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1984年

1984年
著者 ジョージ・オーウェル
高橋 和久 訳
出版 早川書房
新訳版

オーウェル最後の著作
1949年出版
読んでみて欲しい度★★★★★

📚キーワード


二重思考
メタ二重思考
民主主義
共産主義
バーナム理論の地政学
日本 イースタシア
ロシア 中枢のハートランド。ユーラシアを支配
欧米 オセアニア
反ユダヤ主義=ナショナリズムという現代の大きな病理の一変種

📋ジョージ・オーウェルの生い立ち


1903年生まれ
イギリス領インド ベンガルにて生まれる。
文学のみならず、20世紀の思想、政治に多大なる影響を与えた小説家。
主な著作
動物農場
カタロニア讃歌 スペイン内戦のルポタージュ
1950年没

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※注 以降、ネタバレを含みます

※注 以降、ネタバレを含みます

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概要

主人公 ウィンストン・スミス
真理省(ミニトゥルー)に勤めている39歳
妻とは別居中

真理省はイングソックという政党による全体主義で集産主義なオセアニアの政府の省庁のひとつ。
リーダーはまだ誰もその姿を実際には見たことのないビッグ・ブラザーという男だった。

ビッグ・ブラザーがあなたを見ている
というキャプションと共に至る所に彼のポスターが貼られている国。

政党のスローガン
戦争は平和なり
自由は隷従(れいじゅう)なり
無知は力なり

全体主義の中で人間性までをも完全にコントロールしようと企てている政党であり、英語ではなく、ニュースピークという新しい言語が公用語となっている。
このニュースピークに関しての附録が巻末にあり、いつでも参照するようにと前半で述べられる。

📚あらすじ


時代は1984年、場所はオセアニアという反ユートピアな国。
全体主義国家の体制に疑問を持ち、遂には危険分子としてみられてもおかしくない行動を取り始める主人公ウィンストン・スミス。
中間層や党の中枢層では人間の持つ本来の欲望を抑制された社会だったが、労働層のプロールと呼ばれる人々はまだ昔のように人間性をコントロールされることなく生活していた。
プロールたちの生活や新しく出来た恋人との密会を通して、ウィンストンは国家に対しての疑念を強めていくことになる。

🍀本文から気になった言葉たち。

彼はふと思い当たった。
現代生活を真に特徴づけるのは残酷さや不安定さにあるのではなく、要するに、潤いのなさ、みすぼらしさ、生気を欠いた無関心にあるのだ、と。(p115)

希望があるとするなら、それはプロールたちの中にある。(p108)

自由とはニ足すニが四であると言える自由である。その自由が認められるならば、他の自由はすべて後からついてくる。(p125)

現在の戦争とは支配集団が自国民に対して仕掛けるものであり戦争の目的は領土の征服やその阻止ではなく社会構造をそっくりそのまま保つことにある。(p306)
永遠の戦争状態=恒久的な平和

オブライエン
きっと闇の存在しないところであうことになるだろう(p158)

🍀感想

オーウェルの素晴らしいジャーナリズムに裏打ちされた迫真に迫る彼の主張が脈々と伝わってきた。とにかく、素晴らしいの言葉につきる。
流石に二十世紀の名著と言われただけあるなと感じずにはいられない。1949年の作品であるにもかかわらず、全く古臭く感じさせない。本物は常に新しい。

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※注 以降、ネタバレを含みます

※注 以降、ネタバレを含みます

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本書では1949年に40年後の世界を舞台としたディストピアで反ユートピアな世界が描かれている。
しかし、現代の2021年にも通じるものがあり驚かされる。
例えば、
「現代生活を真に特徴づけるのは残酷さや不安定さにあるのではなく、要するに、潤いのなさ、みすぼらしさ、生気を欠いた無関心にあるのだ、と。」(p115)
など。
トレブリンカも読んで良かったと思えたが、本書もかなりの良書だった。
2+2=4と言える自由さえあれば、他の自由はあとからついてくる。
そうまでわかっていたウィンストンの結末がやるせない。
そして、そのやるせなさを痛いほど感じさせるのは恋人ジュリアとの人間性に満ち溢れたやり取りや、常に希望をどこかしら持ち続けたウィンストンの描写と、徹底された二重思考の刷り込みの描写であった。

🖊オブライエン
オブライエンは完全無欠なる二重思考を体現化した存在であり、「きちんと」彼のように二重思考を身につけていれば、ウィンストンもあのような結末には至らなかったのであろうか?
🖊ビッグ・ブラザー
イングソック全体を擬人化した実際には存在しない偶像なのではないかと思った。
🖊ゴールドスタイン
ビッグブラザーと対をなすかつてのイングソック指導者として、また、現在では反逆者として描かれており、憎悪の対象とされている。
が、この歴史自体、恐らくイングソックによる捏造であり、ビッグブラザー同様に実在しないのではないかと思った。ゴールドスタインの著作も全ては捏造であろう。

旧ソ連やナチスドイツといった全体主義に対する批判や人間の尊厳がテーマになっており、読後しばらく考えさせられる。
何故ニュースピークが必要か
これは、日常使う言葉、言語が変われば、思考、習慣、人格が変わるだろうから真っ先になされるのも理解できる。二重思考をベースとしたニュースピークを公用語とすることで、言論の統制、思想および思考の統制、最終目的=人間性のコントロールと統一がイングソックのイデオロギーであったのだろう。
物語の結末が救いのないものではあるが、附録を置かれていることにより、若干の希望を持たされた。
真実とは虚構であり幻想。
オーウェルがペソアを読んでいたかどうかは知らないがふとペソアが過った。

🍀
版画やら絵画が壁に掛かっていたら、気を付けないと😎

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