「深夜特急」を読んで

ペンシルママです。今日は「深夜特急」(沢木耕太郎著)について書きたいと思います。最初にペンシルママが読んだのは、20代の頃です。その頃のペンシルママはバックパッカーに憧れていて一度でいいからそんな風に自由に旅をしてみたいと思っていました。ですので様々な旅行本を読んでは旅の想像を膨らませていました。それら本の中の1冊が、タイトルの「深夜特急」だったのです。1986年に出版された本ですが、まず最初の旅行先は香港から始まりました。ずっと香港に行ってみたいと思っていたペンシルママはとてもわくわくしながら読んでいましたが、その本の中での香港はペンシルママの思い描いてきた香港とは全く異なる場所でした。

その本の出版年から推測すると、今はもうない香港のスラム街「九龍城塞」がまだあった頃の香港を著者は旅していて、まず最初に香港に到着してから、香港滞在の拠点となった宿を見つけるにあたって出会った人も、その経緯もドラマティックです。もちろんその宿もいわゆる普通の宿ではなかったのですが、とても安くて驚くことに快適に過ごせたたようで、その宿を拠点に、思ったより香港には長く滞在することにしたようでした。著者のバイタリティの強さには本当に驚かされます。

香港と言えば日本人に人気の観光地でした。(現在は分かりませんが、コロナ前まではそうだったでしょう。)治安も比較的良く、金融都市として栄えていて、欧米企業も多くあり、高級ホテルや海外のラグジュアリーブランドも沢山軒を連ねている、小さい都市ながらも見どころにあふれていて、東京から4時間弱で行ける、そんな旅行先でしたが、それは2000年以降の新しい香港の姿なのだと分かったのです。

ペンシルママにとってとても刺激的で、驚きに溢れた香港の姿。初めてこの本を読んだ時の年齢が30歳を過ぎていたら、ペンシルママはきっと香港に行くことを諦めていたでしょう。ペンシルママも若かったのです。きっとこれは昔の話だと思い、今の香港は自分の行きたい所で溢れていて魅力的で東京のように安全な場所だと思うに至り、その後に2度も香港を訪れることになりました。結果無事に楽しく過ごせましたし、行きたいところに行けて、この時に思い切って香港に行っておいて良かったと心から思います。

この本を読んだときに、ウオン・カーレイの映画で見た香港を思い出しました。この監督の作品は、香港の闇の部分に焦点を当てたような作品の気がします。「恋する惑星」はまだ比較的明るい結末の作品でしたし、この映画の主題歌「フェイ・ウオン」の「夢中人」は大好きな歌の一つです。「天使の涙」と「恋する惑星」は共にペンシルママの大好きな俳優「金城武」さんが出演されている映画で何度か観ましたが、金城武さんはどちらも役的にとても残念なキャラクターでした。これ以降ほとんど、ウオンカーレイの作品には出なくなってしまったのではないかと思います。今ではほとんど日本で顔を見ることはなくなった俳優さんですが、中国では活躍されているそうですね。

約10年ぶりに「深夜特急」を見かけたのは、義父母の家の本棚でした。旅の話が好きで旅行も好きな義母が、旅の本と知って買ったようですが、残念ながら義母の好きな旅のジャンルとは全く異なり、そのままお蔵入りしてしまったようです。という訳で義父母の家に滞在中ペンシルママは深夜特急を改めて読む機会を得たのです。

改めて読むとやはり刺激的な旅でした。とても怖くて手を出せない、そんな旅です。きっと著者がまだ若くて、しかも男性だったからできたのでしょう。ペンシルママはこの本を通してバックパッカーを追体験出来た気がして、これでもう充分です。

この年になるとバックパッカーもとてもする気になれません。バックパッカー宿(いわゆる安宿)に泊まる勇気もありませんし、こういう経験はやはり期間限定の若さがものをいう挑戦なのだと思います。今はもう、海外は特に4つ星以上の宿でないととても滞在する気になれません。そして今では通院など様々な制約があり、とても数カ月以上海外を旅することも考えられません。ペンシルママは人生でもうバックパッカーに挑戦する機会を逃してしまったのです。最近では若い人が海外に行ってワーキングホリデーをしたりする人が増えてきたと聞きました。理由はシンプルで、海外の企業の方が初年給や時給もずっと高いからです。いわゆる出稼ぎのような感じでしょう。「若さ」というのは素晴らしい財産です。身体も比較的健康で元気もあり、まだ養う家族や世話する家族もいない。自分の為だけに使える自由な時間がある。振り返ると短いそんな時間を、精一杯、沢山の経験に使ってほしいと思いますし、若者が安心して学び、挑戦できるそんな未来であってほしいと思います。

「Die with zero」という本が今注目されています。その本の中で、年を取った時のお金と若い時のお金は価値が違うと書かれています。年を取ったら、そのお金の価値を十分に使い切れないのだそうです。ペンシルママがもうバックパッカーをすることが出来ないように。だからこそ年を取ってからではなく元気なうちにお金を使って沢山思い出を作ろうという趣旨の本です。ペンシルママはもう若かりし頃憧れた旅のスタイルは出来ないでしょうが、幸いまだ元気に歩いて旅にだって出られます。これからはどんな旅の姿を歩んでいくか家族とどんな経験をするか、それが今考察中の楽しい課題なのです。


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