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【本116】『満天のゴール』

著者:藤岡陽子 出版社:小学館

夫に浮気された主人公の奈緒は、小学生の息子涼介をつれて、丹後半島の実家に戻ります。ペーパーナースだった奈緒は、生活のために海生病院で看護師として働き始め、三上医師や過疎地に住む高齢患者たちとの関わりの中で、さまざまなことを学んでいきます。

どこか孤独をかかえた三上医師。彼は、在宅医療を施す患者に頑張った分の星シールをわたしています。300もの星々の煌めきのなかで、穏やかでどこか誇らしげな死をむかえたトクさん。死は終わりではなく「ゴール」。トクさんは素敵な人生のゴールを迎えたことでしょう。

「自分の頑張りに星をくれる人がいる。それだけで人は生きられるのかもしれない」

星シールをわたす三上医師にも、かつて、闇のなかを照らす星が道案内をしてくれたという。その人がいなかったら、自分の人生はなかったと。誰かの星になる、誰かの光になる、なんて素敵なことなんだろうと思いました。

人と人とが関わることで生まれる「想い」。誰かが誰かを想う気持ちが、人生を歩む力になります。生き続けること、強くあること、優しくあること、人として大切なことに立ち戻ることのできる小説です。


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