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ポール・マッカートニーの「Let It Be」に秘められた深い意味と誕生の背景

ザ・ビートルズのドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ: Let It Be』が公開されましたので、本日は「Let It Be - McCartney: A Life in Lyrics | Podcast」を記事とさせて頂きました。
今回の記事は以下マガジンに収録させて頂きました。全8000文字を越える長文の記事となりますが、どうぞ、最後までお付き合い下さい。


Let It Be - McCartney: A Life in Lyrics | Podcast

Let It Be - McCartney: A Life in Lyrics | Podcast

ポール・マッカートニーのお母さんであるメアリーは、ポールがわずか14歳だった1956年に亡くなりました。その10年以上後、彼女は夢の中でポールに現れ、不朽の言葉を残しました。それは「レット・イット・ビー(Let It Be)」、つまり「なるがままにしておきなさい」というアドバイスでした。

ビートルズがツアーを断念してスタジオに専念することになった困難な時期を乗り越えるのに、ちょうどよいタイミングでこの言葉が届いたのです。そしてご存知の通り、この言葉はやがて今や広く親しまれている名曲となり、ビートルズ最後のスタジオ・アルバムのタイトルにもなった「レット・イット・ビー」の基となったのです。

はじめに

ビートルズの名曲「Let It Be」は、1970年にリリースされたアルバム「Let It Be」のタイトル曲であり、ポール・マッカートニーが作詞作曲を手がけた楽曲です。シンプルな歌詞とメロディーで知られるこの曲には、ポールの人生観や当時のビートルズが置かれていた状況が色濃く反映されています。本記事では、ポール・マッカートニー自身の言葉を交えながら、「Let It Be」誕生の背景となった出来事や、歌詞に込められた深い意味について探っていきます。

ビートルズ解散への序章

1960年代後半、ビートルズはすでに世界的なスーパースターとなっていましたが、バンド内の緊張感は高まっていました。メンバー間の関係性は徐々に悪化し、レコーディングスタジオ内外で個人的な興味や音楽性を追求し始めていました。

特に、ジョン・レノンと彼のパートナーであるオノ・ヨーコの関係が深まるにつれ、バンドのダイナミクスにも大きな変化が生じ始めました。ポールは当時の状況について次のように語っています。

"ヨーコがレコーディングセッションの真っ只中にいるというのは、何とか対処しなければならないことでした。ジョンがそれを望んでいるのなら、それを許容するべきだという考えでした。しかし、実際には許容する理由がないのです。私たちは仕事をするためにそこにいたのですから。"

また、1967年にマネージャーのブライアン・エプスタインが亡くなったことで、バンドは大きな支えを失っていました。こうした状況の中、ビートルズは解散へと向かう第一歩を踏み出していたのです。

母からのメッセージ

そんな激動の時期、ポールは「Let It Be」の着想を得るきっかけとなる夢を見ました。夢の中で、14歳の時に亡くなった母親メアリーが現れ、優しい顔で「Let it be(なるがままにしておきなさい)」と語りかけてくれたのです。

"私は夢の中で素晴らしい気分になり、目が覚めてもその感覚が続いていました。母の姿、その感触、そして彼女が言った言葉を鮮明に覚えていました。特に『Let it be』という言葉が印象に残っていました。"

ポールはこの夢から目覚め、すぐに曲のアイデアをまとめ始めました。歌詞の冒頭で「When I find myself in times of trouble, Mother Mary comes to me(困難な時には、母のメアリーが私のもとに来て)」と歌っているように、母親からのメッセージは彼にとって大きな励ましとなりました。

良き人であること

ポールは、「Let It Be」に込められたメッセージについて、自身の家族から受け継いだ価値観に触れながら語っています。

"私たちの家族は、良き人であるように奨励されていました。父は、バス停で列に並ぶ女性たちに帽子を上げてあいさつするような、礼儀正しく紳士的な男性でした。私たちにも、そうあるように励ましてくれたのです。"

「Let It Be」の歌詞には、思いやりと優しさを大切にするポールの人生観が表れています。対立を避け、物事をそのままに受け入れる姿勢は、彼の家族から受け継いだ "良き人であること" の教えに通じているのかもしれません。

シェイクスピアからの影響

興味深いことに、ポールは「Let it be」というフレーズを学生時代に読んだシェイクスピアの戯曲「ハムレット」から無意識に借用していた可能性があります。

"後になって気づいたのですが、『ハムレット』の中で主人公が瀕死の状態で『Let be』と言っているのです。当時のことは忘れていましたが、シェイクスピアを学んでいた頃に、これらの言葉に触れていたのかもしれません。"

学生時代の記憶が夢の中で蘇り、「Let It Be」の歌詞に影響を与えたのかもしれません。

宗教的解釈の余地

「Let It Be」は宗教色のない曲として知られていますが、歌詞の中の「Mother Mary」というフレーズから、聖母マリアを連想する人も少なくありません。ポールの母親はメアリーという名前でしたが、あえて「Mother Mary」と呼ぶことで、宗教的な解釈の余地を残しています。

"母をメアリーではなく『Mother Mary』と呼ぶことで、二重の意味を込めることができると思ったのです。曲を書く際には、そういったことを意識していますが、宗教的な意味合いを求める人々にも受け入れられる余地を残せたのは良かったと思います。"

プロテスタントの父とカトリックの母を持つポールは、特定の宗教には傾倒していませんでしたが、「Let It Be」が様々な信仰を持つ人々に届くことを願っていたのかもしれません。

「Let It Be」が伝えるメッセージ

「Let It Be」が持つ普遍的な力は、言葉の壁を超え、人種や信条の違いを乗り越えて、人々を勇気づけ、希望を与えてくれます。困難な時代にあっても、「Let It Be」が示すように、私たちは状況をありのまま受け入れ、前を向いて進んでいく勇気を持つことができるのです。

ポールは、自身の人生経験と音楽を通じて、リスナーにメッセージを送り続けています。彼は次のように語っています。

"人生には良いことも悪いこともありますが、私たちにできることは、そのすべてを受け入れ、最善を尽くすことです。『Let It Be』は、そのような思いを込めて書かれた曲なのです。"

「Let It Be」は、リリースから50年以上が経った今でも、世界中の人々に愛され続けています。その普遍的なメッセージは、時代を超えて多くの人の心に響き、支えとなっているのです。

まとめ

ポール・マッカートニーの「Let It Be」は、彼の人生観と当時のビートルズが直面していた困難な状況が反映された、深い意味を持つ楽曲です。母親メアリーからのメッセージをタイトルに用いることで、聴き手に様々な解釈の余地を与えています。

同時に、この曲はポールの家族から受け継いだ "良き人であること" の価値観や、学生時代に触れたシェイクスピアの言葉からも影響を受けています。宗教の垣根を越えて、多くの人々の心に響くメッセージを込めた作品と言えるでしょう。

ビートルズ解散の序章となった「Let It Be」プロジェクトは、バンドにとって試練の連続でしたが、そこから生まれた名曲は、今なお輝き続けています。ポール・マッカートニーの音楽と言葉は、私たちに希望と勇気を与え、人生の困難な場面で立ち向かう力を授けてくれるのです。

「Let It Be」が伝えるメッセージを胸に、私たちは自分の人生を歩んでいくことができます。母からの愛に包まれ、良き人であろうとする姿勢を忘れずに、一歩一歩前に進んでいきましょう。そうすることで、どんな困難にも立ち向かい、乗り越えていくことができるはずです。

ポール・マッカートニーの「Let It Be」は、単なる名曲を超えて、人生の指針となる力強いメッセージを持った作品なのです。

更に「Let It Be」を分析させて頂きます。

伝説のビートルズが残した名曲「Let It Be」の真実 ~誕生秘話からレガシーまで~

ビートルズは今なお世界中から愛される伝説のロックバンドです。数々の名曲を生み出した彼らですが、中でも「Let It Be」は多くの人々の心に深く刻まれた楽曲と言えるでしょう。ポール・マッカートニーの魂の叫びとも称されるこの曲は、一体どのようにして生まれたのでしょうか。上の続きとして「Let It Be」誕生の背景から、その歌詞に込められたメッセージ、さらにはビートルズ解散後も色褪せることのない楽曲の影響力について探っていきます。

「Let It Be」誕生のきっかけとなった、ポールの母への思い

1968年、ビートルズはアルバム「ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)」のレコーディングで揉めに揉めていました。そんな緊張感漂う中、ポールは亡き母メアリーの夢を見ます。実は、ポールの母は彼が14歳の時に乳がんで他界していたのです。夢の中で母は「大丈夫よ、なるようになるわ(Let it be)」と語りかけてきました。この言葉に励まされたポールは「Mother Mary」という歌詞を入れ、「Let It Be」の制作をスタートさせたのです。

レコーディングの裏側エピソード

「Let It Be」は、1月31日にアップル・スタジオで行われたセッションが最終テイクとなりました。ポールはブルースナーのピアノを、ジョンはエレキベースを演奏。ジョージとリンゴはそれぞれギターとドラムスを担当し、ビリー・プレストンがオルガンで参加しています。興味深いのは、レコーディング中のやり取り。ジョンが「ギターソロの時、クスクス笑っていいの?」と尋ねると、ポールは「ああ、そうだね」と答えています。のちのアンソロジー盤に収録されたテイクでは、曲の最後にジョンが「素晴らしかった。家に持って帰りたいよ」と冗談交じりに話す様子も。

ジョージ・マーティンとフィル・スペクターによる異なるアプローチ

「Let It Be」には、プロデューサーによって異なるバージョンが存在します。ジョージ・マーティンがプロデュースしたシングル・バージョンでは、オーケストラとコーラスがミックスで控えめに扱われ、ギターソロもソフトな印象。一方、フィル・スペクターがプロデュースしたアルバム・バージョンは、ギターソロがより攻撃的で、オーケストラの音量も大きくなっています。スペクター版には賛否両論ありますが、ドラマチックな仕上がりになった点は確かです。

ポールの言葉から紐解く「Let It Be」の真意

「Let It Be」は、聖母マリアへの祈りのように聞こえることから、宗教的な意味合いがあるのではないかと憶測されることもあります。しかしポールは「人々がどう解釈しようと、それはそれで構わない」とコメント。「僕にとってはとてもスピリチュアルな曲だけど、別に聖母マリアの歌というわけじゃない」とも語っています。つまり、「Let It Be」に込められたのは、「人生の困難な局面でも、深く考え込まずにあるがままに受け入れよう」という、普遍的なメッセージだったのかもしれません。

シングルとアルバムでの「Let It Be」の記録的ヒット

「Let It Be」は1970年3月6日に全米ビルボード・ホット100で初登場6位を記録。見事1位に輝き、ビートルズ解散前最後のシングルとして大きな注目を集めました。イギリスでも2位まで上昇。全世界で高い人気を博し、各国のチャートを席巻したのです。同年5月8日にリリースされたアルバム『レット・イット・ビー』も全英1位、全米1位を獲得。マッカートニー自身が後に「ビートルズの代表曲の1つになった」と振り返るほどの大ヒット曲となりました。

レガシー ~「ビートルズの遺産」と称される所以~

「Let It Be」は、リリースから半世紀以上経った今もなお、世界中で愛され続けています。ロックの殿堂入りを果たし、数々の音楽ランキングで上位に選ばれるなど、その評価は不動のものに。ポールのソロライブでは必ず演奏される定番曲でもあります。1985年にはチャリティコンサート「ライブエイド」で披露され、全世界10億人以上が視聴したと言われています。2001年の「コンサート・フォー・ニューヨーク・シティ」では、911テロの犠牲者を追悼する場面でも歌われました。

「Mother Mary comes to me speaking words of wisdom」

困難な時代を象徴するかのようなこの歌詞は、リスナーの心に強く響くのです。「Let It Be」は単なるヒット曲の枠を超え、困難を乗り越える勇気と希望を与えてくれる曲として、時代を超えて多くの人々に愛され続けているのです。

ビートルズの名曲「Let It Be」を紐解く:メンバーの役割と参加ミュージシャンに迫る

この章では、「Let It Be」のレコーディングに参加したビートルズのメンバーと、追加のミュージシャンの役割について詳しく見ていきます。

ビートルズメンバーの役割

「Let It Be」のレコーディングにおいて、各ビートルズメンバーは以下のような役割を果たしました。

ジョン・ウィン著『ザット・マジック・フィーリング』、
マーク・ルイスン著『ザ・コンプリート・ビートルズ・クロニクル』、スティーブ・サリバン著『エンサイクロペディア・オブ・グレート・ポピュラーソング・レコーディングス第1巻』

参考文献

ポール・マッカートニーリードボーカルとバッキングボーカル、ピアノ、マラカス、エレクトリックピアノ、ベースギターを担当。
ジョン・レノンバッキングボーカルを担当。(「LET IT BE」の映画ではベースを弾いていますが、レコーディングは別のようでね。)
ジョージ・ハリスンリードギターとバッキングボーカルを担当。
リンゴ・スタードラムを担当。

追加ミュージシャンの参加

「Let It Be」のレコーディングには、ビートルズのメンバー以外にも、何人かの追加ミュージシャンが参加しました。

リンダ・マッカートニー(ポールの妻)バッキングボーカルを担当。
ビリー・プレストンハモンドオルガンを担当。
ジョージ・マーティン弦楽器と金管楽器のアレンジを担当
・その他のセッションミュージシャン:オーケストレーションを担当。

これらの追加ミュージシャンの参加により、「Let It Be」は更に豊かなサウンドに仕上がりました。

名曲を生み出した才能の結集

「Let It Be」は、ビートルズのメンバーそれぞれの音楽的才能と、追加ミュージシャンの貢献により生み出された名曲です。ポール・マッカートニーの心に染み入る歌声と、ジョージ・ハリスンの美しいギターの音色は、この曲の魅力を大いに高めています。また、ビリー・プレストンのハモンドオルガンと、ジョージ・マーティンによる弦楽器と金管楽器のアレンジは、「Let It Be」に深みと広がりをもたらしました。

ビートルズのメンバーと追加ミュージシャンの見事な協力により、「Let It Be」は時代を超えて愛される名曲となったのです。

ビートルズの「Let It Be」:アルバムバージョンの魅力とフィル・スペクターの貢献

ビートルズの「Let It Be」は、シングルバージョンとアルバムバージョンの2つのバージョンが存在します。ここでは、1970年3月26日にフィル・スペクターがリミックスしたアルバムバージョンの特徴について詳しく見ていきます。

アルバムバージョンの特徴

「Let It Be」のアルバムバージョンは、シングルバージョンとは異なるいくつかの特徴を持っています。

ジョージ・ハリスンのセカンドギターソロがオーバーダブされている。
バッキングボーカルが少なくなっている。
リンゴ・スターのハイハットにディレイエフェクトがかけられている。
オーケストレーションがより前面に出ている。
最後のサビで「let it be ...」のフレーズが3回繰り返される。
「there will be an answer」のフレーズが2回繰り返された後、「whisper words of wisdom」のフレーズで曲が締めくくられる。

フィル・スペクターの貢献

「Let It Be」のアルバムバージョンは、プロデューサーのフィル・スペクターによってリミックスされました。スペクターは、ビートルズの音楽に壮大なオーケストレーションを加えることで知られており、「Let It Be」のアルバムバージョンにもその特徴が現れています。賛否両論はありますが、スペクターのリミックスにより、「Let It Be」はより重厚で感動的な曲に仕上がりました。

アルバム版「Let It Be」の影響力

フィル・スペクターがリミックスした「Let It Be」のアルバムバージョンは、リリース当時から高い評価を得ており、現在でもビートルズの代表曲の一つとして親しまれています。スペクターの手による壮大なサウンドは、ビートルズの音楽を新たな次元へと引き上げました。アルバム版の「Let It Be」は、ビートルズの音楽的遺産として、今なお多くの人々に愛され続けているのです。

おわりに

ポール・マッカートニーの母への想いから生まれ、ビートルズ解散前夜のもがき苦しむ様子を映し出しながらも、前を向いて生きていこうとするメッセージが込められた「Let It Be」。この曲は、ビートルズというバンドの集大成とも言えるでしょう。レコーディング時のエピソードや、シングル・アルバムでの記録的ヒット、そして現在に至るまで色褪せないその存在感。「Let It Be」が持つ魅力の一端を感じていただけたら幸いです。

日本語翻訳

"なるがままにしておきなさい"

僕が苦しみ悩んでいる時
母なる存在が現れ
知恵の言葉を語りかける
"なるがままにしておきなさい"

暗闇に包まれた時間にも
母なる存在は目の前に立ち
知恵の言葉を紡ぎだす
"なるがままにしておきなさい"

"なるがままに、なるがままに"
"なるがままに、なるがままに"
知恵の言葉をささやく
"なるがままにしておきなさい"

心に傷を負った人々が
この世界で一つになれば
必ず答えは見つかる
"なるがままにしておきなさい"

たとえ離れ離れになっても
再び巡り会える希望はある
必ず答えは見つかる
"なるがままにしておきなさい"

"なるがままに、なるがままに"
"なるがままに、なるがままに"
そう、答えはきっと見つかる
"なるがままにしておきなさい"

"なるがままに、なるがままに"
"なるがままに、なるがままに"
知恵の言葉をささやく
"なるがままにしておきなさい"

夜空に雲がかかっていても
私を照らし続ける光がある
明日まで輝き続ける
"なるがままにしておきなさい"

音楽の調べに目覚める時
母なる存在が現れ
知恵の言葉を語りかける
"なるがままにしておきなさい"

"なるがままに、なるがままに"
"なるがままに、なるがままに"
必ず答えは見つかる
"なるがままにしておきなさい"

"なるがままに、なるがままに"
"なるがままに、なるがままに"
必ず答えは見つかる
"なるがままにしておきなさい"

"なるがままに、なるがままに"
"なるがままに、なるがままに"
知恵の言葉をささやく
"なるがままにしておきなさい"

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