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キーワードは「えげつない闘い」~6.3新日本プロレス・日本武道館大会の煽りコラム~

まさしく「最高に楽しいシリーズ」でした。

優勝決定戦は2020年と同じ「高橋ヒロム vs エル・デスペラード」に決定しました。共に2009年に入門した同期の間柄。いまの新日本における黄金カードのひとつです。

ただ2年前とは異なり、ふたりの関係性にドロドロの確執は見えません。死闘を経て憎しみを乗り越え、各々の考え方や実力を認め合っているからでしょう。

そのせいか、1.4東京ドームのセミファイナルにおける対戦は期待外れでした。熱い気持ちがぶつかり合う「いい試合」だったのは間違いない。でも「彼らならもっとできたよなあ」と首を捻らずにはいられなかったのです。

プロレスは生の人間が互いをぶちのめそうと息巻くジャンルです。ゆえに敵対心や嫉妬、羨望などの負の感情を吐き出すと盛り上がりやすい。そのために「サイドストーリー」が意味を持つわけです。SNSで茶化したりマイクやコメントで挑発したり。それらがなく、試合のクオリティだけでお客さんに勝とうとすると、どうしても攻防が危険になってしまう。

「危険じゃないプロレスなんてプロレスじゃない」は全否定できぬ見解。一方でその真理とは別に、曖昧な基準の「守るべき一線」があることも確かなのです。そこを踏み越えた事実がくれる驚きや感動は即物的な言葉を無力化します。でもオーバーラインが当たり前になって「一線」がどんどん後退したら何が起きるか(ヒロム選手の4年前の怪我を思い出してください)。

私は「言葉を必要としないプロレス」を好みます。しかし頭から垂直に落としまくる「気絶大会」を見たいわけではない。相手を気遣っていると察せられる「馴れ合い」も論外。欲するのはそれとなく細心の注意を払い、平然とえげつないことをする「闘い」です。

「言葉によるお膳立て」や「ドロドロの確執」に頼らず「一線」も守った「えげつない闘い」。できると信じています。いつかドームのメインで彼らを見たいから。

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