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脱「減点評価」のススメ

ついに、ですか。

ひとつ気になるのは「200勝に届かず」「メジャーに行かなければ200勝できた」という声が多いこと。

プレイヤーが名球会入りを意識するのはわかります。でもなぜファンやマスコミの評価基準がそこなのか。

普通に考えたら「日米通算170勝」は「日本で200勝」に劣らぬ価値があると思いませんか? 特に「アメリカに行ってからパッとしなかった」というざっくり判定は事実に反しています。メジャー1年目は15勝、2年目は18勝。4年目にも9勝を挙げました。ワールドシリーズで日本人初の勝利投手になったのも彼です。メチャメチャ「パッとしてる」じゃないですか。

メジャー移籍後の松坂投手のピッチングで最も印象深いのは、2009年WBCのキューバ戦です。

先日阪神の近本選手が塁上で手を動かすしぐさをし、「サインを盗んでいる」「投球コースを打者に教えている」とヤクルトの村上選手から指摘されました。たしかに紛らわしい行為だったと思います(ファンとしては矢野監督の「絶対にやっていない」という言葉を信じると共に、近本選手に「李下に冠を正さず」という格言を送ります)。

あのときのキューバはそういうレベルではありませんでした。明らかにキャッチャーの構えたコースをベンチから打者へ教えていたのです。それに対する城島捕手の対策がすごかった。「サインだけ見ろ。構えは無視していい」と、あえて松坂投手に逆球を投げさせたのです。

城島捕手のアイデアも秀逸ですが、当然のように実行できる松坂投手の肝の太さに唖然としました。ただでさえ尋常ではないプレッシャーのかかる国際大会(しかも二連覇が懸っていた)のマウンドなのに。強靭なメンタルとたしかな技術、そしてアドリブで咄嗟の事態に対処する適応力。ただただ頭が下がりました。

そもそも勇気を奮って海を渡り、メジャーで56勝も挙げたことが偉業です。「彼ならもっとできた」と一見持ち上げる風に「できなかったことをあげつらう」減点評価はやめませんか? いまは達成したことを素直に称えましょう。松坂投手、たくさんの感動をありがとうございました。

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