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書評講座 Vol. 4

8
課題書:1)インヴェンション・オブ・サウンド(チャック・パラニューク著、池田真紀子訳、早川書房)、2)自由課題
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#翻訳者のための書評講座

闇を担わされた者たちの悲痛な叫び――チャック・パラニューク著『インヴェンション・オブ・サウンド』書評

闇を担わされた者たちの悲痛な叫び――チャック・パラニューク著『インヴェンション・オブ・サウンド』書評

第四回 翻訳者のための書評講座に参加しました。
今回の課題はこれまであまり読んでこなかったジャンルの小説で、書評をまとめるのが難しいかもしれないと思っていたのですが、思いのほかスムーズに書くことができました。それはたぶん、この小説が持つ、人をぐいぐい引き込んでいく力のおかげなのだと思います。
講座では今回も講師の豊崎由美さんにご教示と励ましをいただき、また他の受講者の方からも貴重なご意見をいただき

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「星の時」(クラリッセ・リスペクトル著 福嶋伸洋訳 河出書房新社)書評

「星の時」(クラリッセ・リスペクトル著 福嶋伸洋訳 河出書房新社)書評

 1977年に出版された『星の時』(クラリッセ・リスペクトル著 福嶋伸洋訳 河出書房新社)の翻訳が2021年に出たのは、その前年が作家の生誕100年だったかららしい。作者はウクライナ生まれのブラジルの作家で、本の帯には「23言語で翻訳、世界的再評価の進む20世紀の巨匠」「伝説的作家の遺作にして最高傑作」と錚々たる謳い文句が並ぶ。

 私がこの厚さ1㎝程度の本を最初に手にしてから読み終えるまでに1年

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『インヴェンション・オブ・サウンド』書評

『インヴェンション・オブ・サウンド』書評

 この小説は音であふれている。犬の遠吠え、ワインをグラスに注ぐ音、錠剤を奥歯でかみ砕く音、真珠のネックレスをはずす音、録音テープのざらざらした再生音、サイレンやエンジンの音、電飾の電球がはじけ割れる音、建物が崩れ落ちる音、そして悲鳴。
 それもそのはず、主人公の一人、ミッツィ・アイブズはハリウッドで音響効果技師をやっていて、「悲鳴」作りにかけては定評がある。音源を売らずにライセンスを売って暮らす彼

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<書評>あの人たちが本を焼いた日 ジーン・リース短篇集(西崎憲・編)

つい先日「第4回翻訳者のための書評講座」というものに参加させていただきました。これまで書評など書いたことはなく何をどう書いたらいいものやら頭がぐるぐるになりつつ提出した初書評でしたが、講師の豊崎由美さん始め参加者のみなさまから合評いただき大変勉強になりました。以下、講評を受けて書き直したほうの書評、いただいたコメントとわたしの意図、提出した書評の順で掲載します。

*修正後*
 <七月の日曜の朝は

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