
グロテスクで直視できない描写はあったけれど、私にはこの殺人鬼の気持ちが少しわかるような気がした。
両親の仲がよく幸せな家庭に育ち、褒められれば素直に喜び笑顔を見せる人。
そうでない人がそんな人を見かけたら、自分と同様に傷ついてほしいと思うのではないだろうか。
自分にないものを持っているから惹かれ、妬み、引きずり下ろしたくなる。
生理前や、疲れているときは、時々死にたくなったり殺したくなったりする。
以前は渋谷から電車で家に帰るとき、明大前のプラットフォームで誰か自分を襲ってくれないかなと思っていた。
誰かが私を襲って突き落とそうとしたりするのに反撃すれば、殺しても正当防衛で罪にならないだろうから。
転職して帰りが遅くならなくなってからは、そんなことを考えなくなったけれど、時々、穏やかな顔をして眠る夫の顔を見て羨ましくなる。
夫を殺してしまったら、信頼する人に裏切られて人を信じられなくなるようなこともないから殺さない。
永遠に殺されたのは、幼い日の私だ。
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