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詩集

77
日々生きている中で生まれた詩たちを綴っています。 2014年〜現在までに出来た作品をランダムにアップしていきます。 是非、毎日の隙間に読んでいただければと思います。よろしくお願い…
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2024年7月の記事一覧

【詩】海鳴り

【詩】海鳴り

浜辺に行けば
ひとつひとつの波の音が聞こえるのであるが

そこから少し登った所に位置するこの旅館では
それらの音が幾層にも重なって

まさに海が鳴っているように聞こえ
その音がこの辺りの空間の底に
アンビエントに鳴り続けている

僕らがどこにいようとも
海は鳴り続けている
この地球が回り続けるかぎり

【詩】闇夜は垂れて

【詩】闇夜は垂れて

雲海の水平線が
オレンジ色に光っていると

天から闇夜が垂れてきて
光を雲の中に押し込もうとしている

そうしていると
次第に雲の海も黒くなって
全てが闇夜に変わっていくさま

それをじっと見つめる
小窓の際の女性

絵中絵の額縁の中に
活動写真を施した
不思議な一枚の絵のよう

【詩】おまつり

【詩】おまつり

夏の無病息災を祈って
茅の輪をくぐる

神主が振るう
お祓いの乾いた紙の音で
湿った私の邪気が取り払われていく

鳥居を出ると参道には
たくさんの出店と人々

様々な濃淡と色の光に照らされた
人の顔、顔、顔、顔
響く声、声、声、声
焼ける食べ物の匂い、匂い、匂い、匂い
その食べ物の味、味、味、味

刺激の乱反射に私は面食らう

静謐な神聖さと
刺激の乱反射とが
同時に執り行われている

生という不

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【詩】入道雲

【詩】入道雲

夏の夕方
東の方角に
大きな入道雲が

くっきりとした
無数の球状の光と陰をたたえて
その姿を現す

気体と
液体と
固体が入り混じった

刹那な存在であるとは思えない
巨大を膨らませながら

西に沈む夕陽を見守っている
#夏の写真

【詩】アイスコーヒー

【詩】アイスコーヒー

仕事を終えて
コンビニでアイスコーヒーを買い
それを持ってバス停に向かう

ほんのちょっとの距離なのに
西陽は容赦なく
氷たちを溶かしていく

バス停に着き
ベンチに腰掛ける
僕の側に置いたアイスコーヒーは
僕よりたくさん汗をかいている

その時不意に風が吹く

夏の夕方に吹く涼しい風は
我々に何とも言えない快感を与える

そんな幸せを感じている間もなく
バスは来る

僕のアイスコーヒーはその汗で

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【詩】朝顔

【詩】朝顔

暑さの気配が漂い始める朝
通勤途中に
雑居ビルの横を通りかかる

そのビルの歩道に面した壁際には
コンクリート造りの花壇が
備えつけられていて

夏のつる性の植物を育てるために
支柱が立てられ
ネットが張られている

そこにはゴーヤや朝顔が

ふと見ると
あまりみたことのない模様の朝顔の花が
一輪だけ咲いている

くっきりとした藍に近い紫色で
花の中心から白いラインが5本程度
放射状に走っている

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【詩】ねむい

【詩】ねむい

ねむい
 
低反発のベッドに横たわり
目を閉じると

からだはぐにゃりと二つ折れになり
先端になったお尻から
ずーんと地球の中心部を目指して
沈みこんでいく

その様はパフェのクリームに沈み込む
チョコレートさながらに
際限なくその身を伸ばし
マットレスと混ざり合い

最後にはわずかに私の色をした
マットレスのような
混濁した意識だけが
在るのだろうか

ねむい

【詩】長距離ドライヴ

【詩】長距離ドライヴ

星のない高速道路で
長い時間に渡り
車を走らせる

フロントガラスはスクリーン
ヘッドライトはスポットライト

流れる白線や反射鏡
時折前や後ろに流れるテールランプ
めくるめく風景を映し出す

それらのシーンは次々と向こうからやってきて
僕らをすり抜け
後ろに通り過ぎていく

その繰り返し

時折ハンドルを右や左に動かし
アクセルの足を踏み込み緩める
それらだけが
僕らの画角を決める
最大限の動作

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【詩】ボヌス

【詩】ボヌス

我々は豊穣を祝う

今日のよき日を祝おう!

酒を酌み交わす

自由と引き換えに
位置を与えられ
金を手にして
手に入れた酒

こう言っちゃ聞こえは悪いが
だからなんだというのだ

今はただ
ボヌス・エヴェントスが与えたもうた
美酒を飲み

明日の英気を養おうじゃないか!

※ボヌス・エヴェントス(Bonus Eventus)・・・ローマ神話における豊穣と成功、勝利の女神

【詩】ガラム

【詩】ガラム

自転車に乗った僕は
自転車に乗った老人とすれ違う

そこで香ったのは
予測だにしなかった

薄い赤みのかかった
紫の煙

その香りは一気に僕を
20年前のライブハウスに引き摺り込む

その辺りに漂う
甘く強い香りと
ミラーボールの光

ゆらめく人影と

轟音

振り返ると
いつもの帰り道

老人は振り返らず
走り去っていく

--------------
補足

ガラム(GARAM)は独特の香りの

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【詩】夏と自転車

【詩】夏と自転車

自転車で走る

多量の水を含んだ
生ぬるい空気が
僕の体にぶつかってくる

息を吸うと
空気と一緒に
水が鼻や口に入ってくる

時には水の密度が多く
息苦しくなるが

ごく稀に
その中に混ざっている
とても冷たい空気と
少量の水を飲むと

身体中に清涼な何かが
駆け巡り

僕の脳は一気に目覚める

シフトアップした僕は
加速をした自転車を駆り
夏の空気に突っ込んでいく

【詩】くしゃみ

【詩】くしゃみ

朝ごはんを食べていると

どこかの家からだれかのくしゃみの声が

こんなとこまで聞こえるなんて
滑稽だねえ

と、思うのだが

こんなに大きななにかを
その内にかかえていたのかあ
とも思うと

出てきてよかったねえ

だれかの大きななにか

【詩】大雨

【詩】大雨

「水は高いところから低いところに降りる」
これは真実であるが

地上より高いあの空に
水の化身である雲があるというのは
どういうことか

熱にさらされ
空気よりも軽い
蒸気という姿に変えることができるとはいえ

何故神さまは
一見ひとつの摂理の抜け道のようにも見える
さらに大きな循環の摂理を作りたもうたのか

摂理は幾層にも重なり
交差し
大きな曼荼羅を描く

自然の摂理は我々に
恵みの雨を降らす

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【詩】入れ子の世界

【詩】入れ子の世界

今年も田んぼに水を通す

半年間遊ばせていた土地は
見る見る水浸しになっていく

そこに住んでいたアリやクモやミミズ達は
わけもわからず
巣穴や見つけていたエサを失い
大慌てで沈んでいない土地を目指す

彼らの生きてきた世界は
文字通り
台無しになる

私は彼らの世界を台無しにするために
田んぼに水を通したわけではなく
お米を作るために水を通したのだが

結果的に彼らの世界を台無しにしてしまったの

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