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会社が回らない

前回までのあらすじ:
親父について10年。経営を学んだ。しかし、親父がやっていたのは黒字経営、俺がやらなければならないのは赤字経営だった。

親父から学んだ経営哲学は、言わば、嫌われる勇気だったといえる。

実は親父は、地域の活動にはほとんど参加していなかった。
唯一、お寺の檀家として役員を務めていたが、それ以外は、あえて地域と交わることをしなかった。

親父は言っていた。
地域の人々と親しくなって良いことはない。
悪く言われることはあっても、良いことを言われることはない、と。

苦い経験もあったんだろうな。
社長というだけで世間の目は厳しくなるから、、そんな時代だったのかもしれない。

でも俺はそういうわけにはいかない。確実に時代は変わってきている。

親父は地域社会との接触を避けることで、社長という地位を社長たるものにし、そのカリスマ性から地域に貢献してきた。

一方俺は、地域社会と接触して、俺はみんなと一緒だよというスタンスに立って初めて、地域に貢献できると考えている。

しかし、顧客と対応する俺と、社員と対応する俺はまた別だ。
社員には言いにくいことも言い、我慢もさせなければならない。

本当、辛い。もう少し余裕があったら違うんだが、、

そんな中でも、俺は、社長として、社員の生活を守る義務がある。
だから、今まで賞与を出さなかったことはないし、金額が少なくても昇給してきた。
俺なりに努力してきたつもりだ。

しかし、人材不足はずっと続いていた。
企業内保育所をつくって対応していたが、それでギリギリのところ。

俺たち民間極小企業にとって、余裕のある人材確保は望めない。

が、そこへ輪をかける突発的な事件が起こってしまった。
社員が長期休暇をとらなければならなくなってしまったんだ。
加えて、別の社員が夫の仕事の都合で県外へ転居するという。

慌てて求人募集を強化したが、簡単に応募は来ない。
専門職の上に、仕事内容も多岐にわたるため、敬遠される職種なんだ。

それでも会社を回していかなければいけない。
顧客に対応していかなければならない。
大変な思いさせてしまっている社員に対して申し訳ないという気持ち。

ストレスに押しつぶされる日々。
今まで利益が出なくて悩んでいたのが、今度は社員不足で悩んでいる。

神様、どんだけ俺に試練を与えるんだよ~。

そんなときに、社員の一人から、ある衝撃的な言葉を聞くことになる。

「私たちの生活を守るなんて、そんなこと考えてもらわなくていいですから!」

親父の代からいる古株の社員からの一言だった。

痛すぎるよ😔

嫌われているんだな、俺は。と思った。
親父と比べられているということは十分わかっている。

妻は、言いたいことを言えない職場より、言える職場の方がいい、と慰めてくれた。味方は妻だけでいいと思った。
社長はどれだけ馬鹿になれるかだ、とも言う。

でも、やっぱり痛いよなあ。

社員は社員で、それでも働かなくてはならないという状況の中、ストレスを発散させざるを得ない状況だったんだろう。

新たな求人が確保できない中、俺のストレスは更に大きくなった。

悩んだ結果、俺は、人材派遣会社に求人を出すことにした。

つづく






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