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たゆたえども沈まず

たゆたえども沈まず
著者 原田マハ
📝タイトルの由来
パリ市紋章にラテン語で記されている。
“FLUCTUAT NEC MERGITUR”
「どんなに風が吹こうと揺れるだけで決して沈没はしない」

📝 装丁の絵 星月夜
ゴッホによって、1889年6月、フランスサン=レミ=ド=プロヴァンスのサン=ポール・ド・モゾル修道院の精神病院で療養中に描かれた。1941年、リリー・P・ブリス遺贈。ニューヨーク近代美術館の永久コレクション。
ゴッホ自身は抽象絵画作品の失敗とみなし、その理由を自身で「星があまりにも大きすぎる」と言っている。
本人の意図とは裏腹に後世、彼の代表作のひとつとなっている。

📖ゴッホとその弟の兄弟愛が伝わってきた。
兄フィンセントの才能を信じた弟テオがなんとか兄の作品を世へ出そうと苦悩しながらも奔走する姿を日本人美術商、林忠正(実在した明治時代ゴッホがパリにいた同時期にパリで日本美術を紹介した男人物だが、実際には両者に交流があったかどうかは不明)と林に学生時代より認められた重吉(架空の人物)などとの交流を通して描かれていた。

「フィンセントの絵に漂っていた孤独のにおいは、まもなくなくなる。」
「フィンセントの絵は、血を流している。激しく何かを希求して。」
「率直に言おう。僕らは、ただ、絵を通すことによってのみ、何かを語ることができると。 そうだとしても、テオ、僕がいつも君に語り続けてきたことを、いま、もう一度言おう。 君は、単なる画商なんかじゃない。僕を通して、君もまた、絵の一部を描いているんだよ。 だからこそ、どんなに苦しいときでも、僕の絵はしっかり定まっているんだ。」
-たゆたえども沈まず 原田マハ より引用-

これらの文章読んでいて、彼の絵に対する激しい情熱と、その兄の才能を真摯に信じ抜く弟が想像できる。また、絵画に造詣が深くなくとも、フィンセントもテオも2人で一人だったのだったということを感じさせられるくらい著者によって良く描かれていた。

📝ゴッホと日本美術
数百点に上る浮世絵をゴッホは収集し、現在それらは、オランダーアムステルダムのゴッホ美術館に収蔵されている。

「私は全ての日本の芸術にある究極の明快さを妬ましくすら思う。彼らにとって芸術はまるで呼吸をすることのように簡単な事だ。ベストのボタンを掛けるのと同じようにな気安さで、ほんの数本の、しかし自信に満ちた線を描くだけで形を表現することができる」
1888年 ヴィンセント・ゴッホ

🍀美術に詳しくなくとも、ゴッホの絵画や日本美術がそこにあるかのように思わせてくれる。それは、作者自身キュレーターとして美術に造詣が深いところが大きく起因しているのだろう。物語自体を楽しめたと同時にゴッホの絵画と彼と親密な関係であったにもかかわらず、耳を切り落とすきっかけを作ったゴーギャンにも興味が湧いた。
ゴッホの手紙も読みたくなったし、星月夜のポスター欲しくなったし、コニャック入りのコーヒー☕️を飲んでみたい🤩

🎹ゴッホと同時期の印象派やロマン派のピアノ曲を妻が聴かせてくれた。

俺はドビュッシーの夢がこの本の装丁にもなっているゴッホの星月夜のイメージだったが、彼女にとってはスクリャービンの激しさと静寂さの不安定なところがゴッホと彼の作品へ抱くイメージらしい。
スクリャービンの生涯を教えてもらうと確かにスクリャービンもゴッホもエキセントリックだなと妙に納得してしまった。

🍀
タイトルとなっている
たゆたえども沈まず
揺さぶられても、やがては立ち上がる
何にでも通用する良い言葉だなと思う。

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